著者
大塚 脩斗 坪井 大和 村田 峻輔 澤 龍一 斎藤 貴 中村 凌 伊佐 常紀 海老名 葵 近藤 有希 鳥澤 幸太郎 福田 章真 小野 玲
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-11, 2017 (Released:2017-02-28)
参考文献数
37

目的:地域在住高齢者における包括的に評価されたヘルスリテラシーと健康関連Quality of Life(以下,QOL)との関連について検討すること.方法:本横断研究の対象者は,65歳以上の地域在住高齢者330名(73.8(SD 5.5)歳,女性226名)とした.ヘルスリテラシーの評価には14-item Health Literacy Scale(以下,HLS-14)を用い,総得点と機能的,伝達的,批判的ヘルスリテラシーの各下位分類得点を算出した.健康関連QOLの評価には12-Item Short Form Health Surveyを用い,Physical Component Summary(以下,PCS),Mental Component Summary(以下,MCS)を算出した.単変量解析では,PCSおよびMCSとHLS-14の総得点および各下位分類の相関についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.重回帰分析では,従属変数をPCSおよびMCS,独立変数をHLS-14の総得点および各下位分類とし,共変数を投入したモデルを作成した.結果:単変量解析の結果,以下の関係において有意な相関が示された.1)PCSと機能的ヘルスリテラシー(相関係数 rs=0.21,p<0.01),2)MCSと総得点(rs=0.14,p=0.01),3)MCSと機能的ヘルスリテラシー(rs=0.22,p<0.01),4)MCSと伝達的ヘルスリテラシー(rs=0.14,p=0.01).重回帰分析の結果,PCSおよびMCSと機能的ヘルスリテラシーにおいてのみ独立して有意な関連が認められた(PCS:標準β=0.20,p<0.01,MCS:標準β=0.13,p=0.02).結論:本研究では,機能的ヘルスリテラシーと健康関連QOLにおいて独立して有意な関連が示され,健康関連QOLの向上のためには,高齢者に対する健康関連情報の提供方法を工夫することが重要であると示唆された.
著者
奥村 真帆 福田 章真 斎藤 貴 牧浦 大祐 井上 順一朗 酒井 良忠 小野 玲
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1453, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】がん患者における術前の筋肉量低下は,術後の合併症や,生存率に影響を及ぼすと報告されている。近年,一般高齢者において筋肉量低下に関連する因子の一つに睡眠障害が注目されている。がん患者は高い確率で睡眠障害を発症するため,睡眠障害が筋肉量低下に関連していることが予測されるが,現段階ではこれらの関連は明らかとなっていない。本研究の目的は,術前の消化器がん患者における睡眠障害と筋肉量低下との関連性を調査することである。【方法】本研究の解析対象は,2016年6月から2016年9月の間に手術施行予定の患者の中で,術前に評価可能であった胃がん,食道がん,大腸がん患者40名(年齢70.5±7.5,男性31名)とした。筋肉量低下の診断は,Asian Working Group for Sarcopeniaの基準に従い,男性:骨格筋量指標<7.0kg/m2,女性:骨格筋量指標<5.7kg/m2から診断した。筋肉量の測定には,インピーダンス測定機器Inbody430(バイオスペース社製)を用いた。睡眠障害の評価には,日本語版Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を用いた。睡眠の質,入眠時間,睡眠時間,睡眠効率,睡眠困難,眠剤の使用,日中覚醒困難の7つの各項目を0-3点の4段階に分類した。また,PSQIの各項目の総合得点が6点以上を睡眠障害有とした。その他に,年齢,性別,身長,体重,教育歴,同居人の有無,CRP,アルブミン,ヘモグロビン,performance status,がん種,合併症(Carlson Comorbidity Index),喫煙,飲酒,clinical stage,身体活動量(International Physical Activity Questionnaire),認知機能(Mini-Mental State Examination),抑うつ(Geriatric Depression Scale短縮版),栄養状態(Mini Nutritional Assessment-Short Form)を測定した。筋肉量(低下群vs.維持群)の比較は,Fisherの正確確率検定,t検定,Mann-Whitney U検定を用いた。PSQIに関しては,各下位項目と睡眠障害の有無のそれぞれについて検討した。p値が0.1未満であった項目を独立変数とし,筋肉量を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。すべての検定において,有意水準は5%未満とした。【結果】対象者の12名(30%)が筋肉量低下群であった。筋肉量低下群は,筋肉量維持群と比較して,体重が軽く(51.79±7.44kg vs. 65.60±9.83kg,p<0.05),入眠時間が長かった(p=0.03)。体重,入眠時間に加え,単変量解析にてp<0.1であった栄養状態を投入し,多重ロジスティック回帰分析を行った結果,体重(オッズ比0.79,95%信頼区間0.68-0.93)と入眠時間(3.23,1.08-9.68)が術前の筋肉量低下に関連していた。【結論】本研究では,睡眠障害のうち入眠時間が,消化器がん患者における術前の筋肉量低下と関連していることが示唆された。術前に入眠時間を評価・管理することが,筋肉量低下の進行を予防する可能性がある。今後は,睡眠障害と筋肉量低下の因果関係について検討する必要があると考える。
著者
重本 千尋 奥村 真帆 松田 直佳 小野 玲 海老名 葵 近藤 有希 斎藤 貴 村田 峻輔 伊佐 常紀 坪井 大和 鳥澤 幸太郎 福田 章真
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】妊娠中はホルモンの変化や体型変化により,多くの女性が腰痛骨盤痛(low back pain and pelvic pain;LBPP)に悩まされる。妊娠中に発症したLBPPは産後持続する事が多く,睡眠障害やうつ病,不安感などを引き起こし,本人の日常生活のみならず子供の発育に悪影響を与えることから解決すべき重要な課題である。妊娠中から産後にLBPPが持続する要因に関する調査は行われているが,一定した見解は得られていない。近年,腰痛の関連因子の一つとして女性ホルモンが着目されており,エストロゲンの低下は痛みの感受性を増加させることがわかってきており,閉経後女性における腰痛有病率の増加の一因になっていると考えられる。一方,産後女性は産後無月経の期間が存在し,この期間は閉経後女性と同様にエストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が不十分と考えられる。しかし,産後女性において,女性ホルモンとLBPPの関連を明らかにした研究はない。本研究の目的は,妊娠中にLBPPを有していた女性において産後の無月経の期間と産後4ヶ月時のLBPPとの関連を調査することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象者は,4ヶ月児健診において,同意が得られた産後女性のうち,妊娠中にLBPPを有していた女性99名で,産後4ヶ月に自記式質問紙に回答してもらった。一般情報に加え,妊娠中と産後4ヶ月時のLBPPの有無・強度,月経再開の有無・再開時期を聴取した。痛みの強度はNumerical Rating Scale(以下,NRS)を用いた。統計解析は産後4ヶ月時のLBPPの有無と,月経が再開してからの期間との関連を検討するためロジスティック回帰分析を用いた。他因子を考慮するために従属変数を産後4ヶ月時のLBPPの有無,独立変数を月経が再開してからの期間,交絡変数を先行研究より年齢,BMI,出産歴,妊娠前のLBPPの既往,妊娠中のNRSとして,強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】妊娠中にLBPPのあった女性において産後にLBPPを有していたものは58名(58.6%)であった。月経再開時期が早いほど,産後4ヶ月時のLBPPの有病率が有意に低かった(オッズ比=0.57,95%信頼区間0.34-0.96)。多重ロジスティック回帰分析においても,産後4ヶ月時の月経が再開してからの期間は産後のLBPPと,他因子に独立して有意に関連していた(オッズ比=0.54,95%信頼区間0.30-0.97)。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究により,産後月経が再開してからの期間が短い,もしくは再開していない女性は月経が再開してからの期間が長い女性と比較して,LBPPの有病率が高いという結果が得られ,産後の無月経期間の長さは,産後のLBPPのリスクファクターとなる可能性が示唆された。</p>