著者
石川 耕平 佐藤 憲市 伊東 民雄 尾崎 義丸 浅野目 卓 山口 陽平 石田 裕樹 石塚 智明 岡村 尚泰 渕崎 智紀 谷川 聖 田中 伸哉 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.688-693, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

Tumefactive multiple sclerosis (MS) は広範な浮腫や巨大な病変を形成することから, 脳腫瘍と鑑別が困難な例が多い. 本症例は66歳男性で右上下肢の単純部分痙攣発作で発症した. 左前頭葉の病変は画像上悪性グリオーマが疑われ摘出術が行われたが, 病理検査で脱髄性の所見や広範な出血および壊死像, Creutzfeldt cellを認めたことからtumefactive MSの診断に至った. 診断には病理検査が決定的となるが, 画像上病変部の血流上昇を認めないことが悪性グリオーマとの鑑別点と考えられた.
著者
本庄 華織 大里 俊明 大森 惠 村木 岳史 石川 耕平 岡村 尚泰 中村 博彦
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.525-530, 2019-05-10

Ⅰ.はじめに もやもや病では,過換気や啼泣によるhypocapniaが虚血発作や脳梗塞発症の引き金になることがよく知られている.そのため,小児もやもや病の血行再建術の周術期管理において,啼泣を回避することが虚血性合併症を予防する上で非常に大切である.特に術直後は,麻酔覚醒時の術後興奮,疼痛,不安により啼泣しやすい状況にある.さらに脳循環動態が極めて不安定なために,啼泣によるhypocapniaにより広範な脳梗塞に至る危険性がある.啼泣を回避し,normocapniaを維持するため,麻酔科の協力を得て,superficial temporal artery(STA)-middle cerebral artery(MCA)anastomosis+encephalo-myo-synangiosis(EMS)終了後,抜管時より翌朝までデクスメデトミジン(dexmedetomidine:DEX)にて持続的に鎮静を行った. 海外では,DEXのもつ鎮静・鎮痛・臓器保護作用,そして呼吸抑制が少ないという特徴より,小児への投与の有効性が報告されている22,24).日本では2004年から市販されているが,小児例,脳神経外科領域での報告例は少ない. 小児もやもや病の術後啼泣回避のための鎮静薬として,DEXの有用性を検討したので報告する.