著者
田中 裕也 坂本 龍之介 矢野 由香 佐野 史歩 井口 智浩 久我 貴之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1652-1657, 2019 (Released:2020-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

症例は69歳,男性.心窩部痛と食欲不振を主訴に受診.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に全周性の隆起性病変を認め,生検にて未分化多形肉腫と診断された.明らかな遠隔転移はなく,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後2.5カ月で施行したCT検査にて,肝転移と局所再発を指摘された.Doxorubicin投与を開始したが,病状が悪化し術後5.5カ月で永眠した.未分化多形肉腫の好発部位は四肢や後腹膜であり,十二指腸原発の報告例はこれまでに6例のみである.文献的考察を加えて報告する.
著者
久我 貴之 重田 匡利 矢野 由香 坂本 龍之介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.114-119, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
11

消化器癌化学療法患者は有害事象や癌進行で食欲不振の症状がみられ,栄養低下や体重減少をきたし易い。イノラス®配合経腸用液(本剤)は,少量で効率的に栄養素やエネルギーを補給する高濃度半消化態経腸栄養剤である。2019年7月から2020年1月に本剤を投与された21例を対象に投与前後のアルブミン値(Alb),コリンエステラーゼ値(Ch-E),リンパ球数(Lymph),ヘモグロビン値(HGB),体重(BW)により栄養保持および体重維持効果を知ることを目的として,後ろ向き研究を行なった。また投与中止理由等も検討した。男性15例,女性6例で年齢は57~87歳で,癌種は胃8例,大腸7例,胆管4例,食道3例であった。病期分類はⅡ:1例,Ⅲ:6例,Ⅳ:8例,再発:7例であり,2020年2月時点で生存16例,死亡5例であった。投与期間は6~210日で,中止19例の理由は甘すぎ8例,PD6例,食欲改善4例,手術1例であった。全症例で服用前後のAlb,Ch-E,Lymph,HGBおよびBWの変化量に差はなかった。生存群が死亡群と比較してCh-E変化量が有意に良好であった(p=0.0258)。服用期間30日以上群が未満群よりBW変化量が良好な傾向を示した(p=0.0696)。Stage 3以下群がStage 4又は再発群よりAlb変化量が良好な傾向を示した(p=0.0932)。本剤は消化器癌化学療法患者において栄養及び体重維持の補助に役立つ可能性が考えられた。