著者
金 哲 宿野部 幸孝 種谷 真一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.10-17, 1997-01-15
被引用文献数
1

回転膜ろ過システムで,連続的に酸カゼインをプロテアーゼMにより加水分解を行い,その分解物を膜ろ過し,運転条件を把握した.<BR>(1)酵素プロテアーゼMによる加水分解物の膜透過液は,運転時間(0~6時間),および(基質濃度S/酵素濃度E)比に関係なく,分子量300~600のペプチドが多い.<BR>(2)反応槽中に酵素液を入れ,その酵素が濃縮される途中の酵素濃縮液および透過液の酵素活性を調べた結果,漏れはごくわずかであった.また透過流束の変化から酵素の膜面付着を調べたが,付着は微量であった.<BR>(3)回転膜ろ過システムでの反応速度が,ミハエリスーメンテンの理論式に従うとすると,ミハエリス定数は2.94%,最大反応速度は33.56%・h-1であった.<BR>(4)透過流束は圧力とともに,増加するが,圧力200kPaで,S/E=3.0%/0.25%,およびS/E=5.0%/1.0%では,運転時間が長くなるほど,透過流束は減少する傾向があった.透過流束量の減少の少ないS/E=3.0%/1.0%が最も良好であった.<BR>(5)反応槽の固形分濃度に対する透過液固形分濃度の割合を基質変換率と定義した.基質変換率は圧力の増加に対して低下する傾向をもち,またS/E比にも関係し,S/E=3.0%/0.25%で低く,S/E=3.0%/1.0%およびS/E=5.0%/1.0%では同じ傾向を示し,35kPaの圧力で最大基質変換率0.85を示した.<BR>(6)平均滞留時間は,圧力の増加につれて減少する.35kPaではS/E=5.0%/1.0%で35kPaのとき13.5hの最高値,S/E=3.0%/1.0%で200kPaのとき1.82hの最低値を示した.<BR>(7)膜回転数に関係するテーラ数と透過流束との関係から,圧力100kPaの場合,透過流束はテーラ数450(1000rpm)で最も低く,678(1500rpm)で最大になり約30.5kg・m-2・h-1の高い値を示し,その後は減少した.<BR>(8)酵素重量に対する膜透過分解物の重量割合で表す生産性からみて,S/E=3.0%/0.25%が最も良好な生産性を示した.
著者
和仁 皓明 村田 一 種谷 真一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.259-264, 1982-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
6 2

ハンバーグのテクスチャーを客観的方法で判定する試みとして,貫入圧縮法を適用した。本法によるハンバーグの変形圧縮曲線は,スライダーを含む4要素力学模型で説明ができ,弾性率Kは(0.8~2.3)×106(dyne/cmcm2),粘性率ηは(14.6~4.5)×106(poise),最初の破壊力F1は(10.0~1.8)×105(dyne/cmcm2),最後の破壊力F2は(11.2~2.2)×105(dyne/cmcm2),破壊エネルギーwは(41.7~3.5)×104(erg/cmcm3)であった。これら力学的特性値の因子分析の結果,ηまたはF2のうち1つ,F1またはwのうち1つ,およびKの3特性でハンバーグのテクスチャーを表現しうることがわかった。また,ハンバーグ中に存在する肉粒の性質(肉粒の大きさ,分布など)が重要であり,これらの性質は,力学的特性のうち,粘性率ηまたは最終の破壊力F2と高い相関を示し,それぞれハンバーグのテクスチャーを表現する場合,最も重要な特性値と考えられた。
著者
遠山 良 種谷 真一
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.223-231, 1998-04-15
参考文献数
15
被引用文献数
1 3

単軸エクストルーダにより製造した冷麺(水分含量40%前後)に対する加熱殺菌処理(85℃40分程度)の効果について,でんぷんと小麦粉を4:6の割合で混合した原料粉により冷麺を試作して検討し,以下の結果を得た.<BR>1) 加熱殺菌処理は,バレイショでんぷん,サツマイモでんぷん,キャッサバでんぷんのいわゆる根茎由来のでんぷんを使用した麺の茹溶出量を低下させたが,トウモロコシでんぷんでは殆ど変化は見られなかった.<BR>2)多重バイト法により加熱殺菌処理が茹麺のテクスチャーに及ぼす影響を調べた結果,バレイショでんぷんを使用した麺では,加熱殺菌処理によりテンダネス,プラィアビリティ,タフネスは少し増加し,ブリットルネスは僅かに低下した.これに対して,他の3種(サツマイモ,キャッサバ,トウモロコシ)のでんぷんを使用した麺では,キャッサバでんぷんのタフネスが低下したことを除き大きな変化は見られなかった.<BR>3) 加熱殺菌処理前のX線回折像は結晶性を持たないV図形を示すのに対し,加熱殺菌処理直後のX線回折図形には,既に僅かながら結晶性の存在を示すピークが現れていた.また,5日間以上冷蔵した試料には3b,4a,5a,6a環が出現し,加熱殺菌処理前と加熱殺菌処理後では殆ど差は認められなかった.<BR>4) 製造直後の加熱殺菌処理前試料のうち,バレイショでんぷんを使用した麺とキャッサバでんぷんを使用した麺では最初から粘度が高く糊化状態であり,再糊化のピークは観察されなかったが,加熱殺菌処理により,再糊化のピークが出現した.冷蔵10日目試料では,いずれのでんぷんを使用した場合にも再糊化のピークが観察された.加熱殺菌処理により,粘度上昇開始温度や最高粘度時の温度が上昇したが,その効果はそれぞれバレイショでんぷん,サッマイモでんぷんで大きく,キャッサバでんぷん,トウモロコシでんぷんを使用した麺で小さかった.<BR>5) 以上のように,麺の加熱殺菌処理によりでんぷんを湿熱処理した場合に見られるアニーリングと類似した現象が観察された.この効果は特にバレイショでんぷんを使用した場合顕著であり,麺の茹溶出量を減少させるなどの物性改良効果があるものと考えられた.