著者
秋朝 礼恵
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-10, 2010 (Released:2018-10-01)

1991年のブルジョア政権は、社民党やそれが築いた福祉システムを対抗軸に据え、「選択自由革命」を掲げて福祉サービスへの民間主体の参入を促す改革に着手した。社民党にとって 「選択の自由」は何ら目新しいものではなかったが、営利企業の福祉サービスへの参入には強く抵抗した。しかし、94年に政権に復帰した社民党は、コミューンの権限を強化した上で、営利企業の参入を追認する決定をする。本稿は、1980年頃から90年代半ばまでを中心に、保育サービスにおける選択の自由や営利企業の参入の過程を明らかにするとともに、社民党が立場を修正した背景を考察した。社民党が営利企業を追認したのは、政策理念の転換ではなく、経済状況、女性の労働力化、ベビーブームといった要因による保育所不足解消のための、現実的な選択の結果であった。