著者
矢澤 卓也 柳 富子 砂金 秀章 徳田 均 飯原 久仁子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.233-240, 2015-08-20 (Released:2015-09-24)
参考文献数
12

背景.肺リンパ腫様肉芽腫症は悪性リンパ腫と鑑別困難なことがあり,その病態も複雑である.症例.66歳,女性.11年前に健診で左中肺野の結節影を指摘され,ALアミロイドーシス(肺限局型)と診断された.6年前には右中肺野に新出の結節影が出現し緩徐に増大していたものの,症状ないため経過観察されていたが,乾性咳嗽が出現するようになり多発結節影の新出も確認されたため,確定診断目的に20 mm大の結節性病変が切除された.病理組織学的には壊死,血管破壊像を伴うリンパ増殖性病変であり,高度に浸潤するCD4+主体の小型Tリンパ球および少数介在する大型異型Bリンパ球が見られ,EBV-encoded small RNA(EBER)は大型異型Bリンパ球のみならずCD4+ Tリンパ球にも陽性であった.またクロナリティー解析により,T細胞受容体β鎖に微弱なクローナルシグナルが検出された.悪性リンパ腫として化学療法が施行されたが,腫瘍の増大および繰り返す閉塞性肺炎により,治療開始から23ヶ月後に呼吸不全により死亡となった.結論.本例では背景に何らかの免疫異常の存在が示唆され,EBV感染Bリンパ球およびCD4+ Tリンパ球が肺内で異常増殖し多発結節性病変を形成したものと考えられ,T細胞リンパ腫への移行が示唆された点が特異であった.今後同様の症例が集積され,効果的な治療法が確立されていくことが望まれる.
著者
河口 貴昭 酒匂 美奈子 吉村 直樹 高添 正和 柳 富子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.536-541, 2009 (Released:2009-04-06)
参考文献数
10

42歳男性,HIV感染進行期に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎を発症した.緩解導入療法が奏効したが,HIV感染は進行したため,多剤併用療法(HAART)を行った.HIVウイルス量は激減しCD4リンパ球数は回復,さらに潰瘍性大腸炎は無治療で緩解を維持した.潰瘍性大腸炎を合併したHIV感染の報告は本邦初であるが,HIV感染進行期の免疫異常と炎症性腸疾患発症との関連が示唆される興味深い症例である.