- 著者
-
稲垣 良介
- 出版者
- 岐阜県多治見市立脇之島小学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
1.研究目的水難事故を概観すると、プールでの事故発生率に比べ、河川など自然環境下での発生率が圧倒的に高い。「着衣でのカエル足」は、水難事故に遭遇した際に立ち泳ぎによる呼吸確保、移動手段としてのエレメンタリーバックストロークをする上で極めて重要な要素であり、これらは学校のプールで指導可能である。本研究目的は、身近な河川でより安全で豊かな親水活動が展開されるよう汎用性に優れた学習プログラムを作成し指導効果を検証しようとすることにある。2.研究方法カエル足による呼吸確保と水中での移動に学習のねらいをおいた全9時間による指導計画を作成した。指導計画は、我が国に伝わる「遊泳童諭」などの文献に見られる「水との共生」を理念とした学習内容とし「水の克服=競泳」を指向する従来の水泳指導と一線を画す内容である。具体的には、「浮く」「進む」「潜る」など泳ぎを要素で捉えた学習計画を作成した。対象は小学5年生55名である。分析は、(1)水着泳での泳ぎ、(2)着衣泳での泳ぎの客観的評価を事前に調査し、指導後の(3)水着泳での泳ぎ、(4)着衣泳での泳ぎと比較する事で学習効果を検証した。また、自由記述(内省)による分析を行い、データによる質的分析を試み、指導内容・指導方法の妥当性について考究した。3.研究成果泳速度は、水着泳、着衣泳ともに事後の泳速度が有意に速くなった。特に、カエル足の定着が成されていなかった児童が事後の記録を大きく向上させた。また、内省の分析より、カエル足の定着が、着衣での泳ぎにおける心的不安を軽減させる傾向が見られた。これらより、一定のプログラム指導効果が期待できるとの結論を得た。