著者
鈴木 保志 神崎 康一 川上 好治
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.528-537, 1993-11-01
被引用文献数
4

中国地方の1925年植栽のヒノキ人工林において, 1987〜1988年に間伐率約50%で優勢木を伐出したときの伐出後の林分の事後経過の調査を行った。伐出による被害は残存木の18%に生じていた。1993年の再調査までに台風害と雪害もあって, 24%が消失した。根についた傷の深さについては悪化する傾向を示したが, 直径成長は伐出被害木と被害木との間に有意な差は認められなかった。残存林分の成長の分析には材積年成長を樹幹表面積で割った値を指標として用い, 対照林分に比べて間伐後の成長は遜色がないことが確認された。
著者
山崎 一 吉村 哲彦 神崎 康一
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.143-149, 1996-05-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
15

長伐期優良材生産を指向した間伐木選定に関して,ファジィ推論を用いた簡単な規則による選木モデルを構築し,一熟練者の経験的判断の再現を試みた。モデルの入力値は,幹,樹勢および配置に関する計測情報であり,林木の残伐判定が出力である。面積0.05haのプロット内の林木に対して推論を適用した結果,判別率で全木86%,間伐木63%の精度が得られた。これは同一要因を説明変数とする判別分析の精度をやや上回った。また,システム調整の点においてもファジィ推論の利便性が認められた。本研究により,林業における経験的判断に対するファジィ推論の有効性が明らかになった。さらに,優良材生産を指向した選木では,林木配置および隣接木との相対的な形質比較が重要であることが確認された。
著者
吉村 哲彦 赤羽 元 神崎 康一
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用研究会誌 (ISSN:0912960X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.195-204, 1995-12-15 (Released:2017-11-17)
参考文献数
14

林道のり面が崩壊を起こす事例が各地で見られるが,大規模な崩壊が起きると林地に多大な被害が及ぼされる。そこで,ファジィ理論を用いて,切取のり面及び盛土のり面の崩壊危険度の判定を試みた。崩壊危険度の判断システムは,奈良県十津川村の林道で行った調査の結果に基づいて作成した。のり面の崩壊が多く発生しているのは,内カーブの中心,外カーブの変曲点,林道幅の広い場合,急斜面の場合,切取のり面が高い場合であった。ファジィ積分法を用いて林道のり面の崩壊危険度の判定を行った結果,判別率は切取のり面で68.9%,盛土のり面で70.7%であった。数量化2類では,判別率がそれぞれ67.0%,72.1%となり,ファジィ積分法を用いても,数量化2類と同程度の判別率が得られることがわかった。ファジィ理論を用いるメリットは,地域に応じた判断システムを容易に構築できることであり,評価要因の重視度や評価要因ごとの崩壊危険度を調整することによって,この判断システムを他地域へ応用することができる。
著者
ガンダスチャ スチャ 吉村 哲彦 山本 俊明 神崎 康一
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用研究会誌 (ISSN:0912960X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.117-123, 1995-08-15
被引用文献数
1

インドネシアの東カリマンタンに位置するバツアンパールのビレッジHTISP1とHTISP3で,産業造林の作業者の疲労調査を,フリッカーテスト,ブロッキングテスト,蓄積的疲労徴候調査によって行った。フリッカーテストの結果,おおむね作業前よりも作業後の方がフリッカー値が低下していた。ブロッキングテストの結果,天然更新の補整植栽作業による阻止現象は認められないという結果になった。蓄積的疲労徴候調査において,応答率を日本における橋梁建設工事作業者と比較したところ,身体的な疲労は,今回の調査結果の方が際だって大きかった。その理由として考えられるのは,赤道直下の過酷な暑さである。作業種,居住地,年齢別にその傾向の違いを調べたところ,作業種による違いはあまり大きくないが,「下刈り」が特性項目全般にわたって高くなっている。居住地による違いを調べたところ,身体的疲労はHTISP1の方が際だって高いという結果になったが,HTISP1はHTISP3よりも居住年数が長いため,疲労が蓄積しているのではないかと考えられる。