著者
富原 壮真 神田 真司
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.87-94, 2021-08-01 (Released:2021-08-12)
参考文献数
14

動物の行動解析は生物学の実験において最も頻繁に行われる実験系の1つであり,様々な動物においてその行動が解析されている。現在,最もよく用いられている行動解析の手法は,市販のビデオカメラにより行動を撮影し,得られた動画を再生しながら目視でひとつひとつ行動を記録するというものである。しかし,この実験手法は撮影・解析に非常に多くの時間がかかり,煩雑な操作も多く実験誤差が生まれやすい。この問題を解決するために,シングルボードコンピューターの1種であるRaspberry Piを用いて動物行動の自動撮影システムを作製した。また,Microsoft Excelのマクロ機能を応用し,PCのキーを押さえるだけの単純な操作で行動を記録し,このデータを基に行動の変遷を表すラスタープロットをEPS 形式によって自動で作製できるプログラムを開発した。これらのシステムを用いることで,実験誤差が少ない高精度な行動解析を短時間かつ単純な操作で実現できるようになった。今回はこれらのシステムを用いて,実験室で継代され続け「家畜化した」メダカ系統と,野生のメダカの性行動パターンを詳細に解析し,オスの性行動モチベーションに対する家畜化の影響の可能性を見出した。
著者
神田 真司
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

生殖を制御するという報告があるキスペプチン神経系が持つその他の機能を包括的に理解するため、受容体を発現する細胞をGFPで可視化し、RNAseqによって同定するという新しいアプローチを用い、キスペプチンによって制御される神経系を同定した。また、この方法によって同定したニューロンに対して電気生理学的な手法によってキスペプチンの作用を解析した。キスペプチンによって、摂食や恒常性維持に関連するペプチド神経系、行動への関与が示唆されるペプチドニューロンに対し、持続的な脱分極を引き起こすことが示唆された。また関与が示唆されたいくつかの神経ペプチドについて、TALEN法によるノックアウト個体の作出を行った。
著者
岡 良隆 赤染 康久 神田 真司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

我々は、脳内のGnRH1、GnRH2、GnRH3ニューロンのそれぞれが特異的にGFPを発現する遺伝子組換メダカを作り、それらを生きたまま可視化した。神経回路を保ったままの丸ごとの脳をin vitroに保ち、顕微鏡下で単一のGFP標識GnRHニューロンからの自発的な神経活動や神経修飾・伝達物質に対する神経応答を記録することにより、それらの機能を生理学的に解析した。また、脳下垂体からの生殖腺刺激ホルモン放出をモニターできるような遺伝子改変動物を作成してホルモン放出の調節機構を解析した。これにより、進化の過程で多様な機能をもつに至った、GnRHペプチド神経系の機能に関する理解が飛躍的に深まった。