著者
小林 良彰 平野 浩 谷口 将紀 山田 真裕 名取 良太 飯田 健 尾野 嘉邦 マッケルウェイン ケネス 松林 哲也 築山 宏樹
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2012

本研究では、18回(全国調査14回、自治体調査3回、国際比較調査1 回)にわたって実施し、下記の新たな知見を得た。(1)投票行動研究から民主主義研究への進化(2)日米韓における代議制民主主義の分析を通した比較政治学 (3)日本の地方自治体レベルにおける代議制民主主義の分析 (4)政治意識の形成と変容の解明(5)マルチメソッド比較による新しい調査方法の確立 (6)政治関連データベースの構築。これらを通して、海外の研究機関から申し入れを受け、代議制民主主義に関する国際共同研究拠点を構築した。
著者
山中 伸弥 青井 貴之 中川 誠人 高橋 和利 沖田 圭介 吉田 善紀 渡辺 亮 山本 拓也 KNUT Woltjen 小柳 三千代
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007

4つの転写因子を体細胞に導入することで多分化能を持ったiPS細胞が樹立できる。c-Mycを含めた4因子を用いた場合にキメラマウスで腫瘍化が高頻度で認められ、レトロウイルス由来のc-Mycが原因の一つであることが分かった。樹立条件などを検討しMycを用いずにiPS細胞を作ることに成功したが、性質の点で不十分であった。c-Mycの代替因子の探索を行いL-Mycを同定した。L-Myc iPS細胞は腫瘍化リスクもほとんど認められず、性質の点でも十分であった。レトロウイルスを用いずにプラスミドを用いることでもiPS細胞の樹立に成功した。このことにより体細胞への初期化因子の挿入が起こらずより安全な作製方法の確立に成功した。神経細胞への分化誘導とそれらの移植実験により安全性を検討する方法の確立も行った。また、肝細胞、血液細胞、心筋細胞への分化誘導系も確立した。iPS細胞の性状解析をディープシークエンサーなどを用いて詳細に解析する技術の導入も完了し、網羅的な遺伝子発現、メチル化解析、スプライシング解析なども行った。
著者
梶田 隆章 内山 隆 大橋 正健 川村 静児 黒田 和明 三代木 伸二 安東 正樹 宗宮 健太郎 森脇 喜紀 麻生 洋一 都丸 隆行 フラミニオ ラファエレ 鈴木 敏一
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2014

本研究では重力波の観測と重力波天文学の創成を目指し、別予算で整備がすすめられた大型低温重力波望遠鏡KAGRAの研究基盤をベースに、熱雑音を最小化する低温懸架システムの開発、極低温鏡急速冷却方法の開発、グリーンレーザーを用いた干渉計の迅速かつ安定な動作状態獲得、新たな信号読み出し法を可能にし、干渉光に含まれる余計なノイズを削減する出力モードクリーナーの開発などを行った。また、レーザー強度雑音の低減、さらに最終的には自動で観測モードまで進む高度なデジタル制御システムの開発を行った。これらの開発された技術を全てKAGRAに組込み、重力波観測運転を2020年2月に開始した。
著者
早野 龍五
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

反陽子ヘリウム原子(ヘリウム原子核に反陽子と電子が束縛された準安定原子)の精密レーザー分光により、反陽子と電子の質量比を10^-9の高精度で決定した。この結果は科学技術データ委員会CODATAに提供され、基礎物理定数CODATA2010(理科年表や高校理科教科書などにも掲載されている基本的な物理量)の決定に貢献した。これにより、当初目標が達成された。
著者
加藤 茂明
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2010-04-21

転写制御は最近の研究の進展により、染色体環境が極めて重要であることが明らかにされつつある。染色体環境は、染色体構造調節やヒストンタンパク修飾パターン(ヒストンコード)によって調節されており、その活性化状態に応じ転写制御の効率が規定されることがわかりつつある。しかしながら、実際の分子機構やそれら制御因子の実態は必ずしも明らかでない。本研究では、転写制御を支える染色体環境の調節機構をエピゲノム制御やそれら調節因子の同定や機能解析により、転写とエピゲノムの共制御の分子機構の解明を目指している。本年度においては、新たなヒストンタンパク修飾について網羅的な検索を行なうとともに、新たなヒストンコードとしての単糖の機能について解析した。ヒストンH2Bのセリン112番残基に付加される単糖(Nアセチルグルコサミン)は、新たなヒストンコードとして機能し、H2Bリジン120番目のユビキチン化を亢進することを見いだした。このユビキチン化が染色体の活性度を規定する上で極めて重要なヒストンコードであるため、この単糖付加は更に上流に位置する極めて基礎的なヒストンコードであることがわかった(Fujiki et al.,Nature 2011)。また、ショウジョウバエを用いた転写とエピゲノム共制御を担う調節因子を分子遺伝学的アプローチにより検索したところ、ヒストン遺伝子の細胞周期依存的な転写制御と染色体不活性化を規定する重要な因子を見いだした。この因子は、ヒストンH3リジン9番をメチル化することで、周辺の染色体の不活性化を促す因子であることが証明出来た。
著者
山川 烈 鈴木 倫保 山川 俊貴 粟生 修司 石塚 智 堀尾 恵一 藤井 正美 野村 貞宏 大和田 祐二 グレゴリエビッチ ジミン・レフ 常盤 達司 井上 貴雄 丸田 雄一 藤岡 裕士
出版者
九州工業大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

抗てんかん薬が全く効かず,いつ発現するかわからない発作の恐怖におびえているてんかん患者が国内外に全人口の約0. 2%いる.これらの患者を救う道は,外科手術である.現在の外科手術では,「てんかん原性域」と呼ばれる発作の震源地の位置を脳波から推定し,それを切除しているが,後遺障害のリスクが大きい.本研究では,その「てんかん原性域」を精度よく推定し,頭蓋骨にあけた小さな穴から凍結プローブやレーザー焼灼プローブを刺入し,「てんかん原性域」を限定して破壊する後遺障害リスクの少ない外科手術法を考案した.
著者
松沢 哲郎 山本 真也 林 美里 平田 聡 足立 幾磨 森村 成樹
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

人間を特徴づける認知機能の特性を知るうえで、それらが「どのように進化してきたか」という理解が必要不可欠である。本研究は、言語と利他性こそが人間の子育てや教育や社会といった本性の理解に不可欠だという視点から、①人間にとって最も近縁なチンパンジー属2種(チンパンジーとボノボ)とその外群としてのオランウータン、さらにその外群としてのウマやイヌを研究対象に、②野外研究と実験研究を組み合わせ、③知識や技術や価値とその社会的伝播や生涯発達に焦点をあてることで、人間の本性の進化的起源を明らかにすることを目的とした。チンパンジーの野外研究はギニアのボッソウの1群7個体、実験研究は霊長類研究所の1群13個体と京大熊本サンクチュアリの58個体が主な対象だ。ボノボの野外研究はコンゴの1群27個体、実験研究は熊本サンクチュアリに導入した1群6個体が対象だ。これに、母子だけで暮らす社会を営むオランウータンを外群とし、ボルネオのダナムバレイの野生群、マレー半島のオランウータン島で研究をおこなった。ポルトガルの野生ウマの研究が軌道に乗った。新しい研究手法の開発として、ドローンを利用した空撮で野生チンパンジーや野生ウマの研究を始めた。実験研究のトピックスは、研究代表者らが世界に先駆けて発見したチンパンジー特有の超短期記憶の研究、アイトラッカーによる視線検出、色の命名課題にみるシンボルの形成、チンパンジーには困難といわれる循環的関係の理解、感覚間一致、共感性の基礎にある同期行動などである。個体レベルでの認知機能の研究を基盤に、比較認知科学大型ケージを活用した集団場面での行動の解析を手がけた。野外研究では、チンパンジー、ボノボ、オランウータン、キンシコウ、野生ウマを対象として、毛づくろいや近接関係など社会交渉の解析を通じて社会的知性の研究を推進した。
著者
佐藤 嘉倫 近藤 博之 斎藤 友里子 三隅 一百 石田 浩 尾嶋 史章 中尾 啓子
出版者
東北大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2004

本プロジェクトは、社会階層の流動化と固定化という、一見相反する現象を統一的に理解・説明するための階層論を展開することを目的とした。この目的のために、理論的な検討をするとともに、データ分析のための社会調査を実施した。2005年に日本、韓国、台湾でほぼ同一の調査票を用いた実査を行った。また労働市場の流動性の影響をもっとも受けている若年層を対象とした郵送調査・ウェブ調査を2007年に行った。これらの調査データを用いた分析結果は、全15巻の研究成果報告書にまとめられた。また報告書以外にも、プロジェクトメンバーによる学会報告や論文・単行本刊行は多数に及ぶ。本研究プロジェクトは総合的研究なので、社会階層と社会移動をめぐってさまざまな視点からの分析を展開した。このため、研究成果すべてを述べることはできないが、たとえば(1)佐藤俊樹『不平等社会日本』で示されたホワイトカラー上層雇用の閉鎖性は2005年には存在しないこと、(2)非正規雇用者になる傾向は低学歴者と女性に高く見られること、(3)所得格差については正規雇用と非正規雇用の間の格差が大きいが、その格差が拡大しているかどうかは慎重な検討が必要であること、などの知見が得られた。また本プロジェクトが、本格的な東アジアにおける社会階層と社会移動の比較研究として初めてのプロジェクトであることも特筆に値する。その成果の一端は、研究成果報告書第13巻『東アジアの階層ダイナミクス』に収められている。
著者
古澤 明 青木 隆朗 高橋 浩之
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2018-04-23

2次元大規模連続量クラスター状態生成のための要素技術開発として、広帯域スクイーズド光4本の同時生成法確立、スクイーズド光の相対位相ロック法の開発、スクイーズド光の相対位相ロックのデジタル制御系構築を行った。広帯域スクイーズド光4本の同時生成法確立としては、100MHzスクイーズ帯域の光パラメトリック発振器を4台作製した。これらをひとつのポンプ光で同時に駆動し、それぞれ6dB以上のスクイーズド光の観測に成功した。スクイーズド光の相対位相ロック法の開発として、新規ロック法を開発した。従来のスクイーズド光相対位相ロック法は、光パラメトリック発振器それぞれに導入しているプローブ光に変調を掛け、そのビート信号からロックのためのエラー信号を得るため、高い信号/雑音比を得るのが困難であった。そのため、ロックの安定性がそれほど高くなかった。しかし、スクイーズド光4本を複雑な干渉計において、その相対位相を安定してロックするためには、従来の方法では困難であることが予想された。そのため、新規スクイーズド光相対位相ロック法として、プローブ光に変調を掛けるのではなく、周波数をシフトすることによりヘテロダイン信号として読み出す方法を開発した。これにより劇的に信号/雑音比が改善し、安定してスクイーズド光の相対位相をロックできるようになった。スクイーズド光の相対位相ロックのデジタル制御系構築としては、新たにフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を導入し構築を行った。アダプティブヘテロダイン測定のための補助状態生成技術開発として、超伝導光子数識別器作製のためのスパッタリング装置調達とその立ち上げ、共振器QED系の立ち上げを行った。
著者
高山 憲之 鈴村 興太郎 青木 玲子 玄田 有史 小椋 正立 小塩 隆士 土居 丈朗 原 千秋 臼井 恵美子 清水谷 諭
出版者
公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2010-04-21

近年、年金をはじめとする世代間問題が緊急性の高い重大な社会問題の1つとなっている。本研究では、くらしと仕事に関するパネル調査等、各種の実態調査を実施して世代間問題の内実を的確に把握した一方、経済理論を駆使して世代間問題の本質をえぐりだした。そして世代間対立を世代間協調に転換するための具体的アイデアを提示した。
著者
梅村 雅之 中本 泰史 朴 泰祐 高橋 大介 須佐 元 森 正夫 佐藤 三久
出版者
筑波大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2004

宇宙第一世代天体の誕生は、宇宙全体の進化、銀河の誕生、重元素の起源を解き明かす上で根源的な問題である。本計画の目的は、宇宙第一世代天体形成過程について、超高精度のシミュレーションを行い、その起源を解き明かすことにある。そのために、天体形成シミュレーションの専門家と計算機工学の専門家が、緊密な協力体制の下に重力計算専用ボードBlade-GRAPEを開発し、これをPCクラスタに融合させた宇宙シミュレータFIRSTを開発した。FIRSTは、256の計算ノード、496CPUからなり、2つのファイルサーバをもつ。また、分散したローカルディスクから一つの共有ファイルシステムを構築するGfarmシステムが導入されており、総計22TBのファイルシステムをもつ。FIRSTの総演算性能は、36.1TFLOPSであり、内ホスト部分3.1TFLOPS、Blade-GRAPE部分33TFLOPSである。また、主記憶容量は総計1.6TBである。このような融合型並列計算機の開発は、世界でも例を見ないものである。FIRSTを用いてこれまでにない大規模なシミュレーションを実行した。その結果、次のような成果を得た。(1)宇宙第一世代天体形成のダークマターカスプに対する依存性の発見、(2)初代星に引き続いて起こる星形成への輻射性フィードバックの輻射流体計算とフィードバック条件の導出、(3)紫外線輻射場中の原初星団形成シミュレーションによる球状星団形成の新たな理論モデルの提唱、(4)3次元輻射輸送計算による原始銀河からの電離光子の脱出確率の導出、(5)銀河団合体時の非平衡電離過程効果の発見、(6)アンドロメダ銀河と衛星銀河の衝突による“アンドロメダの涙"のモデル提唱。中でも(1)は、過去の他グループの計算に比べて2桁以上高い質量分解能を実現することによってもたらされたものである。この計算によって、従来の第一世代天体に対する描像に見直しが必要であることが明らかとなった。
著者
伊丹 健一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2019-04-23

本研究では、ナノメートルサイズの炭素物質(ナノカーボン)を構造的に純粋な「分子」として設計・合成するとともに、それらを基盤とした構造体を構築することで、構造が精密に定まった未踏のナノカーボンを創製する。従来のナノカーボン科学が抱える「混合物問題」に根本的な解決策を提示し、「分子ナノカーボン科学」という新分野の確立と日本発のカーボン・イノベーションをめざす。
著者
濡木 理 伊藤 耕一 MATURANA ANDRES 加藤 英明 石谷 隆一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

光感受性チャネル:光駆動性カチオンチャネルであるチャネルロドプシンは励起光(480nm青色光)の照射によってイオンを流入させることができるため、「光遺伝学」と呼ばれる手法のツールとして神経生物学の分野で広く用いられている。平成28年度にはこのチャネルロドプシンのイオン流入の分子機構を明らかにするため、SACLA自由電子レーザーを用いた時分割構造解析を行い、励起光照射した後1, 50, 250, 1000, 4000マイクロ秒後における構造変化を明らかにした。その結果、発色団レチナールにおけるall-trans型から13-cis型への異性化に伴ってチャネルロドプシン内部に構造変化が生じ、イオン透過経路におけるinner gateと呼ばれる狭窄部位が広げられるように変化することがわかった。音感膜タンパク質:Transmembrane channel-like protein1/2 (TMC1/2) は,聴覚や平衡感覚の受容に関わる機械刺激受容チャネルの有力候補である.鳥類や爬虫類に由来するTMCホモログの発現・精製に成功し,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.現在ネガティブ染色による電子顕微鏡観察を試みている.ニワトリ由来Prestinに関しては,さらにコンストラクトの改変および発現・精製系の検討を行った結果,細胞質ドメイン欠損変異体について大量かつ均一に精製することに成功した.これと並行して,ヒト由来Prestinのクローニングも新たに行い,さまざまな細胞を用いての発現条件の検討を行った結果、HEK293S細胞にて良好な発現が確認された.この発現系を用いて界面活性剤や緩衝液などの可溶化条件の検討および120種以上のコンストラクトの比較検討を行った結果,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.
著者
平野 俊夫 村上 正晃 山下 晋 石原 克彦
出版者
大阪大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2003

サイトカインは、免疫応答、急性期反応、造血、炎症性反応に重要な役割を果たしている生理活性分子である。我々が作成した、シグナル特異的な変異を導入したgp130を発現しているノックインマウスは関節リウマチ様自己免疫疾患を自然に発症する。このマウスに見られるT細胞や樹状細胞の免疫学的機能異常のメカニズムを明らかにすることにより、逆にサイトカインシグナルによる正常の免疫応答の制御機構の一端を明らかにする。さらに、踏み込んでサイトカインのシグナル異常によって生じる自己免疫疾患に普遍的な機構を明らかにすることを目的とした。以下の2つの概念を証明することができた。1. サイトカイン刺激による非免疫系組織の活性化が別のサイトカインを介してCD4+T細胞の活性化を引き起こして自己免疫につながる。2. 非免疫系細胞にはIL-17とIL-6の刺激を引き金とするIL-6の正のフィードバックループが正常状態でも存在して生体のIL-6量を制御している。F759マウスではIL-6刺激後正常状態ならば働くはずのSOCS3による負のフィードバックループが働かずにIL-6の正のフィードバックループが暴走し、過剰なIL-6発現が自己免疫性の関節炎を引き起こす。さらに、本研究の過程で発見された亜鉛シグナルの存在を証明して免疫反応との関連を研究して成果を出すことができた。
著者
長谷部 光泰 瀬上 紹嗣 真野 弘明 豊田 正嗣
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2021-05-18

植物には神経が無いが、動物の神経と同じように活動電位と呼ばれる電気信号が知られている。しかし、従来の研究材料では研究が難しく、どのように電気信号が発生し、伝わっていくかの仕組みはわかっていなかった。本研究では、活動電位を研究しやすい、食虫植物のモウセンゴケ、ハエトリソウ、ムジナモ、お辞儀運動をするオジギソウを用いて、活動電位発生伝搬の仕組みの基盤を明らかにするとともに、その進化を推定することを目的とする。
著者
北川 宏 草田 康平 古山 通久 吉田 幸大
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では、多元素ハイエントロピー効果により、多くの元素種を固溶化させることで、新しいナノ固溶合金を開発すると共に、革新的な触媒機能の創成を行う。超臨界ソルボサーマル連続フロー合成法により、多種金属元素を原子レベルで融合させ、新元素、新物質、新材料の探索を徹底的に行う。1)貴金属8元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、2)貴金属-卑金属12元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製、3)貴金属-卑金属-軽元素16元素からなるハイエントロピー固溶ナノ合金の作製に挑戦する。さらに、プロセス・インフォマティクスの適用により、一気通貫型の革新的プロセス開発を行う。
著者
菅 裕明 仙石 徹
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2020-07-30

本特別推進研究計画では、これまで申請者が研究室を主宰してきた約20年にわたる「特殊ペプチド創薬」研究に区切りを付けるべく、やり残された挑戦的な研究に絞り目標を定め、それらを集大成させる。(1)細胞膜透過を有する特殊ペプチドの構造膜透過性相関検討による探索基盤の確立(2)環β-、環γ-、不飽和環アミノ酸含有特殊ペプチドライブラリーの翻訳合成と生理活性種探索(3)翻訳後酵素修飾された擬天然物ライブラリーの創製と生理活性種探索(4)特殊ペプチドおよび擬天然物の細胞膜透過性と小腸吸収性の研究上記の研究目標に沿って基礎および応用研究を進め、これまで解決できなかった命題に挑戦する。
著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。
著者
本庶 佑
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1982

リンパ球分化過程において、抗原認識物質である抗体とT細胞抗原受容体(TCR)とは遺伝子の再構成によって著しく多様性を増巾する。我々は、抗体遺伝子の多様性発現機構を解析するために、【◯!1】マウスおよびヒトの抗体遺伝子のコスミッドクローンを単離し、その解析を行なった。この結果、マウス、ヒトおよび類人猿の【C_H】遺伝子群のほぼ全貌を明らかにした。さらに、ヒト【C_H】遺伝子の主要なものを単離し、その一部については全構造を明らかにした。次に【◯!2】抗体遺伝子の再構成にかかわる酵素系の解析を行ない、マウスおよびニワトリ組織よりJ領域を特異的に切断するendonuclease-Jを単離し、その性質を調べた。【◯!3】クラススイッチ組換えに関して、遺伝子の欠失を伴なう前の中間段階として、多数の【C_H】遺伝子を含んだ長い転写産物のできるモデルを提唱し、これを支持する結果を多数のヒト白血病細胞のDNA解析から得た、【◯!4】TCR遺伝子の再構成に関して、抗体遺伝子と基本的に同じでありながら、体細胞突然変異が非常にまれであるという興味ある知見を得た。また、ヒトTCRのJ遺伝子が逆位による再構成を行なうことを見出した。TおよびB細胞間の情報伝達に関与する免疫系制御物質として、リンフォカインとその受容体が重要な役割をする。【◯!5】我々は、T細胞増殖因子受容体(IL-2)のcDNAとその遺伝子の構造を明らかにした。IL-2RcDNAは、Tリンパ球に導入した場合にのみ活性ある受容体を発現した。このことから、T細胞にはIL-2Rの機能に不可欠な別の因子(corverterと命名)が存在することを推測した。【◯!6】さらに初めて、B細胞増殖因子(IL-4)のcDNAの単離とその構造決定を行なった。IL-4はT細胞や肥満細胞にも増殖因子活性を持つことが明らかとなった。