著者
今高 城治 城山 泰彦 矢澤 卓也 George Imataka Yasuhiko Kiyama Takuya Yazawa
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.85-88, 2022-12-25

世界の中で日本の大学の国際競争力が問われている.その大きな要因として,研究者の情報発信力の低下が指摘されている.医科学生物学分野における国際的研究論文が収載される米国National Center for Biotechnology Informationが運営するPubMedは,世界中の医学者が利用する権威のある非営利の検索エンジンである.日本国内の医学部における学内刊行誌においても,5つの英文ジャーナルがPubMedと共にJournal Citation Reportsに掲載されジャーナル・インパクトファクターが付与されている.本稿では,日本国内の医学部で刊行されている学内誌の現状と,PubMedへ収載するための申請として,MEDLINEの受理の状況について紹介し,国内医学部が刊行する学術誌を国際化することの戦略的意義について述べる.
著者
矢澤 卓也 柳 富子 砂金 秀章 徳田 均 飯原 久仁子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.233-240, 2015-08-20 (Released:2015-09-24)
参考文献数
12

背景.肺リンパ腫様肉芽腫症は悪性リンパ腫と鑑別困難なことがあり,その病態も複雑である.症例.66歳,女性.11年前に健診で左中肺野の結節影を指摘され,ALアミロイドーシス(肺限局型)と診断された.6年前には右中肺野に新出の結節影が出現し緩徐に増大していたものの,症状ないため経過観察されていたが,乾性咳嗽が出現するようになり多発結節影の新出も確認されたため,確定診断目的に20 mm大の結節性病変が切除された.病理組織学的には壊死,血管破壊像を伴うリンパ増殖性病変であり,高度に浸潤するCD4+主体の小型Tリンパ球および少数介在する大型異型Bリンパ球が見られ,EBV-encoded small RNA(EBER)は大型異型Bリンパ球のみならずCD4+ Tリンパ球にも陽性であった.またクロナリティー解析により,T細胞受容体β鎖に微弱なクローナルシグナルが検出された.悪性リンパ腫として化学療法が施行されたが,腫瘍の増大および繰り返す閉塞性肺炎により,治療開始から23ヶ月後に呼吸不全により死亡となった.結論.本例では背景に何らかの免疫異常の存在が示唆され,EBV感染Bリンパ球およびCD4+ Tリンパ球が肺内で異常増殖し多発結節性病変を形成したものと考えられ,T細胞リンパ腫への移行が示唆された点が特異であった.今後同様の症例が集積され,効果的な治療法が確立されていくことが望まれる.