著者
平良 眞也 目島 直人 神山 寛之
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P2073, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】日々の臨床の中で、姿勢を変える事で様々な変化が出てくる事はセラピストなら誰でも経験する事である.担当の患者で野球を趣味に持つ方の治療をしている際に、打撃姿勢を変え、頚部の筋緊張の調整を行った際に、『ボールが見やすくなった』とのコメントが聞かれた.そこで今回、後頭下筋群の筋緊張を変化させた時に衝動性眼球運動にどのような影響があるのか、関連性を調べたので以下に報告する.【方法】今回の研究の意図をしっかり説明した上で了承を得た、身体に問題のない健常成人9名.左右の目を片目ずつ、眼球運動幅を計測する.計測方法は、まず壁にテープメジャーを横にして貼り付け、被検者の目線の高さに合わせて設定する.そして被検者の目と壁の距離を30cmに設定し、端坐位をとらせる.計測は被検者には左目を押さえてもらい、頭部を動かさないように注意してもらう.その時、目の前の数字を基準に、テープメジャー上の目盛の数字がはっきり見える所までを答えてもらい、基準からの距離を計測した.これを耳側方向、鼻側方向の距離を計測し、左目も同様に計測した.そして被検者の眼球運動を左右方向で行い、その時に左右どの方向に動かし易いかを聴取し、後頭下筋群の筋収縮の強弱を徒手にて左右差を確認した.そして筋収縮の左右差と眼球運動幅、眼球の動かし易さと眼球運動幅の関連を調べた.また、後頭下筋群の筋緊張を左右ほぼ同等となるよう坐位姿勢を変化させ、眼球運動幅の変化をアプローチ前と同様に計測、比較した.【結果】(眼球の動かし易さと眼球運動幅)左右へ眼球運動を行なってもらい比較した結果、9例中7例、眼球運動幅が大きい側と反対方向に眼球の動かしやすさを訴えた.(後頭下筋群の筋収縮の左右差と眼球運動幅)9例中7例が、左右の眼球運動で眼球運動幅が大きかった目の側と反対側後頭下筋群の筋緊張が高かった. (アプローチ前後の眼球運動幅)アプローチ後、被検者9例中8例が眼球運動幅が増大した.殆どの被検者において動かし易さが変化したと訴えた.【考察】スポーツでは動体視力が必要となる.その中で衝動性眼球運動に焦点を当てた.当初、眼球運動幅が大きい側の目の方向に動かし易いと考えていたが、反対の結果となった.これは眼球を動かしにくい側の眼球運動を動かし易い側で代償しているのではないかと考える.そして後頭下筋群の筋収縮の差も、努力性筋収縮を引き起こしていたのではないかと考える.また、坐位姿勢を変化させ、頭頚部の筋緊張を変化させた事で眼球運動幅の増大が起こった理由として、衝動性眼球運動及び頚部運動の両方を駆動するものが運動前野にある事、運動前野の腹側部位が刺激を受けると、衝動性眼球運動を活性化する事から、後頭下筋群の筋緊張の調整をする事で眼球運動が活性化し、眼球運動幅も増大したものと考える.【まとめ】衝動性眼球運動と後頭下筋群の筋緊張には関連があると考えられる.
著者
小西 貴 目島 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1254, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】 日々の臨床で治療を展開していく際に局所に問題点をしぼらず,全身的に評価し治療していくことが重要であることはいうまでもない.筆者は慢性閉塞性肺疾患の対象者に仙腸関節の関節モビライゼーションを施行すると,酸素飽和度や胸郭の動きが改善し,呼吸苦が減少する場面に多々遭遇する.そこで今回,仙腸関節が呼吸機能の目安となる胸郭拡張差に及ぼす影響について検討し,若干の知見を得たので考察を踏まえて報告する.【対象と方法】 本研究の趣旨を十分に説明し,賛同を得た健常男性11名(平均年齢28±2.6歳)を対象とした. 方法としては次の通りである.まず,仙腸関節の関節モビライゼーション施行前後で最大吸気を行ってもらい胸郭拡張差を測定した.胸郭の周径は1.腋窩レベル,2.剣状突起レベル,3.第10肋骨レベルで計測した.仙腸関節モビライゼーションは左右の仙腸関節にうなずき運動,起き上がり運動を3回ずつ行った.以上の方法で得た胸郭拡張差を端坐位にてメジャーで計測して仙腸関節モビライゼーション前後の差を検出し,そのデータをt検定にて比較した.【結果】 被験者全員に腋窩レベル,剣状突起レベル,第10肋骨レベルで胸郭の拡張が認められた. 仙腸関節のモビライゼーション前後で上記1.~3.のレベルのそれぞれで胸郭拡張差の有意差が認められた(p<0.05).【考察】 仙骨のうなずき運動が生じると第5腰椎は伸展する.腰椎が伸展運動を起こすと横隔膜の腰椎部である右脚と左脚が下方へ伸張され,横隔膜全体は下方へ牽引される.よって,横隔膜の下降とそれに伴うドームの平坦化によって,胸郭の垂直径を増やす.また,横隔膜の下降によって,腹腔内容の圧縮,腹横筋のような伸張された腹筋群の他動的張力による腹腔内圧の上昇によって抵抗される.腹腔内圧の上昇は,下部肋骨を側方へ拡大させる.腹腔内圧の上昇によって一旦固定されると引き続いて生じる横隔膜の肋骨線維の収縮により下位と中位の肋骨が挙上される. また,仙骨の起き上がり運動により寛骨は外旋‐内転する.それに伴って,大腰筋は緩んだ状態となり,大腰筋と筋連結をもっている横隔膜も弛緩する. よって,仙骨のうなずき運動により横隔膜全体は下方へ牽引され,仙骨の起き上がり運動により弛緩が促されることになる.これは仙骨のうなずき‐起き上がり運動により横隔膜の収縮‐弛緩がスムーズに行われるようになっているのではないかと思われる.
著者
平良 眞也 目島 直人 神山 寛之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2073, 2009

【目的】日々の臨床の中で、姿勢を変える事で様々な変化が出てくる事はセラピストなら誰でも経験する事である.担当の患者で野球を趣味に持つ方の治療をしている際に、打撃姿勢を変え、頚部の筋緊張の調整を行った際に、『ボールが見やすくなった』とのコメントが聞かれた.<BR>そこで今回、後頭下筋群の筋緊張を変化させた時に衝動性眼球運動にどのような影響があるのか、関連性を調べたので以下に報告する.<BR>【方法】今回の研究の意図をしっかり説明した上で了承を得た、身体に問題のない健常成人9名.左右の目を片目ずつ、眼球運動幅を計測する.計測方法は、まず壁にテープメジャーを横にして貼り付け、被検者の目線の高さに合わせて設定する.そして被検者の目と壁の距離を30cmに設定し、端坐位をとらせる.計測は被検者には左目を押さえてもらい、頭部を動かさないように注意してもらう.その時、目の前の数字を基準に、テープメジャー上の目盛の数字がはっきり見える所までを答えてもらい、基準からの距離を計測した.これを耳側方向、鼻側方向の距離を計測し、左目も同様に計測した.<BR>そして被検者の眼球運動を左右方向で行い、その時に左右どの方向に動かし易いかを聴取し、後頭下筋群の筋収縮の強弱を徒手にて左右差を確認した.そして筋収縮の左右差と眼球運動幅、眼球の動かし易さと眼球運動幅の関連を調べた.また、後頭下筋群の筋緊張を左右ほぼ同等となるよう坐位姿勢を変化させ、眼球運動幅の変化をアプローチ前と同様に計測、比較した.<BR>【結果】(眼球の動かし易さと眼球運動幅)左右へ眼球運動を行なってもらい比較した結果、9例中7例、眼球運動幅が大きい側と反対方向に眼球の動かしやすさを訴えた.(後頭下筋群の筋収縮の左右差と眼球運動幅)9例中7例が、左右の眼球運動で眼球運動幅が大きかった目の側と反対側後頭下筋群の筋緊張が高かった. (アプローチ前後の眼球運動幅)アプローチ後、被検者9例中8例が眼球運動幅が増大した.殆どの被検者において動かし易さが変化したと訴えた.<BR>【考察】スポーツでは動体視力が必要となる.その中で衝動性眼球運動に焦点を当てた.当初、眼球運動幅が大きい側の目の方向に動かし易いと考えていたが、反対の結果となった.これは眼球を動かしにくい側の眼球運動を動かし易い側で代償しているのではないかと考える.そして後頭下筋群の筋収縮の差も、努力性筋収縮を引き起こしていたのではないかと考える.また、坐位姿勢を変化させ、頭頚部の筋緊張を変化させた事で眼球運動幅の増大が起こった理由として、衝動性眼球運動及び頚部運動の両方を駆動するものが運動前野にある事、運動前野の腹側部位が刺激を受けると、衝動性眼球運動を活性化する事から、後頭下筋群の筋緊張の調整をする事で眼球運動が活性化し、眼球運動幅も増大したものと考える.<BR>【まとめ】衝動性眼球運動と後頭下筋群の筋緊張には関連があると考えられる.