著者
稲垣 俊史
出版者
大阪府立大学総合教育研究機構
雑誌
言語と文化 (ISSN:13478966)
巻号頁・発行日
no.4, pp.19-29, 2005-03

This paper addresses the question of how long it takes to learn a second language in order to provide the best possible estimate of the time required for Japanese speakers to develop a high proficiency level in English. The data examined come from assertions made by Japanese educators in English, Japanese learners' TOEIC scores, English speakers' acquisition of Japanese at the U.S. Foreign Service Institute, and the time needed for Japanese speakers to acquire native-like English vocabulary. Results indicate that Japanese speakers need around 2,500 hours to attain a high level of English proficiency and at least twice as much to attain native-like English vocabulary. Given that Japanese students normally have approximately 1,000 hours of exposure to English in secondary school and university, the findings suggest that, first and foremost, we should be realistic about the outcome of English language teaching in Japan without expecting too much from it.
著者
福田 純也 稲垣 俊史
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.31-44, 2013 (Released:2017-03-21)
参考文献数
12

本研究は,稲垣(2009)の追試により,目的を表す表現「ために」と「ように」における,中国語話者によるタメニの過剰般化が第一言語からの転移によるものなのか,実証を試みた。先行研究が示唆するように,タメニの過剰般化が中国語の「為了」との形式の類似に起因するものならば,この現象は中国語話者特有の現象だと考えられる。本実験では,日本語話者11名,中国語を第一言語とする日本語学習者11名,中国語以外を第一言語とする日本語学習者11名によるタメニとヨウニの習得状況を比較した。その結果学習者2グループ間でタメニの容認度に大きな差はみられない一方,中国語以外を第一言語とする学習者はタメニとヨウニの両方を容認する傾向が見られ,中国語話者はヨウニの代わりにタメニを容認するタイプの過剰般化が多いことが示された。以上の結果により本研究は,タメニとヨウニの習得における第一言語の影響を確認し,更に詳細な知見を付加したと言える。
著者
稲垣 俊史
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.142, pp.91-101, 2009 (Released:2017-04-25)
参考文献数
16

中国語話者による目的を表すタメニとヨウニの区別(日本語教師になるためた勉強している/日本語教師になれるようた勉強している)の習得を調査した。主節の主体が目的節の表す行為をコントロール可能な場合はタメニが用いられ,そうでない場合はヨウニが用いられることが知られている。日本語と中国語の比較ならびに母語の転移とインプットの観点から,中国語話者はタメニを過剰般化し,この過剰般化は上級レベルでも消えにくいであろうと予測できる。タメニを含む文とヨウニを含む文を比べる優先度タスクを用い,上級レベルの中国語話者と日本語話者を比較したところ,この予測が支持された。本研究は,目標言語と母語における目標構造の特性を踏まえ,主に印欧語の習得データを基に第二言語習得研究で議論されてきた母語の転移と肯定証拠の観点から,非印欧語(中国語)話者による非印欧語(日本語)の習得データを提示し,説明した点で意義深いと言える。