著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 松木 儀浩 伊橋 光二 半田 康延 池田 知純
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.226-230, 1999-07-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
11

本研究の目的は,健常者を対象にして歩行中および立位保持中に膝窩筋筋電図を導出し,その機能を明らかにすることであった。対象は健常男性10名であり,課題動作は自然歩行および膝関節0度,30度,60度および90度屈曲位での立位保持であった。筋電図の導出にはワイヤー電極を使用し,電気刺激を行うことにより電極が膝窩筋内に入っていることを確認した。各動作時に得られた筋電図は全波整流したのち移動平均処理を行い平滑化し,最大等尺性下腿内旋運動時に得られた筋電図をもとに正規化した。歩行中の膝窩筋筋活動は,立脚初期,立脚後期および遊脚後期に強い活動を示した。特に立脚期9.3%時点では膝窩筋の筋活動は最も強く,下腿最大内旋運動時の72.2 ± 14.8%を示した。また,立位保持中における膝窩筋の筋活動は膝関節屈曲角度の増加に伴い増加した。これらの結果から,膝窩筋は,歩行時には遊脚後期から立脚初期にかけては膝関節過伸展を防御し,立脚後期から遊脚初期にかけては膝関節の屈曲運動に関与することが推察された。また,立位保持時には脛骨の前方移動を防ぐように活動していると考えられた。
著者
松木 儀浩 大西 秀明 八木 了 伊橋 光二 半田 康延 池田 知純
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.9-14, 2004-02-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
7

本研究の目的は,中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の機能的な違いを明らかにすることである。対象は健常男性7名であり,中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維に双極ワイヤー電極を刺入して筋電図を導出した。導出された筋電図から中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の筋電図積分値(Integrated Electromyogram: IEMG)を算出し,(1)各筋のIEMGおよび股関節外転最大張力と股関節屈曲位に内旋・外旋位を組み合わせた肢位との関係と(2)各筋のIEMGと外転張力との関係を解析した。股関節外転最大張力および各筋から導出されたIEMGと股関節回旋肢位との関係をみると,股関節外転最大張力は股関節外旋位で最も弱く(p < 0.01),中段筋前部・中部・後部線維のIEMGも外旋位で有意に低い値を示した(p < 0.01)。また,股関節外転最大張力および各筋から導出されたIEMGと股関節屈曲肢位との関係をみると,股関節屈曲角度が増加するにともない股関節外転最大張力は低下し(p < 0.01),股関節外転運動時における中殿筋前部線維の筋活動量も低下することが示された(p < 0.01)。股関節外転張力と首筋の筋活動との関係をみると,股関節外転張力の増加にともない,中殿筋の各線維および大腿筋膜張筋の筋活動は増大したが,大殿筋上部線維の筋活動はほぼ一定であった。これらの結果は,股関節外転筋である中殿筋前部・中部・後部線維,大腿筋膜張筋および大殿筋上部線維の機能的な違いの一部を示していると考えられる。
著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 伊橋 光二 半田 康延
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.485-492, 1999-08-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 等速性最大膝屈曲運動時におけるハムストリングス4筋の筋活動と膝関節角度との関係を明らかにすることであった.対象は健常男性10名であった.運動課題は角速度30度/secの等速性最大膝屈曲運動とし, 膝関節0度から120度屈曲位の範囲を行わせた.筋電図は半腱様筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋長頭および大腿二頭筋短頭の4筋を対象として, 双極性ワイヤー電極を用いて導出し, さらに膝関節15度毎の筋電図積分値を求めた.また, 同一内容の実験を3ケ月の期間をあけて同じ被験者に再度行うことにより得られた結果の信頼性を確認した.その結果, 膝関節屈曲トルクは15度から45度屈曲位で最も大きかった.半腱様筋, 半膜様筋および大腿二頭筋短頭の筋電図積分値は, 2回の測定とも膝関節屈曲角度の増大と共に増加し, 膝関節90度から105度屈曲位で最も大きな値を示した.一方, 大腿二頭筋長頭の筋電図積分値は, 2回の測定とも膝関節15度から30度屈曲位で最も高い値を示し, その後, 膝関節屈曲角度の増大と共に減少した.これらのことは, 最大随意運動中の主動作筋の筋活動は, 関節角度に影響されて変化することを示しており, 随意運動中の発揮トルクは, たとえ最大運動時であっても筋節長やモーメントアームの影響だけでなく, 主動作筋の活動状態 (運動単位の発火および動員) , すなわち神経系の要因に影響されていることを示唆していると考えられた.
著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 松木 儀浩 伊橋 光二 半田 康延 池田 知純
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.226-230, 1999-07-31

本研究の目的は, 健常者を対象にして歩行中および立位保持中に膝窩筋筋電図を導出し, その機能を明らかにすることであった。対象は健常男性10名であり, 課題動作は自然歩行および膝関節0度, 30度, 60度および90度屈曲位での立位保持であった。筋電図の導出にはワイヤー電極を使用し, 電気刺激を行うことにより電極が膝窩筋内に入っていることを確認した。各動作時に得られた筋電図は全波整流したのち移動平均処理を行い平滑化し, 最大等尺性下腿内旋運動時に得られた筋電図をもとに正規化した。歩行中の膝窩筋筋活動は, 立脚初期, 立脚後期および遊脚後期に強い活動を示した。特に立脚期9.3%時点では膝窩筋の筋活動は最も強く, 下腿最大内旋運動時の72.2±14.8%を示した。また, 立位保持中における膝窩筋の筋活動は膝関節屈曲角度の増加に伴い増加した。これらの結果から, 膝窩筋は, 歩行時には遊脚後期から立脚初期にかけては膝関節過伸展を防御し, 立脚後期から遊脚初期にかけては膝関節の屈曲運動に関与することが推察された。また, 立位保持時には脛骨の前方移動を防ぐように活動していると考えられた。
著者
市江 雅芳 関 敦仁 関 和則 半田 康延 藤居 徹 山本 澄子 大澤 治章
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、治療的電気刺激が片麻痒患者の歩行能力を改善するメカニズムを、筋音図・筋電図・動作解析を用いて明らかにすることが当初の目的であった。しかし、測定用マイクロフォンの質量が大きく、慣性による雑音が生じることが判明した。これは根元的な問題であるため、片麻痺患者の歩行動作時筋音図測定は断念せざるをえなかった。そこで、臨床研究は治療的電気刺激の効果確認に留め、測定システム更新後の布石として筋音図の基礎的な研究を行うこととした。1.2チャンネル表面電極式電気刺激装置を用いて、慢性期脳卒中患者5名に対し治療的電気刺激を行った。刺激部位は、大腿四頭筋および総腓骨神経で、交互刺激を1回15分間、一日2回行った。治療期間は約3ヶ月であった。その結果、歩行速度に改善が認められ、膝伸展力にも増加が認められた。2.筋音図計測の基礎実験を健常被験者で行った。大腿直筋および外側広筋、内側広筋を対象に、筋電図および筋音図の特性の違いを検討した。その結果、筋電図よりも筋音図において、膝の回旋肢位による違いが鮮明に現れることが判明した。また、筋電図は収縮力の増加に伴い比例的に積分筋電図が増加する現象が確認されたが、筋音図は、最大膝伸展の80%において、積分筋音図が減少する現象が認められた。3.次に等尺性筋収縮時における筋音図と筋電図の周波数特性を比較検討した。膝関節伸展時の大腿直筋の筋活動を、筋質図と筋音図により測定し、これらをFourier変換とWavelet変換を用いて周波数解析を行った。その結果、筋電図は筋の電気的活動そのものをとらえているが、筋音図は筋コンプライアンスの変化に伴う筋の固有振動周波数の変化をとらえていることが判明した。4.今後、質量の少ない筋音図測定装置を開発すれば、脳卒中片麻痺者の歩行が治療的電気刺激によって改善する筋に関する要因を明らかにすることが出来ると考えられる。
著者
鈴木 佳代子 関 和則 半田 康延
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.172-175, 2009-04-10 (Released:2009-09-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Damage of central nervous system caused by a stroke or spinal cord injury usually brings about motor paralysis and increase of muscle tone, spasticity. Excessive spasticity disturbs smooth and coordinated voluntary movement. In this study, we investigated the change of motion parameters during walking in the spastic paraplegic patients and hemiparetic stroke patients before and after application of therapeutic electrical stimulation (ES) . Five spastic paraplegics and seven spastic hemiparetics participated in this study. Eight were male and mean age was 46.3 ± 13.8 (16∼61) years. With regard to the stroke patients, all had left hemiparesis. Stimulation parameters were pulse width of 0.3 msec and frequency of 20 Hz. For the spastic paraplegic patients, stimulation was given to right and left leg alternately during 15 min with 10 s on and 5 s off interval. For the spastic hemiparetic patients, stimulation was only given to the side of paralysis with same duration and interval as the paraplegics. The data of more-spastic side of paraplegics and paralyzed side of hemiparetics were treated as one group (severe side). As for severe side, mean motion range of knee joint was significantly increased after ES (p < 0.05) . Mean motion range of hip joint showed a tendency to increase after stimulation (p < 0.1). Physiological and kinesiological mechanism on the effect of ES providing the change of some motion parameters is complicated. Usually, therapeutic ES for a muscle brings about spasticity inhibition of the antagonist muscle and facilitation of the target muscle. In the present study, ES for rectus muscle possibly suppressed the tone of hamstrings and elicited voluntary action of rectus. Hamstrings have actions as a knee flexor and a hip extensor. Consequently, the motion range of knee and hip joint may have been easily expanded during walking. The results in the present study suggest ES during 15 min can improve gait performance.
著者
大西 秀明 八木 了 大山 峰生 相馬 俊雄 伊橋 光二 小野 武也 赤坂 清和 半田 康延
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.116, 2003 (Released:2004-03-19)

【はじめに】歩行や立位保持時の膝窩筋の筋活動については,過去にいくつかの報告があるが,起立動作時における膝窩筋の活動を報告したものはみない.今回,我々は起立動作時における膝窩筋の筋活動を解析したので報告する.【方法】対象は,膝関節に損傷の既往のない健常男性8名(21歳_-_36歳)であった.被験者には実験内容を十分に説明した上でインフォームド・コンセントを得た.運動課題は高さ40cmの椅子からの起立動作であり,足関節が軽度背屈位の肢位から動作を開始した.起立の速度は自然速度とし,動作遂行時における膝窩筋および外側広筋からEMGを導出した.膝窩筋のEMGの導出には双極性のワイヤー電極を使用し,外側広筋のEMG導出には表面電極を使用した.右側の膝窩筋に25ゲイジのガイド針で双極ワイヤー電極を刺入し,電気刺激で確認した後,ガイド針を抜去して電極を留置した.導出されたEMGは,バンドパスフィルタ処理(膝窩筋;10Hzから1000Hz,外側広筋;10Hzから500Hz)を行った後,全波整流し移動平均処理を行った.さらに,最大筋収縮時に得られた値を基準にして正規化した(%EMG). 動作分析には床反力計(Kistler)と三次元動作解析装置(Oxford Metrics)を使用し,頭部が動きだした時期から臀部が椅子から離れた時期までの期間を第一相とし,臀部が椅子から離れてから膝関節が完全伸展するまでの期間を第二相と規定し,各被験者が起立動作に要した時間を100%として動作時間を正規化した.【結果】運動開始から直立位までに要した時間は1969±394(平均±標準偏差)msecであり,第一相が768±166msec(39.4±6.4%),第二相が1201±298msec(60.6±6.4%)であった. 膝窩筋の筋活動をみると,動作開始時にわずかな活動(15%EMG)がみられ,徐々に活動量が増加し,殿部が椅子から離れる前(32%time)に最も強い活動(29 %EMG)を示した.臀部が椅子から離れた直後から60%timeまで膝窩筋の活動は急激に減少し,60%time以降では殆ど筋活動が観察されなかった.外側広筋の筋活動をみると,第一相初期(0から20%time)では殆ど筋活動がみられず,20%timeから活動量が増加し,臀部が椅子から離れる直前(37%time)に最も強い活動 (33%EMG)を示し,その後,動作が終了するまで徐々に活動量が低下していくのが観察された.【考察】我々は過去に歩行,立位保持,階段昇降動作時における膝窩筋の筋活動を解析し,膝窩筋が大腿四頭筋と同時期に活動することを報告してきた.しかし,本研究の結果においては先行研究と異なり,外側広筋の活動に先駆けて膝窩筋の活動がみられた.これは,体幹を前屈する際に大腿骨が脛骨に対して前方移動するのを防ぐためではないかと推測できる.
著者
仲田 栄子 有賀 久哲 半田 康延 小倉 隆英 関 和則 高井 良尋
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

今日のがん治療において、腫瘍内低酸素領域の克服が重要な課題となっている。そこで我々は電気刺激を用いることで腫瘍内低酸素領域を改善できるのではないかと考えた。C3H マウスの右大腿部に Squamous Cell Carcinoma-VII腫瘍(SCC-VII)を移植し、仙骨部後仙骨孔直上の皮膚表面に電気刺激を行った結果、刺激中に腫瘍表面の血流値で 22%の増加、電気刺激終了から約 50分後に腫瘍内部の酸素分圧で 28%の増加が確認された。低酸素マーカーであるピモニダゾールを使用した結果、電気刺激終了後 40 分で低酸素領域は 20%有意に減少した。X 線を腫瘍移植部に局所照射したところ、一回照射(総線量 5Gy)・分割照射(総線量 7.5Gy)のいずれにおいても放射線単独群より放射線+電気刺激併用群で腫瘍の成長に遅延が認められた。