著者
加藤 真紀 安藤 朝夫
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2013-07 (Released:2013-08-27)

近年、日本の研究力は低下しており、その原因の1つとして、質が高い(平均被引用数が多い)とされる国際共著論文数の増加率の低さが指摘されている。しかし、国際共著を行う場合の国の組み合わせに関係する要因や、国際共著論文の質の高さが何によってもたらされるのか、十分に解明されていない。そこで本分析はトムソンロイター社より提供されているWeb of Knowledgeから2種類のデータベースを作成し、これら課題の解明を計量的分析により試みた。この結果、NatureとScienceに発表された論文の分析からは、1) 2ヶ国共に研究開発投資が多く、留学生の交流が多く、EUに加盟している国間での国際共著が多いことや、2) 国際移動先に移動元より多くの研究者がおり、移動先と移動元の公用語の一致やEU加盟国同士の場合に、研究者の国際移動が多いことが示された。化学分野の論文データベースを用いた分析からは、国際共著論文数が多い研究者は、そうでない研究者よりも研究パフォーマンス(論文の数と平均被引用数)が高いことが示された。この傾向は日本、米国、英国、中国で共通である。
著者
高橋 顕博 安藤 朝夫 文 世一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.149-156, 1997-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12
被引用文献数
4 5

阪神・淡路大震災の被害には構造物の破壊のような直接的被害のみならず産業活動の衰退のような間接的被害もみられた。本研究では産業連関表と計量経済モデルを組み合わせ、建物被害と交通被害により間接的被害を推計するモデルを構築し、実際に被害推計を行うことを目的とする。分析は被災地域として兵庫県を想定し、日本全国を (1) 兵庫県、(2) 兵庫県を除く近畿地域、(3) 近畿以東の日本及び (4) 近畿以西の日本に区分し、これに外国を加えた5地域で行われた.交通被害の影響は交易係数及び交通容量を等して分析される. 被害は所得の減少による人口流出や地域間交易 (取引) の変化で評価される・分析の結果、全国で約13兆円の経済被害が生じ、その約15%は兵庫県で生じた結果を得た。これらの推計結果は兵庫県の県民経済計算との比較により妥当であると検証された。
著者
文 世一 矢澤 則彦 安藤 朝夫 佐々木 公明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

(1)交通計画、地理学、都市・地域経済学をはじめとする関連分野において、情報通信及び交通システムの整備が経済活動に及ぼす効果について論じた文献をレビューし、空間のレベル、企業のタイプ、コミュニケーションの形態ごとに、情報通信と交通システム整備の効果をいかにとらえるべきかについて論点整理を行なった。(2)オフィス企業が都市内の他企業と行うコミュニケーションの手段と回数、および都市内での立地選択をモデル化した。ここではコミュニケーションの質的レベルを明示的に考慮してコミュニケーションの手段選択を定式化している。情報通信費用の低下が都市内交通需要、及び企業の立地分布に及ぼす効果をシミュレーションによって分析した。その結果、通信費用の低下によって交通需要は増加する場合と減少する場合があること、企業の立地分布は分散化することなどが示された。(3)都市間コミュニケーションのための情報通信・交通システムの整備が、企業の本社-支社の機能配置に及ぼす影響を通じて広域的な空間構造の変化を分析した。ここでは企業間(他都市に立地する取引先と)、および企業内(同じ企業の本社と支社の間)の二通りのコミュニケーションを行うオフィス企業の行動をモデル化した。このモデルは、一企業の立地選択を定式化するだけではなく、多数の立地行動の間の相互依存関係と立地均衡を通じて都市規模の分布を求めることができる。このようなモデルにもとづいて、支社の立地と都市規模が交通システムや情報通信システムの変化によってどのような影響を受けるかを分析した。その結果、情報通信システムの整備は、支社の立地を促進するが、交通システムの整備は本社への集中化をもたらすことが示された。