著者
神戸 将彦 中島 潤 村田 将人 澤田 悠輔 一色 雄太 市川 優美 矢嶋 尚生 福島 一憲 荒巻 裕斗 河野 慧 沼崎 あゆみ 森 瑞樹 大嶋 清宏
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.359-362, 2020-11-01 (Released:2020-12-16)
参考文献数
14

症例は30歳代,女性.自傷目的にキョウチクトウの葉12枚を摂取し,増悪する嘔気のため摂取19時間後に当院へ救急搬送された.来院時,傾眠,四肢脱力および振戦がみられ,心拍数50/分の洞性徐脈だったが,それ以外は安定しており,血清カリウム値も4.1 mEq/lと正常範囲だった.救急外来で活性炭と緩下剤を投与し,経過観察目的に同日集中治療室(ICU)入院とした.ICU入室後の全身状態は安定しており,第2病日に一般病棟へ退室した.その後の経過も良好で第5病日に退院した. キョウチクトウは公園や街路樹などに広く利用されているが,全木にオレアンドリン等の強心配糖体を含むため有毒である.国内でのキョウチクトウ中毒の報告は極めて稀だが,重症化し死亡に至る場合もあるので,早期からの中毒物質同定および積極的な治療介入が重要である.
著者
矢嶋 尚生 鮫島 雄祐 松島 純也 坪内 陽平 金指 秀明 櫻井 馨士 長島 義宣 秋枝 一基
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.121-125, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
16

甲状腺クリーゼの誘引として感染や虚血性心疾患などが知られている。甲状腺クリーゼの背景にある甲状腺中毒症の原因にはバセドウ病が多いが,無自覚・未診断のバセドウ病も存在する。近年,コロナワクチン接種後にバセドウ病を発症したという報告が増えている。今回我々は,新型コロナワクチン初回接種後に甲状腺クリーゼを発症した患者がその後バセドウ病と診断された症例を経験した。症例は既往のない67歳男性で,新型コロナワクチン接種後の翌朝に発症した倦怠感と呼吸困難により救急要請した。心電図検査,心臓カテーテル検査で虚血による急性心不全と診断され,治療後にICUへ入室した。来院時より頻脈が継続し,入院後に発熱も認めたため,甲状腺ホルモンなどを調べたところ,甲状腺クリーゼおよびバセドウ病と診断された。甲状腺クリーゼは,急病や外傷だけによらず,ワクチン接種後にも発症することがある。