著者
村上 佳津美 土生川 千珠 長坂 行雄 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.574-579, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
17

声帯機能不全(vocal cords dysfunction:VCD)は,吸気時に開大するべき声帯が内転し,閉塞するため気流制限が生じ呼吸困難をきたす.聴診される連続性ラ音は,吸・呼気相の全肺野で聴診されることもあり,喘息との鑑別は困難である.またVCDは喘息と併存することもある.そのためステロイド治療に抵抗性であるが,投与される症例がある.今回,10歳女児のVCDと10歳男児の喘息児の連続性ラ音をβ2刺激薬吸入前後で呼吸音解析(LSA 2000)を施行し検討した.解析結果では,VCDは,最強度を示した周波数は,130 Hzであった.それは,喘息の最強度の周波数よりも低周波数帯域で吸気に多く記録されており,またβ2刺激薬吸入で改善を認めなかった.小児では,両疾患の発作時に肺機能検査や喉頭鏡などの検査は困難なことがある.呼吸音解析は,安静呼吸で行う非侵襲的検査である.今回の2症例においては,呼吸音解析による鑑別診断の可能性が示唆された.
著者
井庭 慶典 杉本 圭相 柳田 英彦 岡田 満 竹村 司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.54-59, 2011-04-15 (Released:2011-12-07)
参考文献数
41

血栓発症の背景にはさまざまな基礎疾患が存在し,さらに動脈血栓と静脈血栓ではその基礎疾患や発症病態も異なる。臨床的には単一因子ではなく,多くのリスク因子が混在し血栓が発症すると考えられる。ネフローゼ症候群は血栓形成の基礎疾患として重要であり,合併症として静脈血栓症はよく知られており,その発症には血液粘稠度の亢進に加え,凝固阻止因子の低下が発症の原因と考えられている。今回,ネフローゼ症候群の再発時に2臓器にわたり動脈血栓をきたした症例を経験したので,その血栓発症における病態と治療法を含めた今後の問題点について述べる。
著者
瀬戸 司 丸谷 怜 益海 大樹 西 孝輔 今岡 のり 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3-4, pp.109-114, 2017-12-20

[抄録]症例は1歳11ヶ月の男児.川崎病が疑われ,加療目的にて近医小児科へ入院した.第5病日に川崎病と診断され,アスピリン(30mg/kg),ウリナスタチン(15000 U/kg),免疫グロブリン(2g/kg)による治療が開始され,第7病日に追加の免疫グロブリン(1g/kg)療法が行われ,第11病日に退院となった.しかし,同日の夜間より再度発熱を認めたため,再燃として,第12病日より免疫グロブリン(1g/kg)の追加治療が行われた.第13病日も発熱が継続,約40秒の全身性強直性痙攣を認めたため,同日当院へ転院となった.転院当日,再度全身性強直性痙攣が出現,ミダゾラムの持続投与にて鎮痙した.頭部MRI 検査で白質脳症の所見を認めたため,ステロイドパルス療法を開始した.しかし,第15病日より痙攣重積状態となり,人工呼吸器管理,脳保護治療を開始するも,同日の夜には瞳孔が散大し,尿崩症の状態となった.2度目のステロイドパルス療法にて炎症反応は陰性化するも汎下垂体機能低下症,自発呼吸の消失,瞳孔散大,対光反射消失など,脳幹機能の消失を認めた.その後も意識状態の改善は認めず,深昏睡の状態が継続している.川崎病経過中に痙攣重積型急性脳症から,最終的に深昏睡の状態に至った稀な症例を経験したので報告する.
著者
益海 大樹 竹村 豊 有馬 智之 長井 恵 山崎 晃嗣 井上 徳浩 竹村 司
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.262-267, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
16

エリスリトールは低分子の糖アルコールで, カロリーが極めて低く, 甘味料としての需要が拡大している. 症例は10歳女児. 8歳, 9歳時にアイスクリームなどを摂取後のアナフィラキシー歴を3回有していたが, 原因は不明であった. 10歳時, 公園で遊び, 複数の菓子を摂取後に咽頭痛と乾性咳嗽, 蕁麻疹を認め, 当院外来を受診. 菓子内にはエリスリトールとソルビトールが含まれ, アレルゲンの可能性が考えられた. エリスリトールとソルビトールのプリックテストはともに陰性で, 皮内試験ではエリスリトールのみ陽性であった. 両者の食物経口負荷試験を施行し, ソルビトールは陰性, エリスリトールは合計1.7g摂取し30分後に皮膚・呼吸器症状を認め, アナフィラキシーを呈した. のちに実施した好塩基球活性化試験 (BAT) では反応を認めなかった. 近年, エリスリトールによる即時型食物アレルギーの報告例が増加している. 小児で摂取頻度の高い菓子に含有されていることがあり注意を要する. 本症例の糖類摂取における食事指導に有用であった.
著者
岡田 満 吉岡 加寿夫 磯川 貞之 竹村 司 木下 智弘 赤野 則久 牧 淳
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.1195-1199, 1992

This paper describes a case report of acute interstitial nephritis associated with Bufferin(R). A 15-year-old girl were referred to our hospital due to fever and renal dysfunction. Laboratory findings showed elevation of serum BUN and creatinine, and increased urinary β2-MG excreation. Light microscopic findings of her renal biopsy specimen revealed edema and numerous inflammatory cells in the interstitium, and minor alterations in glomeruli. The interstitial infiltrates consisted mainly of T cells and also monocytes/macrophages. Interstitial cells were labelled with antibodies to interleukin (IL)-1 and tumor necrose factor (TNF). Bufferin(R) was positive by lymphocyte stimulation test . Thus, we considered that this drug was causative in this case. This observation suggests the participation of cell -mediated immune injury in drug induced acute interstitial nephritis .
著者
山﨑 晃嗣 竹村 豊 長井 恵 井上 徳浩 竹村 司
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1-2, pp.9-16, 2016-06-23

食物アレルギーは小児期において,有病率が高く,増加傾向にある重大な健康上の問題点である.しかしながら,現在のところ,根治に至る有効な治療法はない.そのため,食物アレルギーの発症予防は極めて重要である.食物アレルギーの発症に近年,経皮感作が注目されている.そのため,乳児期の早期に湿疹治療をプロアクティブ療法で行うことで,食物アレルギー発症予防が可能かどうかを検討した.我々の施設を受診した乳児128人を,初診時に生後4か月以下であった早期群66人,5か月以上であった晩期群62人に分けて比較した.結果,晩期群では19人,25アレルゲンの食物アレルギー発症を認めたのに対し,早期群では9人,9アレルゲンでの食物アレルギー発症を認めた.乳児期早期からの湿疹治療により,食物アレルギーの発症と,複数の食物アレルギー発症の予防効果が認められた.食物アレルギー発症予防のためには,乳児期早期からのアレルゲン摂取とあわせて,皮膚治療を行なうことが重要である.