著者
真鍋 淑郎
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.453-457, 1992-12-05 (Released:2009-11-12)
参考文献数
16

This paper describes the response of a coupled ocean-atmosphere-land surface model developed at GFDL to gradual changes of atmospheric carbon dioxide. It summarizes the results in three recently published papers (Stouffer et al., 1989 Manabe et al., 1991, 1992). They represent the current state of the art in predicting further climate change induced by greenhouse gases in the atmosphere.The warming of the coupled system is reduced by the effective thermal inertia of the earth's surface which is essentially controlled by the vertical mixing of heat in the oceans. This study investigates how such vertical mixing of heat is achieved, resulting in the delay of the greenhouse warming in the joint troposphere-continental surface-ocean system.
著者
真鍋 淑郎
出版者
The Remote Sensing Society of Japan
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.366-372, 2001-09-28 (Released:2009-05-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

大気・海洋結合モデルの数値実験によると,21世紀末ころには地表の全球平均気温は現在より2~3℃程度上がる。昇温は,陸面で更に大きくなると予測される。また,半乾燥地帯の土壌水分が減少し,砂漠が拡張しそうである。二酸化炭素などを規制せずに放出し続ければ,数百年先に大気の二酸化炭素濃度が,今の4倍位になり,非常に大きな気候の変化がおこる可能性が大きい。これからは,温暖化に伴う全球的変化の検出,放射強制力を持っ温室効果ガス,エアロゾル等の分布決定,モデルに組み込まれた色々な素過程の検証等にRemote Sensingが増々重要になるであろう。
著者
真鍋 淑郎
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.123-134, 1958 (Released:2007-10-19)
参考文献数
24
被引用文献数
39 38

先ず毎日のデータを使って,冬の日本海から大気に供給される熱量及び水蒸気量を大気の熱収支から求めた6前の論文(12)で日本海に寒気の吹き出しが卓越するときの変質を議論したが,ここでは同じ計算を冬全体について行った結果を述べる。従って,エントロピー及び水蒸気の流入量流出量の計算,放射冷却及び凝結の潜熱の解放量等の見積り法の詳細は前の論文(12)を参照されたい。前にも述べた様に,周辺を密な観測網で囲まれた日本海はこの種の研究にはもってこいの場所であろう。得られた結果を簡単に述べる。1955年1月及び2月について顕熱供給量を得たが平均約555cal/cm2/dayで相当大きな値である。これは放射によつて逃げる熱量或いは凝結の潜熱発生量の数倍になる。尤も前に求めた典型的な吹き出しの時(1554年12月下旬)の顕熱供給量1030ca1/cm2/dayに比べればずっと小さい。この事は又気象状態に応じて供給量がかなり大きく変動する事を暗示している。一方同じ冬について平均蒸発量を計算した。即ち約5.6mm/dayでこれを熱量に換算すると約340cal/cm2/dayとなる。ここで興味ある事は,顕熱供給量が潜熱供給量を遙かに上廻つているという事である。この傾向が水温と気温との差の更に大きい典型的吹き出しの時一層顕ちょになるという事は前の論文(12)を参照すればわかる。ところがこの期間の日本海での平均ボーエン比を計算して見たが,吹き出しのときと同様ほぼ1に近い。この違いは,冬の日本海の様な不安定なところでは,恐らく対流が非常に盛んで熱と水蒸気とが必ずしも古典乱流論で仮定した,ように同じメカニズムで供給されていない事を暗示している様に思われる。次に上の計算結果を確かめるため,冬の日本海水の熱収支の計算を行った。既にW.Jacobs氏(10)及び宮崎氏(13)は,海の一年間の熱収支をもとにしてエネルギー交換量の経験式を出したが,ここでは冬期について収支計算を行った。従って冬期の水温変化のデーターを用いたが,この点が彼等の場合と違う点である。その結果大気の熱収支から得られた全エネルギー供給量に近い値を得る事ができた(約880cal/cm2/day)。ここで気付いたのは,エネルギー供給係数が安定度によつてかなり違うらしく,従ってJacobs氏或は宮崎氏が年平均のエネルギー供給係数を使って求めた値は,冬の日本海の様な不安定な場所では,かなり実際より小さいらしいという事である。
著者
真鍋 淑郎
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.76-88, 1955 (Released:2009-02-05)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

Using 2-layer model which is the special case of the multiple layer model defined by Charney and Phillips, investigation is made, from the view point of numerical weather prediction, on the role of the tilt of trough relative to the vertical for the development of the pressure pattern. At the same time, the mechanism of the transition between the tilted and the non-tilted trough is discussed. Finally, corresponding to the above development, the energetics of westerly wave, i. e., the energy exchange between the potential and the kinetic energy is investigated. Here, the simple expression for the change of these energies is obtained.
著者
真鍋 淑郎
出版者
一般社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 = Journal of the Remote Sensing Society of Japan (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.366-372, 2001-09-28
参考文献数
8
被引用文献数
1

大気・海洋結合モデルの数値実験によると,21世紀末ころには地表の全球平均気温は現在より2~3℃程度上がる。昇温は,陸面で更に大きくなると予測される。また,半乾燥地帯の土壌水分が減少し,砂漠が拡張しそうである。二酸化炭素などを規制せずに放出し続ければ,数百年先に大気の二酸化炭素濃度が,今の4倍位になり,非常に大きな気候の変化がおこる可能性が大きい。これからは,温暖化に伴う全球的変化の検出,放射強制力を持っ温室効果ガス,エアロゾル等の分布決定,モデルに組み込まれた色々な素過程の検証等にRemote Sensingが増々重要になるであろう。
著者
真鍋 淑郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.933-937, 1994-03-31

大気中の二酸化炭素増大に伴う気候変化の研究は大気・海洋結合モデルを使ってすでにいくつか行われており, おもに数10年先の予測がなされてきた.(Bryan et al., 1982;Schlesinger et al., 1985;Bryan et al., 1985;Bryan et al., 1988;Washington et al., 1989;Stouffer et al., 1989;Manabe et al., 1990;Manabe et al., 1991;Hansen et al., 1988;Cubasch et al., 1992).しかし, より遠い将来の予測はあまり注目されてこなかった.炭素ガスが増加すると, 地球の平均温度の永年的上昇を通じて海洋大気の結合システムの大規模現象が影響を受け, 気候が大きく変わるので, その効果は非常に重大である.たとえば, 海洋の熱塩循環が大きく変わる可能性がある.氷期の終わりころ, 温度上昇と氷床融解にともなって海洋循環が突然変わったらしいというBroeckerの議論(Broecker, 1987)も, その可能性を示唆する.ここでは, 海洋大気結合気候モデルを用いて, 炭酸ガス量の2倍ないし4倍増加による全球気候の数100年間の変動を計算した.結論的には, 500年後の全球平均気温上昇は, 炭酸ガス2倍増の場合は3.5度, 4倍増の場合は7度に達する.また, 海水の熱膨張による海面水準の上昇はそれぞれ1mと1.8mに及ぶことがわかった(氷床の融解が加わると, 海面上昇はこれよりさらに大きい).さらに, 炭酸ガス4倍増の時は, 海洋の温度構造や力学構造が著しく変わる.すなわち, 海洋の熱塩循環はぱったり止み, 温度躍層がぐっと下がる.というまったく新しい安定な状態に落ち着いてしまう.このような変化は海洋深層との物質の交換を阻害するので, 大気海洋結合系の炭素循環や生物地球化学過程に大きな影響を及ぼす可能性がある.