著者
松本 伊左尾 秋本 隆司 今井 誠一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.75-82, 1993-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
5 6

発酵室温(30, 35, 40, 45℃)及び納豆菌の接種菌数(102, 104, 106/蒸熟大豆1g)を異にした納豆の発酵を行い,納豆の品質と直接関係のある外貌,納豆菌数,硬度及び色調を経時的に調べ,次の結果を得た. 1. 外貌観察より,発酵中の納豆はいくつかのステージを経ることが分かった.低い室温でかつ接種菌数の少ないものほど発酵は遅れた.逆に高い室温ほど発酵は進み,接種菌数が多いものほど早く過発酵しやすかった. 2. 納豆の品温は,設定室温あるいはその近辺まで一旦低下し,蒸熟大豆の表面が光沢をおび,濡れたようになった(「照り」の観察)頃より上昇し,蒸熟大豆の表面が白色の菌膜状の物質で覆われて(「菌膜」の観察)から最高値に達した.そして,最高値をしばらく保った後,品温は徐々に低下した.品温の上昇開始より品温の最高値までの時間は,接種菌数より室温の影響が大きく,高い室温で発酵させたものほど短かった. 3. 納豆菌数は誘導期,対数期を経て「菌膜」が部分的に溶けた(「菌膜消化」の観察)頃,定常期に至る変化を示した.納豆菌の生育は,同室温であれば接種菌数の多いものほど,同一接種菌数では高い室温で発酵させたものほど速かった.ただし,最高菌数(室温30℃は発酵30時間の菌数)は室温45<30≦35〓40℃の順であった. 4. 納豆の硬度は,発酵30時間まで増加し続け,同室温であれば接種菌数の多いものほど,同一接種菌数ならば高い室温で発酵させたものほど高くなった. 5. Y値は,「照り」の観察された以後より上昇し,最高値を示した後,室温30℃・接種菌数102/gで発酵させたものを除き低下した.x値・y値は,Y値のほぼ逆の消長を示した.また,蒸熟大豆の黄色が消失し,灰緑色を呈する期間はz値が高く推移した. 6. 通常の納豆の発酵時間である18~20時間の外貌,硬度及び色調より,室温35℃・接種菌数102~106/g,室温40℃・接種菌数102~104/gで発酵させたものが品質的に好ましいと判断された.
著者
菅野 彰重 高松 晴樹 高野 伸子 秋本 隆司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.105-110, 1982-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1 9

納豆製造工程におけるオリゴ糖の変化をガスクロマトグラフィーにより分析した。同時に粘性多糖レバンと大豆多糖のうち,溶液中では納豆菌のアミラーゼによって容易に分解されるデンプンについても検討した。その結果,浸漬,蒸煮によって,大豆オリゴ糖の一部が失なわれ,デンプンも減少した。発酵においては,発芽後6時間でシュクロースは約1/7に,ラフィノース,スタキオースは約1/3に減少し,早期にオリゴ糖は分解されることが示された。この時大豆オリゴ糖の部分分解によって生じると考えられる,メリビオース,マンニノトリオース,グルコース,フルクトースが遊離し,メリビオース,マンニノトリオースの分解は緩慢であったが,グルコースとフルクトースは速やかに減少した。レバンは大豆オリゴの分解に伴って増加し,デンプンは発酵中にまったく減少しなかった。