- 著者
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石渡 小百合
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.8, pp.823, 2017 (Released:2017-08-01)
- 参考文献数
- 4
自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)は,社会性や言語コミュニケーションの障害,反復行動を特徴とする多表現型の疾患である.これまでの双性児研究や家族間一致率の研究等から,ASDの発症には遺伝的要因が関与していると考えられている.一方,末梢から供給される分岐鎖アミノ酸(BCAA)は脳の活動に重要である.Novarinoらは,ASD,知的障害そして癲癇患者の中に,BCAAの分解を抑制的に制御するbranched chain keto-acid dehydrogenase kinase(BCKDK)遺伝子の変異を持っている患者がいること,彼らの末梢中BCAA濃度は低下していることを明らかにした.本稿では,BCAAを脳内に輸送するトランスポーターの変異が,ある種のASD病態に関与し,さらにBCAAの投与がそうした病態を改善する可能性があることを示したTarlungeanuらの報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Bailey A. et al., Psychol. Med., 25, 63–77(1995).2) Zhao Z. et al., Cell, 163, 1064–1078(2015).3) Novarino G. et al., Science, 338, 394–397(2012).4) Tarlungeanu D. et al., Cell, 167, 1481–1494(2016).