著者
栃木 達夫 西村 洋介 福崎 篤 吉川 和行 星 宣次 棚橋 善克 折笠 精一 今井 克忠
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1357-1367, 1985-09-20

81例の膀胱移行上皮癌に内視鏡的膀胱内写真撮影を行なった.それらを腫瘍表面の形状に基き,内視鏡的に6型に分類し,膀胱癌取扱い規約1)に従って,種々の角度から検討を加えた.その結果,膀胱移行上皮癌の組織構築の違いより生ずる腫瘍の内視鏡的増殖様式の相違は,その腫瘍の発育進展様式や浸潤速度等と密接な関係を有し,予後に深く関係していることが明らかとなった.すなわち,いそぎんちゃく状やいくら状の増殖様式を示すいわゆる乳頭状腫瘍は,一般に,腫瘍が大きくなるに従い,又は,再発をくり返すうちに下方(壁内)浸潤発育癌となるのに対し,表面平滑な結節状の増殖様式を示すあんぱん状とでも言うべき腫瘍は,早期から下方(壁内)浸潤発育を伴うと考えられた.一方,臨床的には,乳頭状ともあんぱん状とも言えぬ,いちご状とでも表現すべき増殖様式を示す腫瘍があり,この腫瘍は,乳頭状腫瘍とあんぱん状腫瘍の中間的又は混合した性質をもつと思われた.以上のことから,我々は,組織構築を重視する山田らの分類を参考にして,臨床的立場から,膀胱移行上皮癌の新しい内視鏡的分類を提唱した.
著者
菅藤 哲 平松 正義 竹内 晃 大山 力 佐藤 信 斎藤 誠一 福崎 篤 遠藤 希之 荒井 陽一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.35-41, 2004-01-20
被引用文献数
1

(目的)精巣腫瘍55症例に対し高位精巣摘出術と同時に対側精巣生検を行った.その結果精巣CISと診断された症例はなかったが,そのうち2症例において後に対側精巣に精巣腫瘍を発生した.そこで我々は生検の感度に問題がなかったかどうか,そして我々の結果がスキャケベクの理論に整合性を認めるかどうかを検証した.(症例と方法)後に精巣腫瘍を発生した2症例の生検標本のパラフィンブロックを再度切り出しし,ヘマトキシリン・エオジン染色とPLAP抗体(クローン番号:8A9)を用いて免疫染色を行い,再度評価しなおした.他の53症例の標本も再度評価しなおし,その結果精巣CISが認められた症例の対側精巣の転帰を追跡調査した.(結果)後に精巣腫瘍を発生した2症例の標本うち1症例の標本において精巣CISが認められた.又,残りの53症例の内1標本において精巣CISが認められた.この症例は本人の失踪により対側精巣の転帰は確認できなかった.CISは3.6% (55症例中2症例)に確認され,2症例において偽陰性となったことが確認された.(結論)精巣CISに対する精巣生検の感度を上げるには泌尿器科医及び病理医が精巣CISについて知識を深め,スキャケベクのガイダンスに従った方法で行われるごとが重要と考えられる.