著者
井埜 利博 岡田 了三 太田 光煕 高橋 和久 稀代 雅彦
出版者
群馬パース大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

【背景】妊娠中に喫煙した母親から生まれた児は肥満になると報告されているが、他の?絡因子から独立した危険因子かどうか不明である。今回、受動喫煙検診および小児生活習慣病検診を受けた児童において母親の妊娠中喫煙と児童の体格変化について横断的調査を行なった。【対象・方法】対象は小学校4年生1366名(男女比1.1:1.0、年齢は9~10歳)。全例、受動喫煙検診および小児生活習慣病検診を受診した児童で、尿中コチニン濃度および生活習慣病検診項目(体重、身長、肥満度、BMI、脂質検査および受動喫煙・生活習慣アンケート調査)などについて、母親の妊娠中喫煙の有無との関連性を調べた。また、一部症例については尿中80HdG濃度を測定し、酸化ストレスとの関係についても検討した。【結果】母親が妊娠中喫煙している児はBMIおよび肥満度が増加しており(BMIは17.2±2.7kg/m^2vs16.9±2.5kg/m^2,p=0.016、肥満度は2.7±14.3%vs0.4±14.0%,p=0.003)、妊娠中の喫煙期間が長い程、増加の程度が大きかった。そのBMI・肥満度の増加は身長の低下および体重の増加によるものであった。児の?絡因子との関係では「家族と一緒の朝食」「夕食時のテレビ」「就寝前飲食」「テレビ視聴≧2時間」「睡眠時間<8時間」「スポーツの有無」などの項目で有意差があった。しかし、母親の妊娠中喫煙はそれぞれの?絡因子ごとにBMIおよび肥満度の有意差をみとめた。一方、受動喫煙を受けている児では尿中80HdGとBMIは負の関係があり、BMIが低い方が基礎代謝が高いことを示唆していた。【結論】母親の妊娠中喫煙は児が9~10歳になった時に、BMIおよび肥満度の増加をもたらす危険因子であり、他の?絡因子の影響を受けない独立した因子であると考えられる。妊娠年齢の女性は妊娠の有無に拘わらず喫煙しないことが望ましい。