著者
大槻 奈緒子 福井 小紀子 藤田 淳子 清水 準一 林田 賢史 清崎 由美子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.183-192, 2019 (Released:2019-11-13)
参考文献数
32
被引用文献数
2

目的:本研究は,機能強化型訪問看護事業所での利用者特性に応じた訪問看護ケアの実施実態を明らかにした.方法:全国の機能強化型訪問看護事業所と利用者515名を対象に開発したデータ入力システムを用いた調査を行った.結果:利用者特性に関連する実施回数の多い訪問看護ケア項目は,がん末期では「疾病・治療の説明・指導(オッズ比(OR)=4.535)」,神経難病利用者への「衣生活のケア・指導(OR = 2.276)」,小児への「精神的援助(OR = 3.062)」「意思決定支援(OR = 3.701)」が特徴的であった.結論:利用者特性別での実施回数の多い特徴的な訪問看護ケアが明らかになった.訪問看護のケア実施には,利用者特性を考慮する必要がある.
著者
大濱 悦子 福井 小紀子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.269-279, 2019 (Released:2019-12-17)
参考文献数
106
被引用文献数
5

【目的】国内外のアドバンスケアプランニング(ACP)を比較し,わが国で今後求められる知見について検討する.【方法】医中誌およびMEDLINEで検索可能で2019年6月までに発行された日本語または英語の論文を対象に文献検討を行った.前者ではシソーラス「アドバンスケア計画」で検索可能な原著論文,後者ではMeSH「ACP」で検索可能なレビューを対象とした.【結果】MEDILINEで849本のレビュー(約500本が米国での執筆),医中誌では186本の原著論文が検索された.日本のACP研究の数・エビデンスレベルは米国に比べ遅れを取っていること,行政および学会等で共通したACPの定義が設定されていないこと,在宅療養者を対象とした介入研究の知見はほとんどないことが明らかとなった.【結論】日本の文化的・社会的背景を考慮したACPの定義設定とともにとくに在宅療養者への効果的な介入についてのエビデンスの構築が求められる.
著者
石川 孝子 福井 小紀子 澤井 美奈子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.545-555, 2014 (Released:2014-10-08)
参考文献数
33
被引用文献数
1

目的 今後都市部における高齢化が著しく進むことから都市部の地域終末期ケア体制の推進が重要となる。終末期療養や看取りに対する認識は,年代によって大きく異なることが指摘されている。そこで,65歳以上と40–64歳の年代別に,都市部在住市民の終末期の希望療養場所と,医療福祉資源などの知識,経験,認識との関連を検討する。方法 東京都武蔵野市民のうち層化無作為抽出した40歳以上の1,500人を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,終末期の希望療養場所,属性,医療・介護の経験・知識・認識とし,終末期の希望療養場所との関連を年代別にロジスティック回帰分析で検討した。結果 769人(回収率51.6%)から回答が得られた。終末期の希望療養場所は,65歳以上では自宅40.9%,自宅以外59.1%,40–64歳では自宅54.1%,自宅以外45.9%であった(P<0.001)。自宅療養選択に関連する要因は,65歳以上の群では,緩和ケアにおける薬物による疼痛管理の知識:「麻薬は中毒になるのではないかと心配」と認識していない(オッズ比:95%信頼区間1.90:1.17–3.08),セルフケア:「服薬行動(風邪をひいたときにすぐに薬を飲まずに予防行動)」をしている(1.97:1.21–3.22),社会的役割:「ボランティア」をしている(2.38:1.34–4.21),在宅療養の認識:「在宅療養費用を入院費の8割以内が妥当」と認識している,「相談できる医療関係者が居る」と認識している(1.82:1.10–3.03,1.90:1.06–3.41),在宅医療の認識:「自宅での看取りでも医療を十分に受けている」と認識している(2.30:1.37–3.87)ことが挙げられた。40–64歳の群では,介護希望者:「介護士」を希望しない(2.80:1.62–4.83),在宅医療の認識:「自宅でも急変時対応ができる」と認識している(2.97:1.15–7.66),終末期の認識:「最期は自由な環境がいい」と認識している(4.57:2.43–8.59)ことが挙げられた。結論 本研究の結果,終末期療養場所の希望と実際の隔たりを少なくするために,65歳以上では介護の社会化への意識変革,40–64歳では死生観の醸成をする機会を持つ,両年代共通として正しい知識の普及啓発の必要性が示唆された。
著者
藤田 淳子 福井 小紀子 池崎 澄江 辻村 真由子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.819-827, 2020-11-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
26
被引用文献数
1

目的 在宅チームケアにおいて重要な役割を担う介護関連職の認識する医療職との連携困難感を測定する尺度を開発することである。方法 緩和ケアの多職種研修会に関連した研究結果から介護関連職からみた医療職との連携困難感に関する内容を抽出し,専門家パネルにて10項目の設問からなる尺度原案を作成した。1都市の在宅ケアに従事する介護関連職を対象に,自記式質問紙調査を実施し,尺度の信頼性・妥当性について検討した。結果 220人を分析対象とした探索的および確証的因子分析の結果,2因子構造6項目を採択した。因子は,「尊重されない感覚」「コミュニケーションの壁」と命名した。Cronbach α係数は,尺度全体で0.80,各因子は,0.77-0.81であり内的整合性が確認された。基準関連妥当性について,他の2尺度との相関係数を算出したところ,尺度全体でr=−0.36~−0.42の負の相関が有意に認められた。下位尺度は,第Ⅰ因子と他の2尺度とはr=−0.17~−0.27,第Ⅱ因子と他の2尺度とは,r=−0.41~−0.42の負の相関が有意に認められた。結論 開発した尺度は,在宅の介護関連職の連携困難感を測定する尺度として一定の信頼性・妥当性を有すると考えられた。
著者
石川 孝子 福井 小紀子 岡本 有子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.153-162, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1

【目的】終末期がん患者の死亡場所の希望と実際の一致を促進する可能性のある,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施の促進要因を明らかにする.【方法】無作為抽出した全国1,000事業所の訪問看護師に,無記名質問紙調査を実施した.【結果】374名のうち,予後理解を促す支援をした割合は27.8%であった.予後理解を促す支援の実施の促進要因は,医師による患者への余命の告知あり(オッズ比3.22: 95%信頼区間1.81-5.73),予後理解を促す支援は看護師が説明すべきと認識している(2.12: 1.02-4.43),患者へ予後理解を促す支援の必要性を認識している(1.54: 1.08-2.21),1年間のがん患者の自宅看取り数が5人以上(1.78: 1.04-3.05)であった.【結論】患者の希望死亡場所の実現を目指し,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施を促進するためには,上記4項目の推進の必要性が示された.
著者
藤田 淳子 福井 小紀子 岡本 有子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.416-423, 2016 (Released:2016-09-27)
参考文献数
19

目的 過疎地域の住民が最期まで地域で過ごせるための医療・介護のあり方への示唆を得ることを目的として,医療・介護関係者の終末期ケアの実態,在宅支援の実態および多職種連携の状況を明らかにした。方法 A地域の医療・介護関係者398人(医療・介護・福祉の専門職,または,連携関連部署に所属する事務職で,かつ常勤であるものの総数)を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。職種別,所属場所別(病院,施設,地域)に集計した。結果 調査票の回収は,38機関より212人であった(回収率53.3%)。終末期ケアの実態として,過去1年間に終末期ケアを実施した割合は,職種別では,介護支援専門員(71.4%),介護福祉職(66.7%),医師(66.7%)が高かった。所属場所別では,病院と施設が約70%であるのに対し,地域は40%以下であった。在宅支援の実態については,回答者全体の70%以上が,何らかの在宅支援を実施し,かつ関心をもっていた。在宅支援の実施内容の1つである自宅訪問については,医師(77.8%)と介護支援専門員(90.5%)の実施割合が高かったが,その他の職種においても20~40%が実施し,また,所属場所別において病院や施設でも20~30%が実施していた。多職種連携については,7下位尺度で構成された顔の見える関係評価尺度を用いて測定した結果,下位尺度「多職種で会ったり話し合う機会」の得点が低く,「他施設の関係者とのやりとり」,「病院と地域の連携」の得点が他の下位尺度に比べ高い傾向にあった。結論 終末期の医療・介護体制として,施設の介護福祉職を中心とした終末期ケア体制の構築,病院や施設からのサポートによる在宅支援の促進が可能な地域であると考える。また,多職種で会ったり話し合う場を作ることによるネットワークづくりが必要である。
著者
福井 小紀子 乙黒 千鶴 藤田 淳子 池崎 澄江 辻村 真由子
出版者
医学書院
雑誌
訪問看護と介護 (ISSN:13417045)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.1021-1027, 2015-12-15

3つのツールを使って連携の強み・弱みを調査 連載第2回となる本稿では、第1回(2015年11月号p.936〜)にて紹介した3つのツールを用いて、段階的に多職種連携の状況をとらえた結果を報告する。
著者
福井 小紀子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.1-9, 2002

本研究ではがん患者の家族の初期および末期における情報ニーズおよび情報伝達に関する認識とその関連要因について検討した. 対象は総合病院一般病棟および緩和ケア病棟へ入院したがん患者の家族であり, 質問紙を用いた面接調査を行い, 疾患, 治療, 予後, 患者および家族へのケアに関する情報ニーズおよび隋報伝達状況について尋ね, さらに各情報の伝達の有無への関連要因を検討した. 各期66名が対象となり, 情報ニーズを持つ家族のうち, 初期に疾患, 治療, 予後の情報伝達のあった家族は6-7割, 患者および家族へのケアに関する情報伝達のあった家族は1-3割であった. 末期は疾患, 治療, 予後および患者へのケアに関する情報伝達のあった家族は7-9割, 家族ケアに関する情報伝達のあった家族は約5割であった. また, 高齢, 患者への病名告知なし, および患者が治療を受けていない家族は情報ニーズがあるにもかかわらず有意に情報が伝達されていないと認識していた.