著者
稲垣 良介 岸 俊行
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.280_2, 2017

<p> 本研究は、学校体育における水難事故の未然防止に資する指導内容について検討するため、海水浴場の旗に対する理解の仕方や知識、注意の程度について調査した。調査対象者は、F大学の1年生145人であった。調査項目は、①旗の色の意味に関する項目、②遊泳に関する注意の程度に関する項目、③旗が示す意味の理解の有無を問う項目、④旗に関する学習経験に関する項目から構成された。回答は、度数を集計した後、χ二乗検定を行った(項目①③④)。注意の程度を問う項目は、VASを用いたため平均値と標準偏差値を算出した(項目②)。①について集計したところ、赤白両旗は、遊泳可20名(12.0%)、遊泳注意99名(59.3%)、遊泳禁止48名(28.7%)であった。③旗の色が示す意味を理解していた学生は3名(2.1%)であった。④旗の意味を学習した経験のある学生は3名(2.1%)であった。これら結果より、海水浴場における旗に対しては、情報を受信する側の認識は必ずしも十分でないことが示唆された。水難事故に対しては、事後対応的な学習だけでなく、未然防止に資する教育を充実させることが肝要であり、学習機会の充実を図る必要があることが示唆された。</p>
著者
稲垣 良介
出版者
岐阜県多治見市立脇之島小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的水難事故を概観すると、プールでの事故発生率に比べ、河川など自然環境下での発生率が圧倒的に高い。「着衣でのカエル足」は、水難事故に遭遇した際に立ち泳ぎによる呼吸確保、移動手段としてのエレメンタリーバックストロークをする上で極めて重要な要素であり、これらは学校のプールで指導可能である。本研究目的は、身近な河川でより安全で豊かな親水活動が展開されるよう汎用性に優れた学習プログラムを作成し指導効果を検証しようとすることにある。2.研究方法カエル足による呼吸確保と水中での移動に学習のねらいをおいた全9時間による指導計画を作成した。指導計画は、我が国に伝わる「遊泳童諭」などの文献に見られる「水との共生」を理念とした学習内容とし「水の克服=競泳」を指向する従来の水泳指導と一線を画す内容である。具体的には、「浮く」「進む」「潜る」など泳ぎを要素で捉えた学習計画を作成した。対象は小学5年生55名である。分析は、(1)水着泳での泳ぎ、(2)着衣泳での泳ぎの客観的評価を事前に調査し、指導後の(3)水着泳での泳ぎ、(4)着衣泳での泳ぎと比較する事で学習効果を検証した。また、自由記述(内省)による分析を行い、データによる質的分析を試み、指導内容・指導方法の妥当性について考究した。3.研究成果泳速度は、水着泳、着衣泳ともに事後の泳速度が有意に速くなった。特に、カエル足の定着が成されていなかった児童が事後の記録を大きく向上させた。また、内省の分析より、カエル足の定着が、着衣での泳ぎにおける心的不安を軽減させる傾向が見られた。これらより、一定のプログラム指導効果が期待できるとの結論を得た。