著者
大関 由貴 奥村 匡子 神吉 宇一 Okumura Kyoko 神吉 宇一 Kamiyoshi Uichi
出版者
神奈川大学 国際経営研究所
雑誌
国際経営フォーラム (ISSN:09158235)
巻号頁・発行日
no.25, pp.239-279, 2014

日本では,移民政策は検討しないとする政府の公式見解にも関わらず,外国人の入国は増加し,定住化が進んでいる現状がある.人口減少や労働力不足が深刻な社会問題となりつつある中,今後も外国人の受け入れは増加が見込まれる.外国人の十全な社会参加に欠かせない社会統合を考えるとき,重要な役割を担う日本語教育は,現在どのような研究的課題を抱え,今後,どこを目指していくべきなのだろうか.本稿では,このような問題意識に立ち,経済連携協定により来日する介護人材の受け入れ問題を対象に,日本語教育および関連領域における研究の現状を整理し,それらを対比させることによって,日本語教育研究の現状と課題を浮き彫りにすることを目的とした.分析の結果,外国人介護人材に関する日本語教育研究は,国家試験分析研究の偏重による弊害,就労現場研究の必要性,制度設計や社会の支援体制整備を目指す研究の必要性という三つの課題が明らかになった.査読論文
著者
菊岡 由夏 神吉 宇一
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.129-143, 2010 (Released:2017-03-21)
参考文献数
28

本研究は「生活者のための日本語教育」構築の基礎として,外国人を含む就労現場の言語活動に着目し,それを通した第二言語習得過程での言語発達の限界と可能性を明らかにすることを目的とした。具体的には,外国人が働く工場でフィールドワークを行い,その言語活動を「一次的ことばと二次的ことば」の観点から分析した。その結果,外国人作業員は一次的ことばによる作業員同士の言語活動には堪能な一方,二次的ことばによる「他者」との言語活動には困難を生じることがわかった。これは二次的ことばが一次的ことばとは異なる「自覚性と随意性」という言語的思考を要するためだと考えられた。換言すれば,これは無自覚な言語使用は可能でも自覚的な言語使用が不十分だという第二言語習得過程での言語発達の限界を示す現象だと考えられた。最後に,この限界を超え可能性を生かす日本語教育が目指すべきものとして,「越境のための日本語」という概念を提示した。
著者
神吉 宇一
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.21-36, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
103

本稿は,近年の外国人労働者受け入れ増加に伴う制度・政策変更を踏まえ,改めて共生社会を実現するために必要とされる日本語教育について論じたものである.まず,政策的に共生という概念がどのように位置づけられているかを概観したあと,共生社会を目指す日本語教育がどのように展開しているかを整理した.そして今後,共生社会を目指す日本語教育のあり方として,制度的な位置づけの明確化,言語保障を実現する学習のモデル化,介入的研究活動の必要性という三点が重要であることを述べた.
著者
菊岡 由夏 神吉 宇一
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.146, pp.129-143, 2010

<p> 本研究は「生活者のための日本語教育」構築の基礎として,外国人を含む就労現場の言語活動に着目し,それを通した第二言語習得過程での言語発達の限界と可能性を明らかにすることを目的とした。具体的には,外国人が働く工場でフィールドワークを行い,その言語活動を「一次的ことばと二次的ことば」の観点から分析した。その結果,外国人作業員は一次的ことばによる作業員同士の言語活動には堪能な一方,二次的ことばによる「他者」との言語活動には困難を生じることがわかった。これは二次的ことばが一次的ことばとは異なる「自覚性と随意性」という言語的思考を要するためだと考えられた。換言すれば,これは無自覚な言語使用は可能でも自覚的な言語使用が不十分だという第二言語習得過程での言語発達の限界を示す現象だと考えられた。最後に,この限界を超え可能性を生かす日本語教育が目指すべきものとして,「越境のための日本語」という概念を提示した。</p>