著者
稲田 勝美
出版者
Japanese Society of Agricultural, Biological and Environmental Engineers and Scientists
雑誌
生物環境調節 (ISSN:05824087)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.111-118, 1971-03-10 (Released:2010-06-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

市販の農業用透明プラスチックフィルムの分光透過性を紫外, 可視および赤外の各部にわたって測定した.プラスチック材料の異なるフィルム間では, 可視部透過率に大差はないが, 紫外部および赤外部透過率に明らかな差が認められた.300nm以上の紫外線透過率はノイファン, ダイスカイおよびサクビとビニルの一部で低いが, その他のフィルムでは十分に高かった.赤外部ことに厳寒期の保温効果に関係のある7~15μの透過率はポリエチレンで最も高く, ビニルで最も低く, サクビがその中間であった.フィルムの材質が同じ場合, 銘柄の差や使用中の汚染による透過性の変化は短波長ほど大きく, 赤外部ではごくわずかであった.この理由は本質的には添加剤による吸収ならびにフィルム内外の粒子による光散乱の波長依存性によるが, 分光光度計の散乱光受光特性とも関係があることを考察した.おわりに, フィルム試料を提供された東京大学農学部高橋和彦氏および埼玉県園芸試験場上浜龍雄氏に厚く感謝いたします.
著者
稲田 勝美
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.37-44, 1977-03-30 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
3 4

作物の光合成における分光反応曲線が葉色や栽培条件によってどの程度変化するかを明らかにするため, 緑色程度の異なる葉, 緑色葉と紫色葉, ならびに異なる光質下で発育した葉について作用, 吸収率および量子収率スペクトルを比較した. 栽培法, 植物令などの違いによって生じた緑色程度の異なる葉の比較には水稲, トウモロコシ, ダイズ, トマト, ナス, ウンシュウミカンおよびチャを用いた. 単位入射エネルギーに対する作用スペクトルの相対値は, 500~650nm の波長帯においていずれも淡緑葉の方が濃緑葉よりも低く(第2, 3図), 波長 560nm に対する 435nm の作用比と 560nm における吸収率との間には種間の場合と同様の負の相関が認められた(第4図). 緑色葉と紫色葉の比較はハボタン(緑葉に白色斑入りのある品種と暗紫葉に紅紫色斑入りのある品種)およびシソ(青ちりめんと赤ちりめんの2品種)について行った. 紫色葉では緑色葉で明らかに見られる緑色域での吸収率低下が全く認められず, この緑色域において作用ならびに量子収率が著しく低下することが明らかにされた(第5, 6図). 紫色葉の緑色域における光合成効率の低下はアントシアニンによる緑色光の選択的吸収に帰せられる. 青色, 赤色および中性(灰色)の塩ビフィルムを被覆して得た異なる光質(第1図)下で水稲を育て, 新たに伸長した葉の光合成を比較した. 作用スペクトルの相対値は 600nm 前後の波長帯で多少差が認められ, 青色区で最も高く, 中性区はこれに次ぎ, 赤色区で最も低かった. しかし, 吸収率および量子収率スペクトルには明らかな差を認め難く, 光質適応の存在を確認するには至らなかった(第7図). 以上の結果から, 光合成の分光反応曲線は葉の特性とくに葉色によって変化するが, その変化の幅は紫色葉のような特殊な色を呈する葉を除けば種間でみられる差異と同程度であると考えられる.
著者
稲田 勝美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.301-308, 1965-06
被引用文献数
2

For the purpose of estimating the deepness of green color and chlorophyll content per leaf area in intact leaves of crop plants, a type of chlorophyllo-meter was constructed, basing on the principle of a difference attenuance which corresponds the difference between the attenuance at 670 mμ attributable to chlorophyll contained in leaves and that at 750 mμ showing the basic absorption. From the photoelectric characters of chlorophyllo-meter, it was suggested that the reading (-log T) of the meter might be directly proportional to the quantity of chlorophyll present within the light path, provided that the leaf tissue is homogeneous and the chlorophyll content is less than a certain limit. The experimental results may clear the following points: (1) High correlations exist between the order of reading and that of deepness of green color judged by naked eye in rice leaves, particularly in case where the reading difference was greater than 10 per cent (Table 1). (2) Relation between the reading and chlorophyll content per leaf area was studied in several crop plants including rice, wheat, Italian rye grass and sweet potato. As the result, very high positive correlations were obtained within respective plant kind when the leaf parts determined were relatively homogeneous exclusive of the midrib or veins (Figs. 5 and 8B), while some lowering in the correlation was noticed when the midrib was placed in the center of light path in graminaceous plants (Figs. 2, 3, 4, 6, 7 and 8A). (3) Regression coefficient of chlorophyll content per leaf area to the reading differs widely according to the kind of plants. There was not, however, much difference in coefficient among the plants which are included in the same family (Fig. 9). It was concluded that the chlorophyllo-meter may be used for determining the deepness of green color and estimating the chlorophyll content per area in intact plant leaves.
著者
狩野 広美 小泉 美香 桂 直樹 稲田 勝美
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.108-109, 1989-04-01

水稲の農林8号とクロリナミュータントCMV-44の光化学反応の作用スペクトルを測定し, クロロフィルbの役割を検討した.
著者
稲田 勝美 薮本 陽一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.689-694, 1989-12-05
被引用文献数
6

制御環境下での植物生産に好適な環境条件を明らかにするため, 連続照明下での光質, 恒温下での日長, および連続照明下での変温の影響を調べた。光質については, 赤色光/遠赤色光 (R/F) 比が著しく高い場合を除けば, 赤色光の光量子量が多いほど, また赤色光/青色光 (R/B) 比が大きいほど生長は促進された。日長は長いほど生長は旺盛となり24 h日長 (連続照明) で最大となったが, 乾物生産に対する照明効率は20 h日長で最も高かった。連続照明下で, 日平均20℃, 高低差5℃とした変温を与えると, 恒温下に比べて生長は促進され, レタスでは21.7℃, 16 hと16.7℃, 8 h (16 H/8 L), ハツカダイコンでは20.8℃, 20 hと15.8℃, 4 h (20 H/4 L) または16 H/8 Lの変温下で最も効率が高かった。ハツカダイコンでは, 変温によって増大した乾物はもっばら貯蔵根に分配された。本研究から, R/B比10またはそれ以上, R/F比1〜2の光質をもつランプで日長を20 h前後とし, これに変温を組合せた条件が植物の栄養生長の促進に有効であろうと結論した。