著者
岡邨 直人 相馬 俊雄 関根 裕之 大野 健太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A3P3003, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】近年,スポーツ施設や医療機関,地方自治体などで,筋力増強,柔軟性向上などを目的に,振動刺激装置(以下,ガリレオ)を用いたトレーニングが行われている.ガリレオは,振動板上で立位や軽いスクワット姿勢保持を行う全身ガリレオと,手で把持しながら振動刺激が得られる上肢把持型振動刺激装置(以下,上肢ガリレオ)がある.しかし,上肢ガリレオの効果について筋電図学的に検討を行なった報告はほとんど見られない.そこで本研究の目的は,上肢ガリレオを用いて,振動周波数と上肢の肢位を変化させた時の肩関節周囲筋の筋活動量を明らかにすることである.【対象と方法】対象は本研究内容を十分に説明し,同意を得た健常成人男性10名(平均年齢:26.0±4.7歳,身長:169.8±5.7cm,体重:65.8±8.0kg)とした.使用機器は,表面電極,筋電図解析装置一式,上肢ガリレオ(株式会社エルクコーポレーション)を用いた.課題動作は,右手で上肢ガリレオ(重さ3kg)を保持して(1)端座位で肘関節90°屈曲位,(2)端座位で肩関節90°屈曲位,(3)背臥位で肩肘関節90°屈曲位,(4)背臥位で肩肘関節60°屈曲位の4条件とし,その肢位で10秒間保持した.筋電図(EMG)導出は,右側の上腕二頭筋,上腕三頭筋,三角筋(前部・中部・後部線維)とした.振動周波数は振動なし,10Hz,20Hz,30Hzの4条件とした.動作中のEMGは,サンプリング周波数1KHz,バンドパスフィルタ35~500Hzで計測した.解析は,運動開始から5秒後以降の3秒間の各2回の平均値を算出した.正規化は,各筋の最大随意等尺性収縮中の区間300msecの積分値(IEMG)を基準とした(%IEMG).統計処理は4条件において一元配置分散分析を行い,事後検定にはTukey-Kramer法を用いて,有意水準を5%とした.【結果】すべての筋・肢位において,振動なし・10Hz・20Hzより30Hzで有意に大きな値を示した.肩関節90°屈曲位保持の三角筋前部線維の30Hzでは46.7%MVC,三角筋中部線維の30Hzでは59.6%MVCの筋活動量がみられた.また,すべての筋において,振動なしの活動量に対して,30Hzで1.5~4倍の活動量がみられた.【考察】結果より,30Hzで振動なし・10Hz・20Hzより大きな筋活動量を示した.これは実際に機器を把持した際の筋活動量に加え,振動刺激により筋に反射性収縮が発生しているため,筋活動量が増加したと考えられる.また,肩関節90°屈曲位の三角筋前部・中部線維で約50~60%という筋活動量が得られた.このことから30Hzでは,肩関節周囲筋の筋力増強としての効果が期待できると考えられる.
著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 相馬 俊雄 伊橋 光二 小野 武也 赤坂 清和 半田 康延
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.116, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】歩行や立位保持時の膝窩筋の筋活動については,過去にいくつかの報告があるが,起立動作時における膝窩筋の活動を報告したものはみない.今回,我々は起立動作時における膝窩筋の筋活動を解析したので報告する.【方法】対象は,膝関節に損傷の既往のない健常男性8名(21歳_-_36歳)であった.被験者には実験内容を十分に説明した上でインフォームド・コンセントを得た.運動課題は高さ40cmの椅子からの起立動作であり,足関節が軽度背屈位の肢位から動作を開始した.起立の速度は自然速度とし,動作遂行時における膝窩筋および外側広筋からEMGを導出した.膝窩筋のEMGの導出には双極性のワイヤー電極を使用し,外側広筋のEMG導出には表面電極を使用した.右側の膝窩筋に25ゲイジのガイド針で双極ワイヤー電極を刺入し,電気刺激で確認した後,ガイド針を抜去して電極を留置した.導出されたEMGは,バンドパスフィルタ処理(膝窩筋;10Hzから1000Hz,外側広筋;10Hzから500Hz)を行った後,全波整流し移動平均処理を行った.さらに,最大筋収縮時に得られた値を基準にして正規化した(%EMG). 動作分析には床反力計(Kistler)と三次元動作解析装置(Oxford Metrics)を使用し,頭部が動きだした時期から臀部が椅子から離れた時期までの期間を第一相とし,臀部が椅子から離れてから膝関節が完全伸展するまでの期間を第二相と規定し,各被験者が起立動作に要した時間を100%として動作時間を正規化した.【結果】運動開始から直立位までに要した時間は1969±394(平均±標準偏差)msecであり,第一相が768±166msec(39.4±6.4%),第二相が1201±298msec(60.6±6.4%)であった. 膝窩筋の筋活動をみると,動作開始時にわずかな活動(15%EMG)がみられ,徐々に活動量が増加し,殿部が椅子から離れる前(32%time)に最も強い活動(29 %EMG)を示した.臀部が椅子から離れた直後から60%timeまで膝窩筋の活動は急激に減少し,60%time以降では殆ど筋活動が観察されなかった.外側広筋の筋活動をみると,第一相初期(0から20%time)では殆ど筋活動がみられず,20%timeから活動量が増加し,臀部が椅子から離れる直前(37%time)に最も強い活動 (33%EMG)を示し,その後,動作が終了するまで徐々に活動量が低下していくのが観察された.【考察】我々は過去に歩行,立位保持,階段昇降動作時における膝窩筋の筋活動を解析し,膝窩筋が大腿四頭筋と同時期に活動することを報告してきた.しかし,本研究の結果においては先行研究と異なり,外側広筋の活動に先駆けて膝窩筋の活動がみられた.これは,体幹を前屈する際に大腿骨が脛骨に対して前方移動するのを防ぐためではないかと推測できる.
著者
丸居 夕利佳 青木 美幸 田原 岳治 小川 鶯修 相馬 俊雄
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.D3P1505-D3P1505, 2009

【はじめに】近年,糖尿病(以下,DM)患者やその家族などを対象に,様々な取り組みが実施されている.当院では,毎月DM教室を行い,理学療法士(以下,PT)等が,講義やDMウォークラリー(以下,DM-WR)などを開催している.そこで今回,当院におけるDM-WRの活動内容の紹介と,参加者のセルフエフィカシー(以下SE)について調査・検討したので報告する.<BR><BR>【対象】対象は,平成20年5月及び9月に開催されたDM-WRに参加した28名(DM罹患者15名,DM非罹患者13名:男性5名,女性23名,平均年齢66.0±14.6歳)対象者には,調査に先立ち調査の内容を説明し同意を得た.<BR><BR>【方法】対象者は血圧および血糖値測定後,全長約3.5kmのコースをウォーキングした.途中,水分補給およびDMクイズを約15分実施した.約60分でゴールし,血圧測定後,アンケートの記入を行った.<BR><BR>【アンケート内容】アンケートは3因子で構成されており,疾患に対する対処行動の積極性(14項目),健康に対する統制感(9項目),運動に対する積極性(7項目)の合計30の質問項目になっている.回答は5件法で行い,得点が高いほど自己効力感が高いことを示す.アンケートはDM-WR終了後,その場で回答し,1ヶ月後に同様のアンケートを使用し郵送で追跡調査を行った.<BR><BR>【結果】アンケートの各因子の平均値は,疾患に対する対処行動の積極性・健康に対する統制感・運動に対する積極性の順に実施直後:4.2点,4.1点,4.3点,1ヵ月後:4.3点,4.0点,4.3点であった.各回の最高得点項目と最低得点項目の平均値はそれぞれ,実施直後で「DMの自己管理に運動が必要であることを知っている」4.8点,「適度な運動を計画通りに続けることができる」3.7点で,1ヵ月後で「医師や看護師を信頼できる」4.9点,「適度な運動を計画通りに続けることができる」と「規則正しい生活を送ることができる」3.6点であった.<BR><BR>【考察】この調査を実施する過程では,1ヶ月後のSEの点数が実施直後よりも低下すると考えていたが,著明な変化は見られなかった.DM-WRの参加者は元々DM治療に主体的に参加していると考えられるため,DM-WRがSEを向上させる程の刺激に成り得なかった可能性がある.運動継続性のSEに関しては,実施直後と1ヶ月後共に点数が低い傾向が見られた.今回のDM-WRのような企画型イベントに参加するだけでは,自ら運動を計画し,継続する啓発効果までは十分に得られないと推測される.このことから行動変容に対する介入が重要であると考えられた.今後はSEアンケートの妥当性の検討,DM-WR前後のSEの調査及び検討,行動変容に対する効果判定など更なる検討が必要だと考える.