著者
木野 孔司 杉崎 正志 羽毛田 匡 高岡 美智子 太田 武信 渋谷 寿久 佐藤 文明 儀武 啓幸 石川 高行 田辺 晴康 吉田 奈穂子 来間 恵里 成田 紀之
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
TMJ : journal of Japanese Society for Temporomandibular Joint : 日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.210-217, 2007-12-20
参考文献数
22
被引用文献数
4

ここ10年ほどの間にわれわれの顎関節症への保存治療は大きく変化した。個々の患者がもつ行動学的, 精神的寄与因子の管理・是正指導と同時に, 病態への積極的訓練療法を取り入れている。その結果, 改善効果割合の増大と通院期間の短縮がみられた。この効果を確認し, 今後の治療方法改善に向けた検討を目的として, 2003年に実施した治療結果を1993年に報告した保存治療成績と比較した。対象は1993年が382例, 2003年は363例である。治療方法の比較では, 1993年はほぼ病態治療のみであり, 鎮痛薬投与, スプリント療法, 訓練療法, 関節円板徒手整復術などが行われていた。2003年では患者から抽出した個々の行動学的寄与因子の是正指導, 局麻下での徒手的可動化, 抗不安薬や抗うつ薬投与, 心療内科との対診が新たに取り入れられ, 訓練療法, 鎮痛薬投与が多くなり, 逆にスプリント療法, 関節円板徒手整復術は減少した。1993年調査で用いた効果判定基準に従うと, 1993年 (39.8%) に比べ2003年 (61.0%) の著効割合は有意に大きかった (p<0.001), 有効まで含めた改善効果も2003年が有意に大きかった (p=0.001)。逆に通院期間は中央値11.5週から8週と有意に減少した (p=0.030)。これらの結果から, 個々の寄与因子是正指導および訓練療法の効果を前向きに検討する必要性を確認した。