著者
峯田 真悠子 新井 康弘 野本 真広 横山 敦子 稲葉 晶子 木村 泰 橋元 崇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-212_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】椎体骨折は高齢者の代表的な骨折であるが、明確な安静臥床期間が定まっておらず、安静にて椎体変化や偽関節の予防が困難と報告されている。そのため、早期離床による活動量の確保が重要であるが、体動痛のために身体機能の詳細な評価が困難な場合が多い。椎体骨折の予後不良因子として、椎体の後壁損傷や骨密度低下といった骨要因による報告は多いが、骨要因以外の報告は少ない。近年、椎体骨折を始めとする骨折患者のサルコペニアの有病率が高く、骨折の危険因子であると報告されている。サルコペニアの評価はCTの大腰筋面積から診断する研究が散見されるが、対象は消化器や循環器疾患であり、椎体骨折患者の大腰筋面積とリハビリテーションの関連は明らかになっていない。大腰筋は、歩行能力と密接に関係することが明らかとなっており、大腰筋面積は椎体骨折患者の身体機能を予測する一助になると考える。そこで本研究では、椎体骨折患者の大腰筋面積を基にしたサルコペニアとリハビリテーションの関連性を検討することを目的とした。【方法】当院に入院した椎体骨折患者233名のうち、死亡と入院前歩行不能例、骨折合併例、転移性骨腫瘍による骨折例、陳旧性骨折例、手術施行例、データ欠損例を除いた130名(平均年齢79.7±9.6歳、男性42名、女性88名)を対象とした。サルコペニアの指標はCTの第3腰椎レベル横断像で大腰筋面積を算出し、身長の2乗で除した値をPsoas muscle index(以下PMI)として用いた。PMIを各性別における下位1/4をサルコペニア群と定義し、2群に分類した。調査項目は基本情報(年齢、Body Mass Indexなど)、医学的情報(既往、椎体骨折数、椎体圧潰率、血液データ、geriatric nutritional risk index(以下GNRI)など)、リハビリ経過(入院から離床開始までの日数、各歩行補助器具による歩行練習開始まで日数、入退院時歩行様式、Functuonal independence measure(以下FIM)など)とし、2群間で比較検討した。また、PMIと各調査項目の相関関係を検討し、そこで有意な相関関係を認めた項目を独立変数、従属変数を退院時歩行FIMとする重回帰分析を実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】非サルコペニア群(年齢:81.7±9.8歳、男/女:11/21名、PMI:6.20±1.54cm2/m2)は、サルコペニア群(年齢:79.1±9.5歳、男/女:31/66名、PMI:3.49±0.62cm2/m2)と比較してBMI、GNRI、退院時独歩の割合、退院時歩行FIMは有意に高値を示し、椎体骨折数と椎体圧潰率は有意に低値を示した(それぞれp<0.05)。またPMIと年齢、GNRI、椎体圧潰率、退院時独歩の割合、退院時歩行FIMは有意な相関関係を示した(p<0.05)。さらに重回帰分析の結果、抽出された因子は年齢、入院時独歩の割合、大腰筋面積を基としたサルコペニアの有無であった(p<0.05、R2=0.31)。【結論】椎体骨折患者の大腰筋面積は退院時の歩行能力に関連することが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、調査から得られたデータは個人が特定されないよう統計処理を行った。
著者
稲葉 晶子 枷場 泰孝 岡本 敏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.207-215, 1996-02-25
参考文献数
11
被引用文献数
33

現在, 協調作業/学習を支援するシステムの研究が, 活発に行われている. 協調作業/学習を支援するためには, ユーザにコミュニケーションの手段を提供することは不可欠であり, 更にシステムが作業/学習状態を同定し, 支援する機能が望まれる. しかし, それらの実現を目指すシステムにおいても, ユーザが状態を把握することを容易にするための機能を提供するに留まり, 実際に判断を行うのはユーザ自身であることが多い. 本研究では, 協調学習の状態を同定し, それを支援するシステムの構築を目的とする. 具体的には, 協調学習場面で行われるコミュニケーションを分析し, 議論という観点からグループの状態をとらえ, 議論を支援することにより協調学習の促進を図る. 議論場面で交わされる発言は, 多様な情報を有する. それらを以下の二つに分類した. すなわち, 1)対象領域における問題解決に関連した解法知識に関する情報, 2) Speech・Act理論に基づく, 問題解決とは独立な発言の種類に関する情報である. 本研究では, 後者の情報を用いることにより, 領域知識を用いない議論支援を実現する.