著者
真野 弘明
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

オジギソウは、さわると1秒程度の時間で葉を閉じる「おじぎ運動」を行う。このすばやい植物運動がどのようなメカニズムによって行われているのかはよく分かっていない。これを解明するために、本研究では運動部位の全ての細胞の3次元形状を網羅的に解析し、それらが運動によりどのように変化するかを明らかにした。また、おじぎ運動に関わりそうな15の候補遺伝子について、機能を失わせたオジギソウを作製することでその役割を調べた。その結果、このうちの2つの遺伝子が実際におじぎ運動に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
著者
真野 弘明
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の研究実施計画に基づき、ハナカマキリの体色を形成する色素分子の生化学的解析を行った。昨年度の研究により、ハナカマキリ体色の赤色色素としてキサントマチンを同定したが、色素の抽出条件およびHPLCによる分離条件を検討した結果、ハナカマキリの色素抽出物には通常型のキサントマチンのほかに、分子上のカルボキシル基を1つ欠失した脱炭酸型のキサントマチンが含まれることを見出した。赤と黒を基調とした体色を持ち、カメムシ幼虫に擬態しているとされるハナカマキリの1齢幼虫では、相対的に多量の脱炭酸型が含まれていた。一方、花に擬態する2齢幼虫以降のステージでは、脱炭酸型キサントマチンの含有比率が次第に低下すると判明した。1齢幼虫の赤色部位はやや黄色味がかった赤色であるのに対し、後期幼虫の赤色部位は紫がかった赤色をしており、この色調の違いはキサントマチンの通常型と脱炭酸型の含有比率の違いによって生み出されている可能性が考えられた。また、ハナカマキリ後期幼虫の脚部にある花弁様構造の反射スペクトルを測定した結果、534nm付近に吸収ピークをもつスペクトル形状を示した。これは中性バッファー中における酸化型および還元型キサントマチンの吸収スペクトル(吸収極大波長はそれぞれ440nmと495nm)とは大きく異なる一方、還元型キサントマチンの凝集体の懸濁液の吸収スペクトルとは良く似た形状を示した。以上の結果から、ハナカマキリの花擬態に特有の赤紫色は、還元型キサントマチンが組織内に凝集体として存在することによって形成されていると推測された。
著者
長谷部 光泰 瀬上 紹嗣 真野 弘明 豊田 正嗣
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2021-05-18

植物には神経が無いが、動物の神経と同じように活動電位と呼ばれる電気信号が知られている。しかし、従来の研究材料では研究が難しく、どのように電気信号が発生し、伝わっていくかの仕組みはわかっていなかった。本研究では、活動電位を研究しやすい、食虫植物のモウセンゴケ、ハエトリソウ、ムジナモ、お辞儀運動をするオジギソウを用いて、活動電位発生伝搬の仕組みの基盤を明らかにするとともに、その進化を推定することを目的とする。
著者
真野 弘明
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011-04-28

ランカマキリは花に類似した姿をした擬態昆虫である。これまでに我々は、ランカマキリの体色を生成する色素分子としてキサントマチンを同定した。しかし、キサントマチン自体は昆虫において広く存在する色素であり、これがどのようにして特有のピンク色を形成しているのかは不明であった。本研究の生化学的解析により、キサントマチンには実は3種類の類縁分子が存在し、その組成の違いによって異なる体色が生成されると示唆された。また、電子顕微鏡を用いた観察により、ランカマキリ体内においてはキサントマチン分子が特殊な細胞内構造を取っていることが明らかになった。これらのメカニズムによって特有の体色が生成されると考えられた。