著者
船木 實 大槻 一枝 大野 正夫
出版者
日本応用藻類学会
雑誌
Algal Resources (ISSN:18833284)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.29-47, 2021 (Released:2022-12-30)

In the years 1932-52, Yoshiro Otsuki, while living in China, investigated how to cultivate Saccharina japonica var. japonica (Makombu) and Undaria pinnatifida (Wakame) in the Yellow Sea area in China. In 1938 he was able to develop a seeding method that could release numerous numbers of zoospores from mature Makombu and Wakame within several hours by stimulating the seaweed through partial drying of their thalli also known as “dry stimulation method ”. Consequently, he was able to establish the complete cultivation of Wakame using the raft cultivation method near the sea surface. However, Makombu has to be submerged on the seabed during the summer season because of too high temperature. Otsuki solved this problem by cultivating the gametophyte stage in the oligotrophic seawater below the sea surface and by this treatment, the gametophyte stage developed some form of resistance against environmental change. He was able to establish the complete cultivation technique of Makombu in 1952. However, he was not able to apply the technique in commercial scale in China as he had to return to Japan in 1953, just after being released from detention by the Chinese government. In Japan, he started the cultivation of Wakame in Onagawa, Miyagi Prefecture as soon as he returned home. This time he succeeded in the commercial cultivation of Wakame. Some Chinese researchers have evaluated his contribution to the establishment of cultivated technology of Makombu in Yellow Sea, where it does not grow naturally. Unfortunately, Otsuki's achievements have been almost unknown to the Japanese-both to the general public and the fishermen.
著者
相馬 恒雄 船木 實 酒井 英男 椚座 圭太郎
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.飛騨ナップと、飛騨帯(飛騨/宇奈月変成帯)の上昇と中生層のテクトニクスを関係させて考察した。飛騨帯は250Maの衝突変成(6Kb:地下20Km)のあと、180Maには2Kb、170Maには地表付近まで上昇した。上昇にともない飛騨外縁帯を被覆する来馬層群が削剥され、付加体堆積物である美濃帯が形成した。上昇の終了と同時に手取層群が飛騨帯と飛騨外縁帯を被覆しており、飛騨ナップの形成により飛騨帯と飛騨外縁帯が接合したと考えた。2.変成岩の熱履歴と古地磁気方位の変化からナップ運動を知るために、神岡地域の高温変成岩、母岩のミグマタイト、さらにそれらを取り込む神岡鉱床のヘデン岩についてEPMA分析とテリエ法により検討した。変成岩およびミグマタイトの形成は、250Maの飛騨変成作用以前であり、その後3回以上の変成作用をこうむっている。各岩石の熱消磁のパターンは異なるが、岩石学的な熱履歴との対応づけは今後の課題である。3.熱水変質岩の磁力の安定性と保持機構を調べるため、神岡鉱床のヘデン岩40個について残留磁化測定(交流消磁法で500Oeまで)とVSM(振動型磁力計)による磁化特性の測定(10KGaussの磁場で700℃まで)を行った。残留磁化は安定なものと不安定なものがあり、安定なものも磁化方向はバラバラであった。磁性鉱物を検討した結果、磁化を担っている鉱物は全てヘマタイトであることが判明した。磁化の不安定性と集中度が良くなかったことについては今後の課題である。4.飛騨外縁帯の結晶片岩の年代測定を岡山理科大学にて行った。青海地域の8個の試料の年代は264-338Maであり、青海地域が西南日本の三郡変成帯の延長であることを示す。飛騨帯を特徴づける250Ma変成作用を被っていないので、180Ma頃と推測される飛騨ナップ形成以前には、飛騨帯宇奈月変成帯と飛騨外縁帯は接していなかった。
著者
森脇 喜一 船木 實 平川 一臣 時枝 克安 阿部 博 東 正剛 宮脇 博巳
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.293-319, 1989-07

第30次南極地域観測隊(JARE-30)夏隊のセールロンダーネ山地地学・生物学調査は, 1988年12月29日から1989年2月1日にかけて山地西部で, 2月2日から9日にかけてあすか観測拠点をベースに付近の小山塊で実施された。2月になってからの調査活動は, ブリザード等の強風と地吹雪で効率的でなかった。JARE-26-29の地学調査に生物班が初めて加わったが, 調査計画の立案や行動形態に特に従来と変わったところはない。ここでは, 設営面を含む行動の概要と調査の概略, 調査期間の山地近辺の気象と雪氷状況を報告する。調査の成果については別途, 各分野で詳しく報告される。
著者
森脇 喜一 船木 實 平川 一臣 時枝 克安 阿部 博 東 正剛 宮脇 博巳 Kiichi Moriwaki Minoru Funaki Kazuomi Hirakawa Katsuyasu Tokieda Hiroshi Abe Seigo Higashi Hiromi Miyawaki
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.293-319, 1989-07

第30次南極地域観測隊(JARE-30)夏隊のセールロンダーネ山地地学・生物学調査は, 1988年12月29日から1989年2月1日にかけて山地西部で, 2月2日から9日にかけてあすか観測拠点をベースに付近の小山塊で実施された。2月になってからの調査活動は, ブリザード等の強風と地吹雪で効率的でなかった。JARE-26-29の地学調査に生物班が初めて加わったが, 調査計画の立案や行動形態に特に従来と変わったところはない。ここでは, 設営面を含む行動の概要と調査の概略, 調査期間の山地近辺の気象と雪氷状況を報告する。調査の成果については別途, 各分野で詳しく報告される。The summer party of the 30th Japanese Antarctic Research Expedition (JARE-30) carried out the geomorphological, paleomagnetic, geodetic, zoological and botanical field work in the western part of the Sφr Rondane Mountains for 35 days from December 29,1988 to February 1,1989,and around Asuka Station for 8 days from February 2 to 9,1989. The field work in February was largely hampered by bad weather including blizzard. In addition to earth scientists who have been in charge of the field operation of the Sφr Rondane Mountains since JARE-26 (1985), biologists joined the field party for the first time this season under the similar planning and operating scheme formerly adopted. This is the report describing the results of field operations including logistics, a summary of the field work, and some information on weather and surface conditions of snow and ice around the Mountains during this period.
著者
川田 邦夫 小林 武彦 船木 實 酒井 英男 広岡 公夫
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

南極氷床などに見られる火山灰を含む汚れ層は、しっかりした自然残留磁化をもっていることが知られており、その磁化の獲得機構を明らかにしようとするのが、この研究である。このため一方で、雪粒子に磁性をもつ岩石粉末を混ぜ、低温室に保持しながら地球磁場による磁化獲得の過程を時間毎に磁化測定と顕微鏡観察を行って調ベ、他方、北アルプス立山にある比較的古い氷体を残す雪渓の雪氷試料について自然磁化獲得の実際を調ベた。実験室の研究では自然雪や人工的にふるい分けした雪などに各種磁性物質の粉末を混入したものを初期試料とし、約-20℃、-10℃、-2℃等の条件下で保持したものを調ベたが、磁性粒子を含む雪氷の磁場方向への磁化獲得の機構は雪氷の変態に伴って磁性粒子がある時期に向きの自由度を持ち、その過程で磁場方向に向いた状態で定着するものという結果を得た。乾雪の場合、雪粒子の結合が丈夫になっていく過程では焼結によって変態が進行するが、最初無方位に弱く付着していた磁性粒子は水分子の表面拡散や昇華による結合部への移動に伴い、雪粒から離れて向きを変える機会を得、外部磁場による力を受けた状態で再付着したり、結合部のくびれた部分などに集まり気味に固定される。このことは少し厚めに製作したアニリン固定法による雪氷試料の薄片観察により確認できた。湿雪の場合、ざらめゆきへの変態となるが、雪粒子表面にある水膜によって磁性粒子は容易に自由度を得る。そして凍結・融解のくり返される中で雪粒同士の結合部のくびれや凹部に強く集合した状態で磁場方向に配向気味に固定されることがわかった。野外の雪渓で採取された試料は中緯度にある氷河や雪渓で見られる湿雪の変態によって氷化に至ったものと考えられる。現段階で詳細な結論までには至っていないが、汚れ層の部位に磁化の集中化が現われていて、氷体の流動に関わる知見を得る可能性をもつ。
著者
船木 實 東野 伸一郎 坂中 伸也 岩田 尚能 中村 教博
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

小型無人飛行機により、南極・ブランスフィールド海盆にある Deception 島で空中磁気観測等を行い、同島の北半分と周辺海域の磁気異常を明らかにした。 本研究により、南極でも無人飛行機による科学観測が可能で、安全で大きな費用対効果を持つ ことが示された。King George 島では岩石磁気、年代、それに磁気異常の研究が行われ、ブラ ンスフィールド海盆が典型的な背弧海盆の特徴を持つことを明らかにされた。
著者
脇野 定則 船木 實 野木 義史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-49, 2001-03

第35次南極地域観測において, 東南極, リュツォ・ホルム湾, オングル海峡で地磁気全磁力測定を行った。オングル海峡では, 南北および北北西-南南東走行の地磁気異常が観測された。オングル海峡の南西部以外では, 負の地磁気異常が卓越する。また, 地磁気異常は, 約-100nTから80nTの間で変化している。