- 著者
-
稲葉 愛美
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
水中の腸管系ウイルスの感染リスクの評価を確立させるために、感染性ウイルスの存在を評価する必要がある。そのためには、水環境中に存在するウイルスの不活化に影響する要因を正確に解明する必要がある。これまでは、UVや消毒など、物理的、化学的要因に着目し、ウイルスの不活化を評価したものに限られていた。しかし、水環境中のウイルス不活化要因に細胞外タンパク質分解酵素が関与している可能性が予測されるが、不活化に影響する酵素の種類や放出する微生物に関する知見はない。ウイルスの不活化に影響する酵素活性の種類、その様な活性をもつ酵素を放出する細菌、水環境、季節性などの差異によるウイルス不活化の違いなどを明らかにする必要がある。そこで本研究では、市販、細菌株由来、環境水中に存在するタンパク質分解酵素に着目し、対象とした腸管系ウイルスの不活化影響を評価する。そこで、実際の酵素反応による不活化実験を行う前に、in silicoによる解析を行った。データベース上に既に報告されている対象ウイルスのアミノ酸配列情報に対し、既存のエンドペプチダーゼの切断活性による切断部位が存在するかの解析を行った。ExPASyのPeptideCutter(https://web.expasy.org/peptide_cutter/)による解析の結果、多いものでは数百の切断部位が検出された。このことから、既存のタンパク質分解酵素の活性により、カプシドタンパク質が分解される可能性が高いことが示唆された。また、切断部位数の差から、ウイルス種ごとに酵素により不活化影響が異なる可能性が示唆された。