著者
福田 純也
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

最終年度となる本年度は,主に「どのような言語項目は意識的注意が当たりやすく,どのようなものは当たりにくいか」,そして「意識されやすい言語項目はより良く習得されるか」という点に関して,認知心理学において近年注目を浴びている半人工言語学習パラダイムをもちいた実証的調査を行った。こ本年度に実施した実験においては,主として言語項目の形式-意味の結びつきの卓立性が言語項目の意識されやすさと,その結果得られる意識的・無意識的知識にどのように介在するかを調査した。実験には43人が参加し,半人工言語の限定詞を学習した。学習者は,[+/-単数],[+/-有生],および [+/-行為者]が設定された。[+/-単数]は明示的に教授される項目であり,[+/-有生]は付随的学習条件かつ卓立性の高い項目,および[+/-行為者]は付随的学習条件かつ卓立性の低い項目として設定した。そのような調査の結果として,学習時の意識と,その結果得られる知識のタイプ(意識的・無意識的知識)には,当初から予想していたものより複雑な関係が見られることが明らかになった。具体的には,卓立性の高い項目は意識的知識としても無意識的知識としても学習されやすく,無意識的に学んだ場合は無意識的学習のみが促進されていた。卓立性が低い言語項目は意識されたとしても無意識的知識として習得されにくく,意識された場合においてのみ意識的知識が得られる可能性が示された。そして,無意識的学習を行った学習者は,直後テストにおいてはいかなる知識も得ていない見えたものの,時間が経つにつれて徐々に文法規則に対する知識表象が発現する可能性が示された。この結果は,無意識的知識の習得をも促進するといったプロセスを示唆し,さらに卓立性の低い項目はそのようなプロセスが促進されにくく,意識のされやすさと習得は卓立性を介して複雑な関連を持つことを示している。
著者
福田 純也 稲垣 俊史
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.31-44, 2013 (Released:2017-03-21)
参考文献数
12

本研究は,稲垣(2009)の追試により,目的を表す表現「ために」と「ように」における,中国語話者によるタメニの過剰般化が第一言語からの転移によるものなのか,実証を試みた。先行研究が示唆するように,タメニの過剰般化が中国語の「為了」との形式の類似に起因するものならば,この現象は中国語話者特有の現象だと考えられる。本実験では,日本語話者11名,中国語を第一言語とする日本語学習者11名,中国語以外を第一言語とする日本語学習者11名によるタメニとヨウニの習得状況を比較した。その結果学習者2グループ間でタメニの容認度に大きな差はみられない一方,中国語以外を第一言語とする学習者はタメニとヨウニの両方を容認する傾向が見られ,中国語話者はヨウニの代わりにタメニを容認するタイプの過剰般化が多いことが示された。以上の結果により本研究は,タメニとヨウニの習得における第一言語の影響を確認し,更に詳細な知見を付加したと言える。
著者
小花 光夫 花田 徹野 太田 修二 松岡 康夫 入交 昭一郎 福田 純也
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.349-354, 1993-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19

A 62-year-old woman, who had been diagnosed as having rheumatoid arthritis (RA) with systemic amyloidosis and diabetes mellitus, was admitted to our hospital because of polyarthralgia on October 1, 1987. She had some subcutaneous nodules and rheumatic pleural effusion. Therefore she was treated with 20 milligrams of prednisolone (PSL) daily. On the ninth day after the beginning of steroid therapy, she complained of severe pain and a new swelling in her right knee joint. The knee joint aspirate on arthrocentesis yielded a pure growth of group B Streptococcus (GBS). Blood culture was also positive for GBS. Her suppurative arthritis gradually improved by treatment with penicillin G. However, after the discontinuance of PSL, her pleural effusion deteriorated and she died on January 10, 1988.To our knowledge, there have been no prior reports of group B streptococcal suppurative arthritis complicating RA in Japan.