著者
金本 良嗣 中村 良平 矢澤 則彦
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.251-266, 1989-10-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
20
被引用文献数
7

ヘドニック・アプローチは,環境条件の違いがどのように地価あるいは住宅価格の違いに反映されているかを観察し,それをもとに環境の価値の推定を行う。本稿の主目的は,実際にヘドニック・アプローチを用いて環境の価値を測定しようとする人々のための手引として役立つことである。したがって,この手法に関する最近の研究を紹介するとともに,この手法を用いる際の具体的な手順や結果の解釈の仕方などについても解説する。また,誤まった適用を避けるためには手法の理論的基礎の正確な理解が必須であるので,ヘドニック・アプローチの理論的基礎を解説し,実際に適用する場合にどのようなバイアスが生じやすいか,それらに対する対策はどうすべきなのかなどの問題も議論する。
著者
文 世一 矢澤 則彦 安藤 朝夫 佐々木 公明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1)交通計画、地理学、都市・地域経済学をはじめとする関連分野において、情報通信及び交通システムの整備が経済活動に及ぼす効果について論じた文献をレビューし、空間のレベル、企業のタイプ、コミュニケーションの形態ごとに、情報通信と交通システム整備の効果をいかにとらえるべきかについて論点整理を行なった。(2)オフィス企業が都市内の他企業と行うコミュニケーションの手段と回数、および都市内での立地選択をモデル化した。ここではコミュニケーションの質的レベルを明示的に考慮してコミュニケーションの手段選択を定式化している。情報通信費用の低下が都市内交通需要、及び企業の立地分布に及ぼす効果をシミュレーションによって分析した。その結果、通信費用の低下によって交通需要は増加する場合と減少する場合があること、企業の立地分布は分散化することなどが示された。(3)都市間コミュニケーションのための情報通信・交通システムの整備が、企業の本社-支社の機能配置に及ぼす影響を通じて広域的な空間構造の変化を分析した。ここでは企業間(他都市に立地する取引先と)、および企業内(同じ企業の本社と支社の間)の二通りのコミュニケーションを行うオフィス企業の行動をモデル化した。このモデルは、一企業の立地選択を定式化するだけではなく、多数の立地行動の間の相互依存関係と立地均衡を通じて都市規模の分布を求めることができる。このようなモデルにもとづいて、支社の立地と都市規模が交通システムや情報通信システムの変化によってどのような影響を受けるかを分析した。その結果、情報通信システムの整備は、支社の立地を促進するが、交通システムの整備は本社への集中化をもたらすことが示された。