- 著者
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阿部 望
岸田 広平
石川 信一
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.1, pp.64-78, 2021-03-30 (Released:2021-05-01)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
-
4
本研究では,学校の実情に合わせた2つの強み介入を実施し,強み介入が中学生の精神的健康(生活満足度・抑うつ症状)に及ぼす効果について検討することを目的とした。研究1の強み認識・注目介入(自己や他者の強みを認識・注目させる介入)では中学3年生128名が対象であり,研究2の強み認識・注目・活用介入(自己や他者の強みを認識・注目させ,自己の強みを活用させる介入)では中学3年生87名が対象であった。分析の結果,研究1で実施した強み認識・注目介入は,生活満足度の向上に対してのみ効果があることが示唆された。一方,研究2で実施した強み認識・注目・活用介入は,生活満足度の向上と抑うつ症状の低減の両方に対して有効であることが示唆された。次に,効果的な強み介入の構成要素を探るために,介入の構成要素と対応する既存の強み変数の変化と精神的健康の変化の関連について探索的に検討した。その結果,強みの認識と他者の強みへの注目の変化が生活満足度の変化と正の関連を示し,強みの活用感の変化が抑うつ症状の変化と負の関連を示した。これらの結果から,生活満足度を向上させるためには強みの認識と他者の強みへの注目が重要であり,抑うつ症状を低減させるためには強みの活用が重要である可能性が示された。最後に本研究の課題と今後の展望について議論された。