著者
齊藤 奈英 板倉 誠 田井中 一貴 Tom Macpherson 疋田 貴俊 山口 瞬 佐藤 朝子 大久保 直 知見 聡美 南部 篤 笹岡 俊邦
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.100-105, 2022 (Released:2022-09-25)
参考文献数
32

ドーパミン(DA)作動性神経伝達は,運動制御,認知,動機付け,学習記憶など広範な役割を持つ。DAは大脳基底核回路において,D1受容体(D1R)を介して直接路を活性化し,D2受容体(D2R)を介して間接路を抑制する。さらに詳細にD1RおよびD2Rを介したDA作動性神経伝達を理解するため,筆者らは,D1R発現を薬物投与により可逆的に制御できるコンディショナルD1Rノックダウン(D1RcKD)マウスを作製した。このマウスを用いることにより,D1Rを介する神経伝達が,大脳基底核回路の直接路の情報の流れを維持し,運動を促進することを明らかにした。また,D1Rを介したDA伝達が少なくとも部分的に大脳皮質ネットワーク内の神経活動を増加させて嫌悪記憶形成を促進することを明らかにした。本稿では筆者らのこれまでの取り組みも交えD1RcKDマウスを用いた運動制御と嫌悪記憶形成に関する研究を中心に紹介する。
著者
知見 聡美
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

大脳基底核と小脳はどちらも、随意運動を行う上で非常に重要な役割を果たしており、変調を来すことによって運動が著しく障害されることが広く知られている。運動の指令は、大脳皮質の一次運動野、補足運動野、運動前野などの運動関連領野から脊髄に送られるが、大脳基底核と小脳もこれらの皮質領域から運動情報の入力を受け、情報処理を行ったあと、視床を介して大脳皮質に情報を戻すループ回路を形成することにより、これらの大脳皮質領域の活動調節に寄与している。本研究は、大脳基底核から視床への情報伝達と、小脳から視床への情報伝達が、随意運動を制御する上で果たす役割について明らかにすることを目指す。