著者
矢野 澄雄 福田 博也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ヒトの骨の質・強さを非評価する方法について、前腕骨の固有振動数の計測と骨密度などにより指標となるものを提案し、主に50歳代以上の年齢層別推移を調べて、指標間の比較検討を行った。そのため、通常のpQCT骨密度検査での前腕遠位4%断面に加えて、20%断面でも測定し、そのCT画像からの生体特性も用いた。得られた研究実績は次のとおりである。1.20%断面での総骨密度と皮質骨密度を測定し、4%断面での総骨密度や海綿骨密度との加齢的低下傾向を比較した。20%断面の総骨密度は4%断面に対して、どの年齢層でも2〜2.5倍程度の値であること、20%断面の皮質骨密度の低下率は総骨密度より小さいことがわかった。2.筋肉が骨への荷重となることに関して、筋肉の影響を評価するために、前腕20%断面でのCT画像から、筋肉断面積と皮質骨断面積を算出した。その面積比(B/M比)を指標として、加齢的推移を調べた。その際、筋肉領域と脂肪の部分とは画像の閾値の差がわずかであるため、画像解析で両者が分離しにくい例が見られた。この原因を検討し、筋肉断面積を求める画像解析上の基準・方法を決めた。3.前腕骨固有振動数も計測した被験者では、ヤング率相当の骨強度指標を三種類算出し、年齢層別の加齢的推移を調べた。それらの比較から、4%断面の総骨密度を用いた場合の骨強度指標が低下率と実用上で有利と考えられる。また、データ数は少ないものの、骨強度指標、骨密度、B/M比およびその他の特性の加齢的低下傾向を比較することができた。年齢層別低下率は骨強度指標が総骨密度やB/M比より大きい。骨密度や骨断面積の方が、筋肉断面積や骨強度指標よりも早い時期から低下している。