著者
石川 知弘
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.303-313, 2021-10-25

2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2年近く経過した今も世界中で公衆衛生上の問題となっており,COVID-19制圧には効果的なワクチンと治療薬の開発が喫緊の課題である.COVID-19の与えた国際社会へのインパクトは大きく,多くの研究者や企業がワクチンや治療薬の開発に尽力し,日本国内でもワクチンや抗体カクテル薬などが既に認可されている.特にワクチンにおいては従来のワクチン種別に無いmRNAワクチン2種とウイルスベクターワクチン1種が先んじて特例承認という形で日本でも認可されている.本稿では,これら日本国内で承認されたワクチンの詳細を中心に新型コロナウイルスに対するワクチン開発状況を解説する.また,日本国内での接種後副反応の出現状況やワクチン接種に係る懸念事項(ワクチンによる感染増強や変異株に対する有効性など)についても論じたい.
著者
今高 城治 城山 泰彦 矢澤 卓也 George Imataka Yasuhiko Kiyama Takuya Yazawa
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.85-88, 2022-12-25

世界の中で日本の大学の国際競争力が問われている.その大きな要因として,研究者の情報発信力の低下が指摘されている.医科学生物学分野における国際的研究論文が収載される米国National Center for Biotechnology Informationが運営するPubMedは,世界中の医学者が利用する権威のある非営利の検索エンジンである.日本国内の医学部における学内刊行誌においても,5つの英文ジャーナルがPubMedと共にJournal Citation Reportsに掲載されジャーナル・インパクトファクターが付与されている.本稿では,日本国内の医学部で刊行されている学内誌の現状と,PubMedへ収載するための申請として,MEDLINEの受理の状況について紹介し,国内医学部が刊行する学術誌を国際化することの戦略的意義について述べる.
著者
古郡 規雄 下田 和孝
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.259-265, 2020-10-25

パーソナリティとは,個人の感情,認識,欲望,行動のパターンにおける一貫性と一貫性を説明するために使用される抽象化されたものである.近年,ビッグ・ファイブ理論の一般的普及や,行動遺伝学,神経生物学等の発展を背景にして,パーソナリティに対する関心が高まっている.次元論的人格理論のうち代表的なものとしては,Cloninger による7次元モデルやCosta & McCrae によるビッグ・ファイブ理論がある.近年の分子遺伝学の進歩によりパーソナリティに関与する遺伝子は数多く,一つ一つの効果は小さいと結論づけられている.本稿では7次元モデルとビッグ・ファイブ理論を紹介し,過去に我々が行った研究ではドパミンDRD4遺伝子多型は新規性追求と血液型ABO 遺伝子多型が固執に影響を及ぼしていた.今後は,脳画像研究や神経生理学的検証でさらなる確認試験が必要となる.
著者
渡邊 崇 古郡 規雄 下田 和孝 Takashi Watanabe Norio Furukori Kazutaka Shimoda
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.73-78, 2020-07-25

父娘がともに注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)を発症した2症例を経験した.ADHDは児童思春期に診察される場合が多いが,成人後にも症状が残遺することもあり,慢性的な疾患であると考えられる.この症例報告では,家族間であっても,有効な治療薬において差異が認められた.このような家族間での差異を多面発現性と多遺伝子モデルに基づいて考察した.
著者
宮本 雅之
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.227-238, 2020-10-25

睡眠と記憶(認知機能)との関連について,主に下記の5点について概説した.1.睡眠と記憶との関係をみたとき,長期記憶である手続き記憶と宣言的記憶の統合と定着には睡眠が大きな役割を果たす.2.睡眠不足の状態では,前頭葉の前頭前野が関わる遂行機能に悪影響がみられる.3.不眠は,認知症発症のリスクを高め,アルツハイマー病理のひとつであるアミロイドb の動態にも関与がみられる.4.閉塞性睡眠時無呼吸は,繰り返す閉塞性呼吸イベントに伴う間歇的低酸素血症と睡眠の分断化により,神経心理学的評価などから前頭葉の前頭前野が関わる遂行機能の障害が認められる.若年者や中年者では認知機能低下,高齢者においてはアルツハイマー病など認知症発症のリスク要因となるため,積極的な治療介入が必要である.5.レム睡眠行動障害は,中高年発症の特発性例では,レビー小体病の発症リスク群として重要である.本症ではレビー小体型認知症でみられる神経心理症候である視空間構成能力,視空間学習,錯視,注意,遂行機能,言語性記憶の障害がみられる.またレビー小体型認知症の臨床診断においてレム睡眠行動障害の存在は重要である.
著者
Osamu Arisaka Megumi Iijima-Nozawa Yukiko Shimada Yoshiya Ito George Imataka Junko Naganuma Go Ichikawa Satomi Koyama
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-7, 2021-03-25

Human behavioral sex differences are currently understood to result from a combination of social, cultural, cognitive, and biological mechanisms. To understand how gender identity as the sexuality of the mind is formed is important for understanding psychosexual problems of children and to consider how to manage patients with disorders of sex development(DSD), in which the development of gonads and genitals is atypical and it is difficult to determine the gender of boys and girls. There is consistent evidence that early testosterone exposure influences childhood gender role behavior, as well as gender identity and sexual orientation. In this review, we summarize the most relevant studies on the biological basis of sexual development. In particular, we focus on the impact of sex hormones and genetic background on development of sexual differentiation and gender identity, with introduction of our research using figure drawings by pediatric patients with congenital adrenal hyperplasia, which is also a DSD.
著者
古郡 規雄 下田 和孝
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.259-265, 2020-10-25

パーソナリティとは,個人の感情,認識,欲望,行動のパターンにおける一貫性と一貫性を説明するために使用される抽象化されたものである.近年,ビッグ・ファイブ理論の一般的普及や,行動遺伝学,神経生物学等の発展を背景にして,パーソナリティに対する関心が高まっている.次元論的人格理論のうち代表的なものとしては,Cloninger による7次元モデルやCosta & McCrae によるビッグ・ファイブ理論がある.近年の分子遺伝学の進歩によりパーソナリティに関与する遺伝子は数多く,一つ一つの効果は小さいと結論づけられている.本稿では7次元モデルとビッグ・ファイブ理論を紹介し,過去に我々が行った研究ではドパミンDRD4遺伝子多型は新規性追求と血液型ABO 遺伝子多型が固執に影響を及ぼしていた.今後は,脳画像研究や神経生理学的検証でさらなる確認試験が必要となる.
著者
大髙 智博 市川 剛 安藤 裕輔 髙栁 文貴 大坪 勇人 福島 啓太郎 今高 城治 吉原 重美 Tomohiro Otaka Go Ichikawa Yusuke Ando Fumitaka Takayanagi Yuto Otubo Keitaro Fukushima George Imataka Shigemi Yoshihara
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.49-54, 2020-07-25

2019年12月以降,中国湖北省武漢より広まった新型コロナウイルス(severe acute respiratorysyndrome coronavirus 2;SARS-CoV-2)による感染症(coronavirus disease 2019;COVID-19)の流行により,2020年5月末時点で全世界で33万人を超える死者が報告された.致死率は高齢者や基礎疾患を有する患者に高く,現時点で有効な治療法は確立していない.また急務とされるワクチンの開発も実現していない.人々は集団感染を予防するため世界の各都市で都市封鎖や自粛生活を余儀なくされた.更なる感染拡大の防止に向けて,成人のCOVID-19においては既存の治療薬を応用した対症療法の確立が試みられている.しかし小児の治療法に関する報告は少ない.本稿では小児のCOVID-19の治療になりえる薬剤や投与方法について国内外の知見を参考に,当院小児科における治療方針(案)を定めた.