著者
神山 崇
出版者
The Crystallographic Society of Japan
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.301-307, 1998-10-31 (Released:2010-09-30)
参考文献数
17

入門講座「結晶学の原点を読む」の第2回目は, リートベルト法です.粉末回折法で構造を決定する非常に有力な手段であるリートベルト法は, 現在非常に多くの利用者がおり, 結晶学の分野では欠かせない解析法となっています.この方法の原理は非常に簡単であり, 測定された粉末回折の強度データのパターンと構造モデルから計算された強度のパターンが一致するように最小自乗法でパラメーターを求めるだけです.このように簡単な原理からなっているにもかかわらず, 計算機のプログラムは非常に複雑で多岐に渡っており, 使用している方々のほとんどにとってそのプログラムの中身はまったくブラックボックスであり, かつ出力された結果に対する吟味もどのようにしたら良いかあまりわからず使っている感があります.また, リートベルト自身によるさまざまな物質への適用例は施設報告が多く手に入りにくいものです.そのような中には, 現在の単結晶の実験からみて明らかに間違った結果を出している例も見られます.これも, 当時の技術力と言うよりは, 相転移のような微妙な構造変化の問題を取扱う時, リートベルト法は非常に注意が必要であると言う今日的な問題です.これら, 粉末回折でのリートベルト法の有利な点や適用範囲は何か, また, リートベルト自身がどのような問題点や注意点がこの方法にあると考えていたのかを原著論文で見ることは大変意義があると言えます.今回は, J. Appl. Cryst.に投稿されたリートベルト法の原点とも言える論文を易しく解説していただきます.
著者
井手本 康 山脇 健太郎 小浦 延幸 神山 崇 及川 健一 泉 富士夫
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
日本セラミックス協会学術論文誌 : Nippon Seramikkusu Kyokai gakujutsu ronbunshi (ISSN:18821022)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1297, pp.651-657, 2003-09-01
被引用文献数
1

超伝導酸化物は構成元素の組成変化が金属の価数,酸素量,超伝導特性に大きく影響を与える構造敏感な性質を有している.また,組成変化に伴い結晶構造も変化する.したがって金属の価数,酸素量と結晶構造,超伝導特性の相関について検討することは非常に重要である,構成元素の組成比を制御する手法としては金属サイトを非化学量論組成にする方法や,焼成条件を変化させる方法などがある.また,金属の価数を制御する手法としては,金属サイトにそのサイトの価数とは異なる価数を持つ金属を置換する方法や,金属成分の組成は変化させずに酸素雰囲気下やアルゴン雰囲気下などでのアニール処理,又は高酸素圧処理によって酸素量を変化させる手法がある.Tl系2223相(Tl_2Ba_2Ca_2Cu_3O_y)は高温超伝導酸化物の中でも臨界温度(T_c)が最高で125Kと高いという利点がある.しかし,Tlの蒸発により単一相の合成が困難である.これまでに,Tl系2223相に関するRietveld法による結晶構造解析についていくつか報告がある.Tl系において金属成分を非化学量論組成に制御した報告として,Tl系2212相についてTl組成が欠損しているが単一相が得られること,Tl系2223相についてはTl組成を1.4まで減少させても結晶構造は安定に存在し,更にTl組成の変化によって試料中のCuの価数が変化し,T_cが上昇するとの報告がある.しかし,これらはTlやCuなどの詳細な価数や結晶構造については検討していない.また,元素置換に関しては,Tl系1223相においてTlサイトへCuを置換,Tl系2223相においてはTlサイトへCaを置換していることが報告されている.これまでの著者らの研究でTlサイトへCuが置換していることが示唆されている.一方,この系の物性に関するものとして,Tl系におけるTl,Cuの価数分析法,Tl欠損している試料についての化学分析,Tl_<2-x-z>Ba_2Ca_<n+z>Cu_3O_<10-y>においてxを0〜0.9まで変化させたときのそれぞれのxにおけるホール濃度を化学分析により測定し,T_cと比較した報告があるが,これらについてもTlとCuのそれぞれの価数分析を行っていなく,構造と超伝導特性との相関については明らかでない.著者らはこれまでにTl系2223相のBaサイトヘのSr置換,CaサイトへのY置換を行い,更にCaサイトへYを0.05置換した試料におけるTlの組成変化について検討し,Tl組成1.2までについて報告している.そこで,本報ではTl_2Ba_2Ca_2Cu_3O_y(Tl系2223相)のTl組成のみを変化及びTlサイトとTl欠損サイトに入ると考えられるCuを過剰にした非化学量論組成の試料Tl_<2-x>Ba_2Ca_2Cu_<3+z>O_yを合成し,これらの組成変化に伴うTl,Cuの価数及び結晶構造の変化とT_cとの関係を検討した.また,金属組成が一定でアニール処理によって過剰酸素量を変化させた試料についても同様な検討を行い,これらのTl,Cuの価数,結晶構造の変化と超伝導特性の関係を比較,検討した.
著者
川合 將義 渡辺 精一 粉川 博之 川崎 亮 長谷川 晃 栗下 裕明 菊地 賢司 義家 敏正 神山 崇 原 信義 山村 力 二川 正敏 深堀 智生 斎藤 滋 前川 克廣 伊藤 高啓 後藤 琢也 佐藤 紘一 橋本 敏 寺澤 倫孝 渡辺 幸信 徐 超男 石野 栞 柴山 環樹 坂口 紀史 島川 聡司 直江 崇 岩瀬 宏 兼子 佳久 岸田 逸平 竹中 信幸 仲井 清眞
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

高エネルギー高強度陽子ビーム場の材料は、強烈な熱衝撃や放射線によって損傷を受ける。衝撃損傷過程と影響を実験的に調べ、その緩和法を導いた。また放射線損傷を理論的に評価するコードを開発した。さらに、損傷に強い材料として従来の材料に比べて強度の4倍高く室温で延性を持つタングステン材と耐食性が4倍高いステンレス鋼を開発した。衝撃実験における応力発光材を用いた定量的な方法を考案し、実用化の目処を得た。