著者
石川 孝子 福井 小紀子 澤井 美奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.545-555, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 今後都市部における高齢化が著しく進むことから都市部の地域終末期ケア体制の推進が重要となる。終末期療養や看取りに対する認識は,年代によって大きく異なることが指摘されている。そこで,65歳以上と40–64歳の年代別に,都市部在住市民の終末期の希望療養場所と,医療福祉資源などの知識,経験,認識との関連を検討する。方法 東京都武蔵野市民のうち層化無作為抽出した40歳以上の1,500人を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,終末期の希望療養場所,属性,医療・介護の経験・知識・認識とし,終末期の希望療養場所との関連を年代別にロジスティック回帰分析で検討した。結果 769人(回収率51.6%)から回答が得られた。終末期の希望療養場所は,65歳以上では自宅40.9%,自宅以外59.1%,40–64歳では自宅54.1%,自宅以外45.9%であった(P<0.001)。自宅療養選択に関連する要因は,65歳以上の群では,緩和ケアにおける薬物による疼痛管理の知識:「麻薬は中毒になるのではないかと心配」と認識していない(オッズ比:95%信頼区間1.90:1.17–3.08),セルフケア:「服薬行動(風邪をひいたときにすぐに薬を飲まずに予防行動)」をしている(1.97:1.21–3.22),社会的役割:「ボランティア」をしている(2.38:1.34–4.21),在宅療養の認識:「在宅療養費用を入院費の8割以内が妥当」と認識している,「相談できる医療関係者が居る」と認識している(1.82:1.10–3.03,1.90:1.06–3.41),在宅医療の認識:「自宅での看取りでも医療を十分に受けている」と認識している(2.30:1.37–3.87)ことが挙げられた。40–64歳の群では,介護希望者:「介護士」を希望しない(2.80:1.62–4.83),在宅医療の認識:「自宅でも急変時対応ができる」と認識している(2.97:1.15–7.66),終末期の認識:「最期は自由な環境がいい」と認識している(4.57:2.43–8.59)ことが挙げられた。結論 本研究の結果,終末期療養場所の希望と実際の隔たりを少なくするために,65歳以上では介護の社会化への意識変革,40–64歳では死生観の醸成をする機会を持つ,両年代共通として正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。
著者
石川 孝子 福井 小紀子 岡本 有子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.153-162, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1

【目的】終末期がん患者の死亡場所の希望と実際の一致を促進する可能性のある,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施の促進要因を明らかにする.【方法】無作為抽出した全国1,000事業所の訪問看護師に,無記名質問紙調査を実施した.【結果】374名のうち,予後理解を促す支援をした割合は27.8%であった.予後理解を促す支援の実施の促進要因は,医師による患者への余命の告知あり(オッズ比3.22: 95%信頼区間1.81-5.73),予後理解を促す支援は看護師が説明すべきと認識している(2.12: 1.02-4.43),患者へ予後理解を促す支援の必要性を認識している(1.54: 1.08-2.21),1年間のがん患者の自宅看取り数が5人以上(1.78: 1.04-3.05)であった.【結論】患者の希望死亡場所の実現を目指し,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施を促進するためには,上記4項目の推進の必要性が示された.