著者
益田 仁
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.87-105, 2012-06-30 (Released:2013-11-22)
参考文献数
33
被引用文献数
3 1

これまでのフリーター研究では, その析出過程をめぐって構造的側面と主体的要因が切り離されて論じられ, 両者をリンクさせようとする視点が欠けてきた. そのような問題意識のもと, 本稿では5年間をかけて継続的に行ったフリーターへの聞き取り調査をもとに, 彼らの置かれた生活世界を明らかとし, その「希望」をすくいとることにより, フリーター研究における構造と主体という二元論的な対立を乗り越えたい. それは結果として, 現代日本社会の有する構造的な緊張の一端を照らし出すだろう.事例から確認されることは, われわれの社会は, 構造として不安定な雇用を必要としつつも, 規範面においてはそれを引き受ける主体を許容しない/しえない, という事実である. 結果, そのひずみは個々人のうちに蓄積され, 主体レベルでの解消が要求されているのである. 構造と規範の軋轢が発動した不安と焦りの行きつく先が「希望」なのであり, 何がしかの「希望」を自らの生の一部に組み込むことによって, 彼らはその生全体を受け入れようとしているのである. しかし, 事例から確認されたそれぞれの「希望」は, その発生源それ自体の変革には向かってはおらず, むしろ構造的緊張の緩衝剤として機能していることが確認された.
著者
黒山 竜太 益田 仁 柳詰 慎一 脇野 幸太郎 Ryuta KUROYAMA Jin MASUDA Shinichi YANAZUME Kotaro WAKINO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.89-95, 2013

本研究は、救護施設における現状を踏まえた上で、利用者と施設職員にどのような心理的ニーズがあるのかを探索することを目的としたものである。救護施設の現状としては、社会情勢が揺れ動く中生活保護法のうえに成り立つ救護施設において、利用者の自立支援を促すためには様々な阻害要因が横たわっていることが窺えた。施設利用者については、その背景的要因を踏まえた上での心理的支援、とりわけ個別支援計画の作成や地域生活移行における心理的支援の必要性が示唆された。施設職員については、福祉施設全般としてメンタルヘルスへの啓発や職務に対する客観的理解および裁量度、利用者についての理解、チームでの相互の意思確認などの重要性が示唆された一方、救護施設自体の特性を考慮した上での支援については検討の余地が残されていることも明らかとなり、今後の課題が示された。This report considered the present state of public assistance institutions and the psychological needs of the people in such facilities. Now, public assistance institutions exist under the Livelihood Protection Law. Therefore, it was understood that people's self-reliance is checked by various factors. For people in facilities, it was suggested that the psychological supports based on a background factor is necessary. Especially, it was suggested that the psychological supports on designing individual support programs and the relocation from residential institutions to community living are necessary. Otherwise, for workers in facilities, it was suggested that mental-health education and objective understanding for their own jobs and the degree of discretion of their jobs and understanding about people in facilities and mutual intentions check in a team are important in all over social welfare institutions. On the other hand, it was indicated that the discussion about the support of public assistance in stitutions is insufficient. Future research topics are shown.