著者
谷川 東子 高橋 正通 今矢 明宏 稲垣 善之 石塚 和裕
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.149-155, 2003-04-05
被引用文献数
3

アンディソルとインセプティソルにおける硫酸イオンの現存量を調査し,以下のことを明らかにした。1)吸着態硫酸イオンが主体であるPO_4可溶性Sは全Sの約30%を占める主要な画分であり,その含有率はアンディソルでは16〜880mg S kg^<-1>と高く,インセプティソルでは10〜296mg S kg^<-1>と低く,明瞭な差があった。また欧米の土壌の既報値に比べ,本邦のアンディソルが含有する吸着態硫酸イオンは著しく多く,全Sに占める割合も高かった。2)溶存態硫酸イオン(Cl可溶性Sおよび水溶性S)は両土壌でPO_4可溶性Sよりも含有率が有意に低く,全Sの10%に満たなかった。そのため硫酸イオンはほとんど吸着態で存在していることが明らかになった。3)両土壌におけるPO_4可溶性Sの断面プロファイルは,表層で低く50cm〜1m深で最大値に達する特徴を持っており,とくにメラニューダンドでは最大値に達してからも,高い含有率が下層で維持されていた。4)PO_4可溶性Sは,硫酸イオン吸着能を持つ鉄やアルミニウムの酸化物,とくに腐植複合体画分を除いた非晶質酸化物やアロフェンといった非晶質粘土鉱物,さらに結晶質鉄酸化物の存在に影響を受けていると推察された。溶存態硫酸イオンのうち,交換性硫酸イオン含有率もまたこれらの土壌因子に影響を受けていることが示された。5)メラニューダンドの下層では,硫酸イオン吸着能が著しく高く,その高い硫酸イオン吸着能が水溶性硫酸イオン含有率を低く維持していることが推察された。6)表層から1m深まで積算したPO_4可溶性Sの現存量は,アンディソルでは870〜2670kg S ha^<-1>,インセプティソルでは91〜1440kg S ha^<-1>であった.溶存態硫酸イオンの現存量はPO_4可溶性Sに比べ著しく低く,表層から1m深までの積算で,Cl可溶性Sはアンディソルで17〜103kg S ha^<-1>,インセプティソルで13〜144kg Sha^<-1>,水溶性Sの現存量はアンディソルで23〜56kg S ha^<-1>,インセプティソルで26〜91kg S ha^<-1>であった。
著者
西本 哲昭 塩崎 正雄 山本 肇 石塚 和裕
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.257-265, 1982-07-25

1977〜1978年の有珠山噴火によって林地に堆積した噴出物と, それによって埋没した林地土壌が時間の経過とともにどのように変化していくかを, 5か所に固定調査地を設けて3年間にわたって調査した。1)一般に噴出物に含まれる水溶性成分は時間とともに減っていき, 埋没土壌では一度増加したあとで減少に向かう。すたわち, 上層から下層への流下が考えられる。その速さは陽イオンについてはNa>K・Mg>Caで, 陰イオンについてはCl>SO_4である。2)埋没土壌のECが一時的に増加したが, その値は1m mho/cmを越えることはなく, 森林への影響は考えられない。3)噴出物のpHは初め7〜8であったが, しだいに低下して4〜7になった。埋没土壌への影響は小さかった。4)噴出物のリン酸は, より難溶性へと変化した。5)噴出物層の細菌数は埋没土壌での値に近かったが, 放線菌と糸状菌数はきわめて少なかった。埋没土壌での微生物相の変化は初期にのみ認められた。6)噴出物の厚さに比例して土壌のガス拡散が抑制されており, 林木の根が呼吸障害を起こしている可能性がある。