著者
砂川 芽吹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.87-97, 2015 (Released:2017-06-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

自閉症スペクトラム障害(ASD)の女性は,知られている有病率の少なさと,ASDの症状が分かりにくいことから,これまで焦点が当たってこず,見過ごされている可能性がある。本研究では,①ASDの女性を見えにくくする要因は何か,及び,②ASDの女性は診断に至る過程のなかでどのように生きてきたのか,という2つの問いを明らかにするために,大人になって初めてASDの診断を受けた成人女性12名を対象としたインタビューを行い,GTAによって質的に分析した。その結果,【「大人しさ」のベール】,【就労状況のベール】,【家庭のベール】,【精神症状のベール】という,周囲からASDの女性を見えにくくする4つの社会環境的な要因が見いだされた。さらに,これらのベールの下で,ASDの女性が適応の【努力と失敗の繰り返し】から【社会適応のスキルを学習】することもまた,周囲がASDの女性を認識し難くなる要因となっていることが示唆された。一方で,ASDの女性は,診断に至る過程であらゆる失敗経験を〈自分に原因帰属〉しているために,【自尊心の低下】が起きていた。そのため,ASDの女性は表面的な社会スキルによってASDであることが周囲から見えにくくなっているが,自尊心が低く,支援が必要な状態だと考えられた。本研究を通して,ASDの女性が障害を持つことを見えにくくする要因と適応過程を見いだし,ASDの女性におけるアセスメントや支援についての示唆を得た。
著者
砂川 芽吹
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 2021-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
31

本研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の女性当事者を対象とした海外文献の質的システマティックレビューから、①協力者の属性や研究方法の特徴を明らかにすること、および②ASDの女性の経験に関する研究知見をまとめることを目的とする。そしてそれを踏まえて、ASDの女性の主観的な経験理解と支援に向けた質的研究の課題と展望について検討する。過去20年間に英語で刊行された質的研究を対象とした系統的な論文選択のプロセスを経て、最終的に19編の論文が抽出された。対象となった論文の特徴、および各論文で示された結果の主なテーマをまとめた。その結果、ASDの女性が思春期以降、特性と社会環境との相互作用の中で困難を経験し対処してきたことが、当事者自身の視点から明らかとなった。また、ASDの特性が女性のライフイベントに影響を与え、当事者は女性特有の困難を経験していたことが示唆された。本研究を通して、ASDの女性の理解と支援において、ASDがあり、かつ女性であるという観点から、その主観的な経験を捉えるような質的研究の重要性が示唆された。
著者
砂川 芽吹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-02-01

自閉スペクトラム症(ASD)の女性は,表面的には対人コミュニケーションスキルを獲得し,社会生活において一見問題がないように見えることも少なくない。しかしながら,日々の生活に目を移すと,女性に対する社会的期待や社会的要請について障害特性から困難に直面することが多いと考えられる。よって,本研究ではASDの女性の「社会適応」に着目し,女性として生きる日々の生活に即した困難を明らかにしたうえで,ASDの女性のライフサイクルに沿った具体的な支援のあり方を検討することを目的とする。
著者
砂川 芽吹
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.87-97, 2015

自閉症スペクトラム障害(ASD)の女性は,知られている有病率の少なさと,ASDの症状が分かりにくいことから,これまで焦点が当たってこず,見過ごされている可能性がある。本研究では,①ASDの女性を見えにくくする要因は何か,及び,②ASDの女性は診断に至る過程のなかでどのように生きてきたのか,という2つの問いを明らかにするために,大人になって初めてASDの診断を受けた成人女性12名を対象としたインタビューを行い,GTAによって質的に分析した。その結果,【「大人しさ」のベール】,【就労状況のベール】,【家庭のベール】,【精神症状のベール】という,周囲からASDの女性を見えにくくする4つの社会環境的な要因が見いだされた。さらに,これらのベールの下で,ASDの女性が適応の【努力と失敗の繰り返し】から【社会適応のスキルを学習】することもまた,周囲がASDの女性を認識し難くなる要因となっていることが示唆された。一方で,ASDの女性は,診断に至る過程であらゆる失敗経験を〈自分に原因帰属〉しているために,【自尊心の低下】が起きていた。そのため,ASDの女性は表面的な社会スキルによってASDであることが周囲から見えにくくなっているが,自尊心が低く,支援が必要な状態だと考えられた。本研究を通して,ASDの女性が障害を持つことを見えにくくする要因と適応過程を見いだし,ASDの女性におけるアセスメントや支援についての示唆を得た。