著者
神谷 真子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

現在までに、新規フルオレセインを母核として分子内光誘起電子移動(PeT)を最適化することで、β-ガラクトシダーゼに対する高感度蛍光プローブ(TG-βGal、AM-TG-βGal)の開発に成功した。そこで本年度においては、同様のストラテジー、つまりPeT、による精密な蛍光制御法が、フルオレセインとローダミンの骨格を半分ずつ有するロドール骨格にも有効であるか検討した。ロドール骨格は、フルオレセインの持つ優れた蛍光特性(高いモル吸光係数・蛍光量子収率)に加え、フルオレセインよりも褪色に強い、導入する置換基により吸収・蛍光波長が変えられるという魅力的な特性を有するにも関わらず、これまでに蛍光プローブの母核として用いられることが少なかったため、本研究においてはその特長を生かした新規蛍光プローブの開発を行うことを考えた。まず始めに、ロドール骨格のフェノール性水酸基に、ROSとの反応部位兼蛍光消光部位としてHydroxyphenyl基、Aminophenyl基を導入したRhodo1-HP及びRhodol-APを開発した。蛍光特性を精査した結果、これらのプローブの蛍光強度は低く抑えられていたことから、ロドールの蛍光もPeTにより制御可能であることが示された。また、各種ROSとの反応性を検討した結果、Rhodol-APはOCl選択的に蛍光強度上昇を示し、当研究室で開発したHPF、APFやMitoHR、MitoARとは異なるROS選択性を示すことが明らかになった。また、好中球で産生されるROSも蛍光検出できることが示された。また、ロドール骨格を母核として、β-ガラクトシダーゼに対する蛍光プローブHM-rhodol-βGalの開発も行った。このプローブはβ-ガラクトシダーゼと反応することにより約90倍の蛍光強度上昇を示し、かつ生細胞におけるβ-ガラクトシダーゼ活性を検出可能であることが示された。