- 著者
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川畑 康成
石川 典由
森山 一郎
福庭 暢彦
田島 義証
- 出版者
- 日本膵臓学会
- 雑誌
- 膵臓 (ISSN:09130071)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.4, pp.620-625, 2015-08-25 (Released:2015-09-08)
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
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1
症例は71歳の女性.心窩部痛を契機に上部消化管内視鏡検査で十二指腸第II部に変形・狭窄および易出血病変を認めた.腹部造影CTでは膵頭部に径50mm大の充実性腫瘤を認め,門脈・脾動脈および十二指腸への浸潤が疑われた.ERPで主膵管は膵頭部で途絶していた.膵液細胞診はadenocarcinomaであり,門脈および脾動脈浸潤を伴う切除可能境界膵頭部癌(cT4, N1, M0, cStage IVa)と診断.門脈および脾動脈切除・再建を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織所見では,腺管構造の不整を伴う高分化型腺癌が主体で,腫瘍間質の線維化が強く,門脈浸潤を認めた.術後補助療法として放射線化学療法(GEM+RT)およびS-1による6ヶ月間の維持療法を施行した.術後の栄養状態とQOLは良好で,7年7ヶ月経過した現在,無再発生存中である.