著者
平田 佳代子 佃 守 古川 滋 河野 英浩 河合 敏 榎本 浩幸 小勝 敏幸 三上 康和 陰里 ゆうみ 稲葉 鋭
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.48-56, 1997-01-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

慢性副鼻腔炎患者44例に対してレボフロキサシン少量長期投与 (100mg/日, 8週間) を行い, 臨床効果を検討した. 投与8週目の著明改善と改善を合わせた改善率は, 自覚症状では鼻漏29%, 後鼻漏41%, 鼻閉42%, 頭重・頭痛52%, 嗅覚障害53%, 他覚所見では鼻粘膜の発赤30%, 鼻粘膜の浮腫42%, 鼻汁の量55%, 鼻汁の性状61%, 後鼻漏70%であった. 自覚症状, 他覚所見, 臨床症状の総合評価でのt検定では有意な改善を見 (P<0,001), 副鼻腔X線所見でも明らかな改善を認め(P<0.001), 副作用は全くみられず, この治療法の有用性が示された. 臨床症状の改善率は投与4週目より8週目が高かつた. また鼻汁の細菌検査では細菌学的効果と臨床症状が相関せず, レボフロキサシン少量長期投与の効果には抗菌作用以外の作用機序の関与が示唆された.
著者
阿部 章彦 加藤 匡志 稲葉 鋭
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.254-259, 1989-12-25 (Released:2009-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1

鉄と真菌の相互作用について著者らが行ってきた実験結果をもとに深在性真菌症の組織応答の面から検討した.1) 鉄過剰状態による易感染性: 鉄過剰状態後のICRマウスに Candida albicans を接種すると, 早期に腎膿瘍が形成され, 仮性菌糸が認められたが, 対照群ではその時点で膿瘍内に真菌要素はみられなかった. すなわち, 鉄過剰は真菌症の組織学的所見には本質的な差異をもたらさなかったが, 真菌要素の発育促進に大きな影響を与えていた. 白血病マウスを用いた実験でも同様の結果であった.2) 血清鉄低下による感染抵抗性: Lipopolysaccharide あるいは muramyl dipeptide を前処置して血清鉄を低下させた後, アスペルギルスを接種すると, その発育速度の低下がみられ, 真菌病変の形成に時相のずれをきたした.3) UIBC (不飽和鉄結合能) の低下による易感染性: 糖尿病性ケトアシドーシスによるUIBCの低下は, Rhizopus oryzae の発育を促進した.4) トランスフェリン量低下による易感染性: D (+) galactosamine 肝障害は, トランスフェリン量を低下させ, カンジダの発育を促進した.以上の鉄代謝の変化による深在性真菌症の組織応答は, それぞれの対照群と比べ, 本質的な差異はなかったが, 鉄代謝の変化は真菌の発育の速さと病変の広がりに影響を与えていた.