著者
川野 勧 尾高 真 塩谷 尚志 武山 浩 秋葉 直志 落合 和徳 鷹橋 浩幸 山崎 洋次
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.535-538, 1998-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
9

横隔膜子宮内膜症を病理学的に確認できた月経随伴性気胸を経験したので報告する.症例は44歳の女性で, 月経に伴い繰り返し気胸を発症するため, 精査に加療を目的として入院した, 入院時の胸部X線写真で右肺に脱気率20%の気胸を認めた.1996年6月に手術を施行した.胸腔鏡下に胸腔内を観察したところ, 右肺には異常所見を認めなかったが, 横隔膜の腱様部に多数の小孔を認めたため, 第6肋間に小開胸を追加し同部位を切除した.切除部の病理組織学的所見として, 子宮内膜に類似する管腔構造とその周囲の子宮内膜間質細胞が明確に確認され, 横隔膜に発症した子宮内膜症が気胸の原因と考えられた.横隔膜子宮内膜症において, 本症例のように子宮内膜組織が腺構造まで明確に観察できた症例はまれである.本症例は横隔膜子宮内膜症の原因が空気腹腔経由説であることを支持するものである.
著者
秋葉 直志 山下 誠 佐藤 修二 永田 徹 山崎 洋次
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.589-593, 2002-10-20
被引用文献数
1

目的. インターネットを通して受け付けた呼吸器外科関係のセカンドオピニオンを求める質問内容から肺癌患者あるいは家族の心情や訴えを考察した.方法. 呼吸器外科, 肺癌のウェッブサイト上にセカンドオピニオンの請求を受け付けたところ,1998年5月から2001年2月までの間に386人から430回の質問があり,これを検討・分析した.結果. 電子メールの質問が87%を占めた.質問の病名は原発性肺癌が79%を占め,疑いを加えると87%を占めた.男性が女性の1.9倍であった.患者年齢は16歳から90歳で平均が61.7歳,50歳から79歳が82%を占めた.質問者は男性が女性の0.94倍で,患者の子からが60%であった.内容は今後の治療方針に関するものと標準的治療に関するものが最多で59%,標準治療以外の治療方針についてが18%であった.不満が67人(17%)あり,他の病院の情報を尋ねるのが55人(14%)で,その他,説明が不十分,入院あるいは手術までの待ち時間が長いなどがあった.結論. 患者や家族の質問のほとんどは治療方針に関するものであり,肺癌などの悪性腫瘍の治療に満足していない.医師と患者・家族とのコミュニケーションは良好ながら,特に子とのコミュニケーションに改善の余地がある.主治医の治療方針や説明に不安があり,専門家の意見を望んでいる.
著者
高木 正道 秋葉 直志 塩谷 尚志 栗原 英明 伊坪 喜八郎
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.620-624, 1996-07-15

呼吸困難をともなったmassive thymic hyperplasia(以後,MTH)の1手術例を報告する.症例は27歳の女性で,数年前より左前腕部痛を自覚していた.最近になり呼吸困難と動悸が出現するようになった.胸部単純X線写真で左肺門部に突出する異常陰影を認め,胸部CTで前縦隔に不整形で内部濃度均一な腫瘤性病変を認めた.1992年6月22日腫瘤摘出術を施行した.腫瘤の重さは115g, 大きさは15.0×12.0×2.5cmで表面は平滑で黄褐色,分葉状であった.病理組織検査の結果では正常な胸腺構造を持つtrue thymic hyperplasiaであった.術後に自覚症状の改善を認めた.過去に報告されたMTHは21例で,年齢分布は7ヵ月から21歳である.自験例は27歳と最年長である.自験例を含めた22例の中で55%が有症状であり,このうち胸腺摘出術により72%で症状の改善がみられている.