著者
相馬 恒雄 船木 實 酒井 英男 椚座 圭太郎
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.飛騨ナップと、飛騨帯(飛騨/宇奈月変成帯)の上昇と中生層のテクトニクスを関係させて考察した。飛騨帯は250Maの衝突変成(6Kb:地下20Km)のあと、180Maには2Kb、170Maには地表付近まで上昇した。上昇にともない飛騨外縁帯を被覆する来馬層群が削剥され、付加体堆積物である美濃帯が形成した。上昇の終了と同時に手取層群が飛騨帯と飛騨外縁帯を被覆しており、飛騨ナップの形成により飛騨帯と飛騨外縁帯が接合したと考えた。2.変成岩の熱履歴と古地磁気方位の変化からナップ運動を知るために、神岡地域の高温変成岩、母岩のミグマタイト、さらにそれらを取り込む神岡鉱床のヘデン岩についてEPMA分析とテリエ法により検討した。変成岩およびミグマタイトの形成は、250Maの飛騨変成作用以前であり、その後3回以上の変成作用をこうむっている。各岩石の熱消磁のパターンは異なるが、岩石学的な熱履歴との対応づけは今後の課題である。3.熱水変質岩の磁力の安定性と保持機構を調べるため、神岡鉱床のヘデン岩40個について残留磁化測定(交流消磁法で500Oeまで)とVSM(振動型磁力計)による磁化特性の測定(10KGaussの磁場で700℃まで)を行った。残留磁化は安定なものと不安定なものがあり、安定なものも磁化方向はバラバラであった。磁性鉱物を検討した結果、磁化を担っている鉱物は全てヘマタイトであることが判明した。磁化の不安定性と集中度が良くなかったことについては今後の課題である。4.飛騨外縁帯の結晶片岩の年代測定を岡山理科大学にて行った。青海地域の8個の試料の年代は264-338Maであり、青海地域が西南日本の三郡変成帯の延長であることを示す。飛騨帯を特徴づける250Ma変成作用を被っていないので、180Ma頃と推測される飛騨ナップ形成以前には、飛騨帯宇奈月変成帯と飛騨外縁帯は接していなかった。