著者
吉村 哲彦 酒井 徹朗
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用学会誌 (ISSN:13423134)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.193-200, 1998-12-15
被引用文献数
5

林道は公道の整備が十分でない山間部において木材輸送だけでなく交通網の一部としての役割を担っている。本研究では,効率のよいネットワーク形成を目的として,紀伊半島中央部の熊野川流域6村を対象に,ネットワーク分析を用いて林道を含めた道路網の評価を行った。アルファ指数を用いて評価を行った結果,道路の規格が下がるにつれて,この地域の道路網は循環型ではなく突っ込み型の線形が増加することが示された。ベータ指数の値は,わずかに1以上であり,いくつかの地点で代替経路が存在していたが,土砂崩れなどにより道路が遮断された場合に適当な代替経路を探すのは困難である。イータ指数の値も,道路の規格が下がるにつれて減少傾向を示し,市町村道のレベルでネットワークの細分化が進んでいることがわかった。Croftonの公式によりネットワークの連結性を評価した結果,下北山村と野迫川村,下北山村と大塔村の連結性が最も低く,次いで十津川村と天川村,大塔村と天川村の連結性が低いことが示された。逆に道路の連結性が最も高いのは天川村と野迫川村の間であった。このような連結性の低い区間には,既存道路の改良も含めた峰越し連絡道路の整備が必要である。
著者
吉村 哲彦 中野 美穂 千原 敬也 鈴木 保志
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.189, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

日本の各地で放置竹林の拡大が課題となっており、その対策として竹の伐採・搬出を伴う竹林整備が行われている。竹の内部は空洞であるため、その重量は一般的な木材に比べて軽量であるが、生産性や安全性の観点から機械化が必要ではないと考えた。そこで、本研究ではチェーンソーのエンジンを動力とするカナダ製のチェーンソーウインチ(Lewis Winch 400 MK2)を用いて、竹の長材および短材の搬出作業を下げ荷で行った。比較のために、人力による搬出作業も行った。その際、生産性と労働負担を明らかにするために、搬出作業のビデオ撮影を行い、あわせて心拍計(Polar製OH1)を作業者に装着して心拍数を計測した。その結果、生産性の観点でも作業負担の観点でも短材による搬出が不利になることがわかった。生産性の観点では人力による搬出が有利となるが、人力による竹の搬出作業の労働負担は極めて高く、継続的な作業は好ましくないことも明らかになった。結論として、竹の搬出作業は短時間であれば人力でよいが、長時間継続する場合にはチェーンソーウインチのような機械を用いる必要があることが示された。
著者
山崎 一 吉村 哲彦 神崎 康一
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.143-149, 1996-05-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
15

長伐期優良材生産を指向した間伐木選定に関して,ファジィ推論を用いた簡単な規則による選木モデルを構築し,一熟練者の経験的判断の再現を試みた。モデルの入力値は,幹,樹勢および配置に関する計測情報であり,林木の残伐判定が出力である。面積0.05haのプロット内の林木に対して推論を適用した結果,判別率で全木86%,間伐木63%の精度が得られた。これは同一要因を説明変数とする判別分析の精度をやや上回った。また,システム調整の点においてもファジィ推論の利便性が認められた。本研究により,林業における経験的判断に対するファジィ推論の有効性が明らかになった。さらに,優良材生産を指向した選木では,林木配置および隣接木との相対的な形質比較が重要であることが確認された。
著者
吉村 哲彦 赤羽 元 神崎 康一
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用研究会誌 (ISSN:0912960X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.195-204, 1995-12-15 (Released:2017-11-17)
参考文献数
14

林道のり面が崩壊を起こす事例が各地で見られるが,大規模な崩壊が起きると林地に多大な被害が及ぼされる。そこで,ファジィ理論を用いて,切取のり面及び盛土のり面の崩壊危険度の判定を試みた。崩壊危険度の判断システムは,奈良県十津川村の林道で行った調査の結果に基づいて作成した。のり面の崩壊が多く発生しているのは,内カーブの中心,外カーブの変曲点,林道幅の広い場合,急斜面の場合,切取のり面が高い場合であった。ファジィ積分法を用いて林道のり面の崩壊危険度の判定を行った結果,判別率は切取のり面で68.9%,盛土のり面で70.7%であった。数量化2類では,判別率がそれぞれ67.0%,72.1%となり,ファジィ積分法を用いても,数量化2類と同程度の判別率が得られることがわかった。ファジィ理論を用いるメリットは,地域に応じた判断システムを容易に構築できることであり,評価要因の重視度や評価要因ごとの崩壊危険度を調整することによって,この判断システムを他地域へ応用することができる。
著者
守屋 和幸 吉村 哲彦 北川 政幸 小山田 正幸 杉本 安寛
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.229-234, 2003-05-25
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

林内放牧牛にGPS受信機を装着し,同時に実施した行動調査の結果とGPS測位記録とを用いて調査牛の行動履歴の解析を行った.2001年8月27日から9月1日(8月30日のみ雨天)に,スギ人工林(約1.4ha)に放牧されている黒毛和種繁殖雌牛4頭のうち2頭にGPS受信機を装着し,10秒間隔でGPS測位記録を収集した.あわせて,1分間隔で調査牛の行動を移動・佇立・採食・横臥・反芻に分類して記録した.このうち採食行動については採食した植物種も記録した.調査牛は周囲が開けている高台の休息場所と低地の水飲み場との間を往復しながらその途中で採食する行動をとった.調査牛の行動は,移動(10%),採食(40%),その他(50%)であった.調査牛はススキに対する採食頻度がもっとも高く,次いでワラビ,クズの順であった.
著者
ガンダスチャ スチャ 吉村 哲彦 山本 俊明 神崎 康一
出版者
森林利用学会
雑誌
森林利用研究会誌 (ISSN:0912960X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.117-123, 1995-08-15
被引用文献数
1

インドネシアの東カリマンタンに位置するバツアンパールのビレッジHTISP1とHTISP3で,産業造林の作業者の疲労調査を,フリッカーテスト,ブロッキングテスト,蓄積的疲労徴候調査によって行った。フリッカーテストの結果,おおむね作業前よりも作業後の方がフリッカー値が低下していた。ブロッキングテストの結果,天然更新の補整植栽作業による阻止現象は認められないという結果になった。蓄積的疲労徴候調査において,応答率を日本における橋梁建設工事作業者と比較したところ,身体的な疲労は,今回の調査結果の方が際だって大きかった。その理由として考えられるのは,赤道直下の過酷な暑さである。作業種,居住地,年齢別にその傾向の違いを調べたところ,作業種による違いはあまり大きくないが,「下刈り」が特性項目全般にわたって高くなっている。居住地による違いを調べたところ,身体的疲労はHTISP1の方が際だって高いという結果になったが,HTISP1はHTISP3よりも居住年数が長いため,疲労が蓄積しているのではないかと考えられる。
著者
鈴木 保志 近藤 稔 吉村 哲彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.208-216, 2005-06-01
被引用文献数
3

ある地点における架設可能なH型架線の組数により支点設置可否特性を定義し,路網開設に際して重要な指標となる崩壊危険度および関連地形因子との関係を分析した。まず,架設可能性の判定計算に先立ち,H型架線の架設事例から現実的な2線の位置関係を明らかにした。また,荷上索角度の制限により主索への過張力を回避する現行の作業方法を力学的に考察し,荷重点高さを想定した。分析の結果,支点設置の可能性が高い地点ではそうでない地点よりも相対的に崩壊危険度が低かった。関連地形因子との関係では,斜面の横断形状,傾斜変換点,集水面積,およびこれらの交互作用において,支点設置の可能性が高いことが崩壊危険度を小さくする要因と一致した。傾斜については,崩壊危険度を高くする急な斜面の方が支点設置の可能性が高かった。