著者
山崎 晃嗣 竹村 豊 有馬 智之 益海 大樹 長井 恵 井上 徳浩 杉本 圭相
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.359-365, 2020-08-05 (Released:2020-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【背景】食物経口負荷試験(OFC)の方法は各施設で総負荷量や摂取回数,摂取間隔を設定しており,この違いが結果に影響を与えることが考えられる.【対象・方法】卵白特異的IgE抗体価がクラス3,4の児に対し,20分加熱ゆで卵白8gを総負荷量として実施したOFCを対象とし,60分間隔2回漸増法と30分間隔3回漸増法を比較してOFCの陽性率,誘発症状時の陽性閾値量,誘発症状時の重症度等を検討した.【結果】2回法,3回法でOFCの陽性率はそれぞれ21例(30.4%),24例(38.6%)(P=0.72),誘発症状時の陽性閾値量は,8g,3gと統計学的有意差はなく(P=0.76),両法間とも認められた症状は全てmodified Sampson分類のGradeIII以下であった.統計学的な有意差は無かったが,2回法でのみ神経症状と循環器症状が出現した.【結論】卵白IgEクラス3,4の児に対する20分加熱卵白8gのOFCにおいて,2回法と3回法は安全性と有効性に有意差は認められない.
著者
瀬戸 司 丸谷 怜 益海 大樹 西 孝輔 今岡 のり 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3-4, pp.109-114, 2017-12-20

[抄録]症例は1歳11ヶ月の男児.川崎病が疑われ,加療目的にて近医小児科へ入院した.第5病日に川崎病と診断され,アスピリン(30mg/kg),ウリナスタチン(15000 U/kg),免疫グロブリン(2g/kg)による治療が開始され,第7病日に追加の免疫グロブリン(1g/kg)療法が行われ,第11病日に退院となった.しかし,同日の夜間より再度発熱を認めたため,再燃として,第12病日より免疫グロブリン(1g/kg)の追加治療が行われた.第13病日も発熱が継続,約40秒の全身性強直性痙攣を認めたため,同日当院へ転院となった.転院当日,再度全身性強直性痙攣が出現,ミダゾラムの持続投与にて鎮痙した.頭部MRI 検査で白質脳症の所見を認めたため,ステロイドパルス療法を開始した.しかし,第15病日より痙攣重積状態となり,人工呼吸器管理,脳保護治療を開始するも,同日の夜には瞳孔が散大し,尿崩症の状態となった.2度目のステロイドパルス療法にて炎症反応は陰性化するも汎下垂体機能低下症,自発呼吸の消失,瞳孔散大,対光反射消失など,脳幹機能の消失を認めた.その後も意識状態の改善は認めず,深昏睡の状態が継続している.川崎病経過中に痙攣重積型急性脳症から,最終的に深昏睡の状態に至った稀な症例を経験したので報告する.
著者
益海 大樹 竹村 豊 有馬 智之 長井 恵 山崎 晃嗣 井上 徳浩 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.262-267, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
16

エリスリトールは低分子の糖アルコールで, カロリーが極めて低く, 甘味料としての需要が拡大している. 症例は10歳女児. 8歳, 9歳時にアイスクリームなどを摂取後のアナフィラキシー歴を3回有していたが, 原因は不明であった. 10歳時, 公園で遊び, 複数の菓子を摂取後に咽頭痛と乾性咳嗽, 蕁麻疹を認め, 当院外来を受診. 菓子内にはエリスリトールとソルビトールが含まれ, アレルゲンの可能性が考えられた. エリスリトールとソルビトールのプリックテストはともに陰性で, 皮内試験ではエリスリトールのみ陽性であった. 両者の食物経口負荷試験を施行し, ソルビトールは陰性, エリスリトールは合計1.7g摂取し30分後に皮膚・呼吸器症状を認め, アナフィラキシーを呈した. のちに実施した好塩基球活性化試験 (BAT) では反応を認めなかった. 近年, エリスリトールによる即時型食物アレルギーの報告例が増加している. 小児で摂取頻度の高い菓子に含有されていることがあり注意を要する. 本症例の糖類摂取における食事指導に有用であった.