著者
山崎 晃嗣 竹村 豊 有馬 智之 益海 大樹 長井 恵 井上 徳浩 杉本 圭相
出版者
一般社団法人日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.359-365, 2020-08-05 (Released:2020-08-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

【背景】食物経口負荷試験(OFC)の方法は各施設で総負荷量や摂取回数,摂取間隔を設定しており,この違いが結果に影響を与えることが考えられる.【対象・方法】卵白特異的IgE抗体価がクラス3,4の児に対し,20分加熱ゆで卵白8gを総負荷量として実施したOFCを対象とし,60分間隔2回漸増法と30分間隔3回漸増法を比較してOFCの陽性率,誘発症状時の陽性閾値量,誘発症状時の重症度等を検討した.【結果】2回法,3回法でOFCの陽性率はそれぞれ21例(30.4%),24例(38.6%)(P=0.72),誘発症状時の陽性閾値量は,8g,3gと統計学的有意差はなく(P=0.76),両法間とも認められた症状は全てmodified Sampson分類のGradeIII以下であった.統計学的な有意差は無かったが,2回法でのみ神経症状と循環器症状が出現した.【結論】卵白IgEクラス3,4の児に対する20分加熱卵白8gのOFCにおいて,2回法と3回法は安全性と有効性に有意差は認められない.
著者
竹村 豊
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.97-105, 2015-06-30 (Released:2018-04-27)

第二次世界大戦終結70周年の年にウクライナ問題の先鋭化は欧州における戦後処理(ヤルタ体制)、東西冷戦、ベルリンの壁撤去、ソ連邦の崩壊、EU/NATOの拡大と続く個々の出来事に内包された諸問題に因って引き起こされたものである。ウクライナ・ポロシェンコ政権を支持する米国、EUと対立するプーチン政権は欧米のみならずオーストラリア、日本からも経済制裁を受け、日増しにロシアが世界経済から孤立しているにも関わらず、プーチン大統領の支持率は80%を超えている。元々、ソ連時代からロシアは政経一体型の経済運営であるが、クリミア・ウクライナ問題に絡む一連の高い代償を払いながら強引に自らの政策を進めようとするのは、プーチン大統領の経済政策のルーツがオリガルヒ(新興財閥)との戦いであり、この戦いを通じて今日「国家資本主義」と言われる経済運営が形成されたのである。今後のロシアの資源・エネルギーを中心とする対東アジア経済政策をみる上で経済原則に依らない政治的、戦略的な意図を見ておかなければならない。
著者
竹村 豊
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-25, 2018

2017 年10 月時点で日ロ首脳会談は19 回を数え、ロシア極東ではロシア政府が進める一連の「極東発展国家プログラム」1 )に呼応するように日本政府は8 項目の経済協力を提案し、北方領土問題を抱える平和条約交渉を前進させようとしている。16 年12 月のプーチン大統領来日時に提案された北方領土4 島での共同経済活動は17 年9 月、両国政府が5 項目の事業を実施することで合意した。一方で両国間の貿易は依然としてエネルギー・資源産業分野に大きく依存しており、価格低下のため2014 年から16 年の3年間で貿易高は大きく減少した。今後、日ロ関係を持続的に発展させていく上で、資源エネルギー中心の大企業向け案件ばかりでなく、地方企業や中小企業の活躍できる場を提供することや起業家が参入できる仕組みを作るため、日ロ双方が努力すべきではないか。新規参入により新しいビジネスの可能性が生まれ、日ロ貿易の構造改革や将来的には日ロ関係発展にも資するのではないだろうか。
著者
竹村 豊
出版者
国際教養大学
雑誌
国際教養大学アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
no.1, pp.97-105, 2015-06-30

第二次世界大戦終結70周年の年にウクライナ問題の先鋭化は欧州における戦後処理(ヤルタ体制)、東西冷戦、ベルリンの壁撤去、ソ連邦の崩壊、EU/NATOの拡大と続く個々の出来事に内包された諸問題に因って引き起こされたものである。ウクライナ・ポロシェンコ政権を支持する米国、EUと対立するプーチン政権は欧米のみならずオーストラリア、日本からも経済制裁を受け、日増しにロシアが世界経済から孤立しているにも関わらず、プーチン大統領の支持率は80%を超えている。元々、ソ連時代からロシアは政経一体型の経済運営であるが、クリミア・ウクライナ問題に絡む一連の高い代償を払いながら強引に自らの政策を進めようとするのは、プーチン大統領の経済政策のルーツがオリガルヒ(新興財閥)との戦いであり、この戦いを通じて今日「国家資本主義」と言われる経済運営が形成されたのである。今後のロシアの資源・エネルギーを中心とする対東アジア経済政策をみる上で経済原則に依らない政治的、戦略的な意図を見ておかなければならない。
著者
トゥルビン アレクサンドル 竹村 豊
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.19-58, 2017

地理的近接性と共通経済利益と露日関係正常化への政治努力とは両国間の経済交流にポジティヴなダイナミズムを生み出すはずであり、日本海をまたぐ露日港湾間の船舶輸送量の増加にもつながるはずである。しかしながら、近年の成果は控えめなものにとどまり、急成長どころか、旧来の協力関係の維持すら難しいのが現状である。メディアや専門家の分析において、そのことは、主に、日本を含む諸外国の対露経済制裁とルーブルの下落に伴うロシア企業の購買力の低下によって説明されている。しかし、それだけが理由だろうか。東アジアでの露日間の貿易量に影響を与えている他の要因は何であろうか。本稿は、露日間の貿易と協力について海上交通の面で検討し、日本海をまたぐ両国港湾間の協力が現在抱えている問題と将来の展望を明らかにしようとするものである。
著者
益海 大樹 竹村 豊 有馬 智之 長井 恵 山崎 晃嗣 井上 徳浩 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.262-267, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
16

エリスリトールは低分子の糖アルコールで, カロリーが極めて低く, 甘味料としての需要が拡大している. 症例は10歳女児. 8歳, 9歳時にアイスクリームなどを摂取後のアナフィラキシー歴を3回有していたが, 原因は不明であった. 10歳時, 公園で遊び, 複数の菓子を摂取後に咽頭痛と乾性咳嗽, 蕁麻疹を認め, 当院外来を受診. 菓子内にはエリスリトールとソルビトールが含まれ, アレルゲンの可能性が考えられた. エリスリトールとソルビトールのプリックテストはともに陰性で, 皮内試験ではエリスリトールのみ陽性であった. 両者の食物経口負荷試験を施行し, ソルビトールは陰性, エリスリトールは合計1.7g摂取し30分後に皮膚・呼吸器症状を認め, アナフィラキシーを呈した. のちに実施した好塩基球活性化試験 (BAT) では反応を認めなかった. 近年, エリスリトールによる即時型食物アレルギーの報告例が増加している. 小児で摂取頻度の高い菓子に含有されていることがあり注意を要する. 本症例の糖類摂取における食事指導に有用であった.
著者
山﨑 晃嗣 竹村 豊 長井 恵 井上 徳浩 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1-2, pp.9-16, 2016-06-23

食物アレルギーは小児期において,有病率が高く,増加傾向にある重大な健康上の問題点である.しかしながら,現在のところ,根治に至る有効な治療法はない.そのため,食物アレルギーの発症予防は極めて重要である.食物アレルギーの発症に近年,経皮感作が注目されている.そのため,乳児期の早期に湿疹治療をプロアクティブ療法で行うことで,食物アレルギー発症予防が可能かどうかを検討した.我々の施設を受診した乳児128人を,初診時に生後4か月以下であった早期群66人,5か月以上であった晩期群62人に分けて比較した.結果,晩期群では19人,25アレルゲンの食物アレルギー発症を認めたのに対し,早期群では9人,9アレルゲンでの食物アレルギー発症を認めた.乳児期早期からの湿疹治療により,食物アレルギーの発症と,複数の食物アレルギー発症の予防効果が認められた.食物アレルギー発症予防のためには,乳児期早期からのアレルゲン摂取とあわせて,皮膚治療を行なうことが重要である.